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2024年12月23日【政治経済】

TDB、ホンダ・日産のサプライチェーン動向調査

坂上 賢治

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帝国データバンクは2024年12月18日、本田技研工業(ホンダ)と日産自動車(日産)が経営統合に向けた協議に入るという報道を受けて、両社が保有する「商流圏」をもとに国内自動車メーカー10社(トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車、マツダ、スズキ、SUBARU、三菱自動車工業、ダイハツ工業、いすゞ自動車、日野自動車)に対して部品などのモノやサービスを提供する周辺産業(商流圏)を「自動車産業(サプライチェーン企業/任意の頂点企業に対して売上の1%以上を依存している企業)」と定義し、調査・分析を行った(12月23日 )。

 

<調査結果(要旨)>
自動車産業のサプライチェーンは6万8485社、売上10億円未満が76.5%を占める
多様なサプライチェーン構成企業
ホンダと日産で重複するサプライチェーン企業は9,242社、約7割が売上10億円未満
サプライヤーは競争力強化が生存の鍵

 

自動車産業のサプライチェーンは6万8485社、売上10億円未満が76.5%を占める

国内自動車メーカー10社のサプライチェーン企業(自動車産業)の総数は、2024年11月時点で国内に推計6万8485社であった。トヨタ自動車が4万680社と最多で、取引階層(Tier)別にみると、トヨタ自動車と直接取引を行う「Tier1」が2306社あり、Tier1と取引を行う「Tier2」は2万2334社、「Tier3以降」は1万6040社だった。

 

 

経営統合の報道が流れたホンダは2万2465社、日産は1万9084社あり、それぞれ取引階層(Tier)別にみると、ホンダの「Tier1」は2305社あり、「Tier2」は1万4045社、「Tier3」は6115社だった。日産の「Tier1」は1817社あり、「Tier2」は1万2204社、「Tier3」は5063社だった。

 

サプライチェーン全体の企業のうち売上高が判明した企業を規模別にみると「1億円以上10億円未満」が3万6108社(54.1%)と最も多く、「1億円未満」が1万4952社(22.4%)と続き。「10億円未満」の企業で76.5%を占め、中小企業が自動車産業を支えていることがわかる。

 

 

多様なサプライチェーン構成企業
サプライチェーンを構成する企業の業種について「商流圏」をもとに可視化した図をみると、関与する業種間で取引が複雑に絡み合い、産業の広がりがあることがわかる。自動車製造に直接関わる部品や素材、金型などの供給業者に加え、人材派遣、システム開発、工事、運送といった一見関連性が薄そうな業種も重要な役割を果たしている。

 

 

ホンダと日産で重複するサプライチェーン企業は9,242社、約7割が売上10億円未満
ホンダと日産両社のサプライチェーンに登場する企業は9242社、三菱自動車を含めた3社のサプライチェーンに登場する企業は3472社だった。9242社のうち売上高が判明した企業を規模別にみると、「1億円以上10億円未満」が4507社(50.1%)と最も多く、「1億円未満」が1752社(19.5%)と続き、「10億円未満」の割合は69.6%とサプライチェーン全体と比べるとやや少ない傾向にある。

 

 

業種の傾向をみると、「自動車部分品・付属品製造業」が550社と最も多く、「金型・同部分品・付属品製造業」が480社、配送を担う「一般貨物自動車運送業」が381社、「工業用プラスチック製品製造業」が379社、「金属プレス製品製造業」が373社と続いた。サプライチェーン企業全体の業種をみると運送、ソフトウェア、サービス、工事関連など間接費や販管費に計上される商品・サービスを提供する企業が上位であった。ホンダと日産で重複する企業は製造業が多く、汎用性、技術力、規模、信頼性を有している自動車製造を支える需要な役割を果たしている。

 

 

サプライヤーは競争力強化が生存の鍵
両社の経営統合が実現すると、サプライヤーは規格統一、EV市場への対応、価格交渉を含めた契約見直しなどが求められる。単独での競争力維持が難しい企業においては生き残りに向け、資金力や技術力のある企業と統合することで、サプライヤー間でのM&Aの動きが加速する可能性もある。一方、自動運転やEVなど新技術分野での連携や需要拡大、両社のグローバル展開を通じて海外市場でのビジネスチャンスといった成長機会も期待される。

 

サプライヤーの7割を占める10億円未満の企業にとって規模的にも物価高、価格転嫁、人手不足などの環境変化が経営に与える影響は大きい。メーカーは市場環境を考慮しつつ下請法を遵守し、公正な取引条件を整えることが求められる。サプライヤーは、技術力強化や他メーカーへの展開を進め、メーカーにとって必要不可欠な存在となることが成否の分かれ目になるだろうと結ばれている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。