長年、自動車や鉄道など輸送機器・製品を取り扱う住友商事の鋼材本部は4月13日、内燃機関の再定義を図るべく、ディーゼルエンジン搭載車両の短・中期的なCO2排出量削減・燃費改善策に取り組む事を明らかにした。
この目標達成にあたり同社は、シリコンバレーの水素オンデマンド技術スタートアップの「Hydrogen On Demand Technologies(ハイドロジェン・オンデマンド・テクノロジーズ)」が開発する製品「D-HAT(Diesel Hydrogen Assist Technology)」を活用する。
そもそも軽油を燃料とするディーゼルエンジンは、重量物の長距離輸送などトルク(固定されている回転軸を中心として生み出される力)が必要な荷役作業などで、今も活用されている。
その優位性は高く、現在の事業上に於いて欠かせない動力源であり、これを電動化や水素燃料電池の導入へと進めて行くには、まだまだ多くの時間を要する。
しかし未だ少なくとも国内運輸に於ける温室効果ガスの約4割を、ディーゼルエンジン駆動の貨物自動車と船舶が占めており、同パワーユニットのCO2排出量削減は社会制度上の運用で避けられない課題となっている。
湾荷役機器のディーゼルエンジンに取り付けられたD-HAT
そうしたなか住友商事は、水素を活用して燃焼効率を上げるD-HAT装置を、8リットル以上の大型ディーゼルエンジン向けに独占開発並びに販売を行っている。
D-HATは、水を電気分解することで毎分4リットルの水素を生成。これを高圧水素タンクで貯蔵する事なくディーゼルエンジンに送り込み、水素を介して燃焼効率を高められる。
これにより従来のディーゼルエンジンならではの性能は維持しつつ燃費を向上。軽油使用量とCO2を含む排気ガスの量では、それぞれ10パーセントから15パーセント削減させられるとした。
D-HAT内部の仕組みのイメージ図。電気分解によって生成された水素がディーゼルエンジンの燃焼を効率化する
またD-HAT装置自体は、水素ステーションや外部からの水素注入を必要とせず、ディーゼルエンジンに後付けが可能な点も大きな優位点だという。
ちなみに欧米地域ではD-HAT装置の搭載導入が進んでいる。対して日本では未だ数台に留まっている。
名古屋港飛島埠頭では飛島コンテナ埠頭、D-HAT輸入販売元のエントランスフォーメーション、名古屋港管理組合と連携中だ。
そこで住友商事は3月28日に、名古屋港飛島ふ頭で港湾でコンテナを輸送する港湾荷役機器へD-HATを据え付けて港湾荷役機器での本格実証を進める一方でに、無人搬送車への導入も視野に据えている。
なお今後は、名古屋港での実証実験を皮切りに日本全国の港湾各地でD-HAT装置の導入を進め、欧米地域に加えて日本国内でも課題解決に貢献していく構えだ。