住友商事(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員 CEO:兵頭誠之)と欧州住友商事会社(本社:英国ロンドン、社長:山名宗)の住友商事グループは、2019年6月にイスラエルで設立されたCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のIN Ventureを通じ、新たな水素製造技術を開発するH2Pro Ltd(以下H2Pro社)に出資したと8月7日に発表した。(坂上 賢治)
近年、水素は利用段階でCO2を排出せず、エネルギー貯蔵・運搬が可能で有用性も高いことから、将来の重要なエネルギーのひとつとして期待されている。
しかし一方で現在の水素製造は、低コストで製造できる天然ガスなどの化石燃料を用いた方法が主流でこの場合、製造過程でCO2を排出する。製造過程でCO2を排出しない方法としては、水の電気分解がある訳だが製造コストが高いことが実用化に至る課題として浮上している。
この分野で先のスタートアップベンチャーのH2Pro社は、水の電気分解を改良した新たな水素製造技術「E-TAC(Electrochemical, Thermally Activated Chemicalの略)」を開発している。これは通常の水の電気分解による水素製造で酸素と水素が同時に発生する方法とは違い、H2Pro社が開発した独自の電極を用いて酸素と水素を別々に発生させる。
これにより、酸素と水素の混合を防ぐための隔離膜(酸素と水素が同時に発生する通常の水の電気分解において、酸素と水素の混合を防ぐための仕切り)が不要になること。さらに製造時のエネルギー効率が高くなることで、低コストでの水の電気分解の可能性が見え始めている。
そこで住友商事グループとH2Pro社は、この「E-TAC技術」を実用化させ、一般的な電気分解での製造方法に比べ製造コストを大きく下げることで、水素エネルギーの普及に貢献していきたい意向だ。
「E-TAC」水素製造についての解説図
そのために住友商事は、2018年5月に「水素関連ビジネスワーキンググループ」を立ち上げ、水素関連ビジネスの可能性を追求している。今後、住友商事グループは「H2Pro社への出資および今後の協業を通じ、さらなる水素社会の実現に向けた取り組みを加速させていきます。
また今後も、IN VentureをはじめとするCVCによるスタートアップへの投資を通じ、住友商事グループのデジタルトランスフォーメーションを推進し、事業の強化および高度化、新規事業の創出を目指します」と話している。