スズキは8月31日、静岡所在の農業ベンチャー企業「エムスクエア・ラボ(静岡県牧之原市、代表取締役社長 加藤百合子、以下M2)」とマルチワーク可能なロボット台車「モバイルムーバー(エムスクエア・ラボが名付けた登録商標)」の共同開発契約を締結した。( 坂上 賢治 )
両社は共同開発にあたって、スズキの有するモビリティ開発のノウハウと、M2の農業や地域に於ける課題解決型事業を創造してきたノウハウを融合して、新たなビジネスモデルの創造に取り組むとしている。
同契約に関してスズキは、「農家の皆様を中心に、ご愛用頂いている軽トラックを約60年間に亘ってご提供し続ける中、予てより、農作業への負担を軽減する事や担い手不足。更には高齢化といった農家の皆様の困り事を解決出来ないかを常に考えてきました。
そこで2011年より、自社でスズキ農園の運営や農業の現場に入り込んで、現場の課題を追及する活動を行なっています。
そうしたなかでM2とは、2016年よりマルチワーク対応可能なロボット台車「モバイルムーバー」の車両開発や走行試験などを共同で実施してきましたが、今回、開発車両を用いた新しいビジネスモデルを創造するために、新たに契約を締結する事となりました。
将来的には、農業だけでなく各種運搬業務など、様々な事業の現場の課題解決を図る新規サービスを検討して参ります。またスズキは、お客様の暮らしに寄り添い、地域社会をより豊かにしていきたいという想いのもと、お客様の困りごと解決に向けたサポート活動に取り組んで参ります」と話している。
なお今回、開発を手掛けるマルチワーク可能なロボット台車「モバイルムーバー」は、先にスズキが述べたように、ひとまず主要対象に据えている農産業のみならず、スズキが接点を持つ全国津々浦々の輸送事業者や、スズキ販売拠点が繋がりを地場の地域店舗や有力事業者や製造工場など、その拡がりは果てしなく続く。そういう意味では、捉え方次第でスズキの新事業の幕開けになる可能性もありそうだ。
実際、今後の未来に向けたモビリティの姿は、何も軽貨物や乗用車だけにに限らない。むしろ新時代を見据え、既存の自動車だけに対象枠に絞ってしまうと、次世代モビリティの可能性は萎み、むしろ新たな事業化のチャンスを失いかねない。そこに着目したのはスズキならではであり、こうした小型モビリティ分野で躍進中のベンチャー企業は、図らずも最強のライバルを迎えたのかも知れない。