住友商事と総合車両製作所(J-TREC)は12月21日、フィリピン共和国運輸省よりマニラ首都圏地下鉄事業フェーズ1(北部ケソン市~南部パラニャケ市)の車両納入パッケージCP107(マニラ地下鉄向け鉄道車両240両納入プロジェクトを受注し、12月15日に契約を締結したと発表した。同プロジェクトは2019年7月に住友商事・J-TRECの両社で受注した南北通勤鉄道向け鉄道車両納入案件(104両)に続く受注となる。
急速な経済成長により人口増加が続くマニラ首都圏では、人口集中による交通渋滞や大気汚染が年々深刻化し、効率的かつ経済的な公共交通網の整備が喫緊の課題となっている。未発達なインフラを整備するため、フィリピン政府は「Build Build Build(ビルド・ビルド・ビルド)」と称する大規模なインフラ整備計画を推進しており、その中でマニラ首都圏地下鉄事業は中核事業として位置付けられている。
同プロジェクトは、国際協力機構とフィリピンとの間の有償資金協力に基づき結ばれた日本の政府開発援助事業であり、マニラ首都圏において北部ケソン市と南部パラニャケ市を結ぶフィリピンで初となる地下鉄(全17駅、内地下区間13駅、約36キロメートル)向けに鉄道車両240両(8両×30編成)を設計・製造し、DOTrに納入します。マニラ首都圏の交通ネットワークを拡充し、交通渋滞の緩和に寄与するプロジェクト。契約金額は約575億円で、2027年3月までに全車両の引き渡しを予定しているとのことだ。
住友商事は、これまでにアジア、米国を中心に数多くの鉄道建設案件、車両輸出案件を手掛けてきている。特にマニラ首都圏では、複数の既存路線(LRT1号線、LRT2号線、MRT3号線)で受注・履行実績があり、現在もMRT3号線のリハビリ・メンテナンス契約や、南北通勤鉄道向けの車両納入契約を履行している。さらに2020年5月にはLRT1号線の運営事業に参画。住友商事のフィリピンにおける交通インフラ事業での豊富な経験が今回も生かされると考えられる。
J-TRECは通勤車両で国内トップシェア(2019年度実績)を誇る鉄道車両メーカー。新幹線、特急車両、ハイブリッド車両等、多岐に渡る製品を設計・製造している。近年では、次世代ステンレス車両ブランド「sustina」を積極展開しており、同ブランド車両は、東日本旅客鉄道株式会社殿の山手線をはじめとする複数の鉄道路線に採用されている。東南アジア市場では、2016年にタイ バンコク パープルライン向け車両を納入し、現在はフィリピン マニラ南北通勤鉄道向け車両の納入契約を履行中だ。今回のプロジェクトにおいても「sustina」を提供する。
■本プロジェクト概要
案件名 | マニラ首都圏地下鉄事業フェーズI CP107(北部ケソン市~南部パラニャケ市) |
顧客 | フィリピン共和国運輸省 |
契約内容 | 鉄道車両240両(8両×30編成)の設計、製造、 試験、製品保証、予備品・特殊工具納品、運転シミュレーター納入、従業員トレーニング、技術教育機材納入など |
全体工期 | 322週(約75カ月) |
■路線図