住友商事は7月19日、電気自動車(EV)を電力系統に接続し、電力の需給調整市場(※1)に貢献する国内初(※2)の取り組みを行うと発表した。
同社は、熊本市とJR九州および住友商事九州と昨年2月に連携協定を締結し、官民でのカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを実施してきたが、今回の取り組みは、熊本市で2024年3月に完工した〝でんきの駅川尻〟に続く、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及を目的とした事業であると云う。
再生可能エネルギーの役割と課題
住友商事では、日本政府が目指す2050年カーボンニュートラルの実現には、再エネへの転換が重要であり、同時に大量導入を見据えた電力ネットワークの安定化・次世代化が不可欠であると考えていると云う。
しかし、再エネは天候によって発電量が左右され供給が不安定になることも多いため、電力の需要に合わせ需給バランスを調整し、高い品質で電力を維持する役割が必要となる。そのため、同社では、この役割として重要視されている大規模な系統蓄電池(蓄電事業/※3)を展開している。
今回の取り組みの目的と内容
今回同社は、EVを様々な用途で実際に利用しつつ、さらにバッテリーとして活用し、電力系統の需給バランスを調整する蓄電池の役割を担わせて、電力市場に提供する取り組みを実施。
この取り組みでは、住友商事のグループ会社である住友三井オートサービス とHakobune (ハコブネ)が、熊本市の白鷺電気工業としらさぎエナジーにリースしているEVを活用する。
具体的には、Goal connect (ゴールコネクト)に開発を委託した関連システムを用いて、リース車両が駐車場に止まっている非稼働時間帯に、そのバッテリーを蓄電池として活用し、充電器へ送信される指令に応じて調整力を提供。
日照条件が良く、他エリアに比べて太陽光の導入が進んでいる九州から、この電力系統に再エネが占める割合が高い九州から(※4)電力需給市場に参入することで、再エネのさらなる普及を目指すと云う。
住友商事グループは、これまで様々な事業で取り組んできたCO2排出量の削減や再エネの普及拡大を通じて国内外で蓄積したグループの総合力を生かしながら、今後も地域のビジネスパートナーや自治体と共に、系統用蓄電事業や太陽光発電設備の導入拡大、EVの普及促進などを中心に、地域と共生する社会基盤の構築に取り組んでいくとしている。
※1:周波数制御や電力需給バランス調整を行うために必要な「調整力」を、日本全体に亘って広域的に調達する市場。
※2:住友商事調べ。
※3:再エネ発電所や送電線・変電所・配電設備などの電力系統に接続する蓄電池のこと。
※4:2022年3月末時点の太陽光発電の年間接続量は10.9GW(九州電力送配電調べ)。