トヨタ自動車は8月23日、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)の専用開発車や専用開発仕様車を含む電動車(EV)など、提供車両に占める電動車比率が約90%となる見通しで、その内、走行中にCO2を排出しないEV・FCVの導入台数が、FCV約500台、EV約850台の計約1,350台となり、過去大会最大の見込みになると、発表した。
具体的には、燃料電池車(FCV)「MIRAI」や「プリウスPHV」、ハイブリッド車などに加え、東京2020専用車である「APM」や東京2020専用仕様の「e-Palette」、「TOYOTA Concept-愛i」といったEVなど、電動車を中心に約3,700台を提供する。
トヨタはその結果、約3,700台の提供車両のうち、MIRAIなど競技会場・選手村・国際メディアセンターなどの拠点間移動に使用される市販車を中心とした関係者輸送の車両約2,700台の平均CO2排出量は80g/km以下(※1)となり、提供車両の全数が同種同格のガソリン車・ディーゼル車である場合と比べてCO2排出量を約5割削減できると試算。
また、さらに東京2020専用車や専用仕様の先進モビリティ等を合わせると大会期間中のCO2排出量はさらに少なくなると試算し、これまでの大会で最高レベルの環境負荷低減を目指す。
なお、市販車を中心とした関係者輸送の車両は、全て予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」または「Lexus Safety System +」を搭載し、「インテリジェントクリアランスソナー(ICS : パーキングサポートブレーキ<静止物>)」も、ほぼ全ての関係者輸送の車両に装備するなど、衝突の回避や被害の軽減をサポート。
また、上記に加えて、FCバス「SORA」や、セカンドシートのリフトアップ機能とバックドアから車いすを載せ込むスロープを搭載した福祉車両、豊田自動織機製のFCフォークリフトなどでも大会運営をサポートする予定だ。
トヨタは、東京2020大会において、①すべての人に移動の自由を(Mobility for All)、②水素社会の実現を核としたサステナビリティ(環境・安全)、③トヨタ生産方式(TPS)を活用した大会関係者輸送支援、を3つのテーマとし、従来の車両供給の枠を超えたモビリティソリューションの提供を目指して取り組んできた。
東京2020大会に向け、電動車フルラインナップで環境負荷低減に貢献するとともに、多様なモビリティとTPSを融合したモビリティソリューションを通じ、東京2020大会のスムースな運営及び来場者・関係者の移動をサポート。
また、ロボットを活用して競技観戦体験や運営の支援を行い、従来のモビリティの概念を超えた、様々なモビリティソリューションの提供を通じて、今までオリンピック・パラリンピックを体験できなかった人々をも含めた「すべての人に移動の自由を」提供することにチャレンジしていきたいとしている。
[主な提供車両の概要]
<東京2020専用車両>
■APM
オリンピックスタジアム、有明テニスの森等大規模な会場を中心に約200台のAPMを導入し、大会関係者や選手、高齢者、身体障害者、妊娠中や乳幼児連れ等、アクセシビリティに配慮が必要な様々な来場者のラストワンマイル移動をサポート。一部車両は、夏季の大会における会場内の救護活動にも利用予定。
・AMPの詳細:https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/28866828.html
<東京2020専用仕様車>
■e-Palette(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)
トヨタ初のAutono-MaaS(※2)専用EVとして選手村に十数台導入し、選手村内の巡回バスとして大会関係者や選手の移動をサポートする。低床フロアや電動スロープ、停留所への正着(※3)制御により、車椅子利用者も乗降しやすく、スムースな短距離移動をサポート。
また自動運転(SAEレベル4相当/※4)による運行を予定し、各車両に1人オペレーターが搭乗し自動運転による運行をモニタリングするとともに、各車両の運行状況を統合的に管理するシステムも提供する。
【主要諸元】
– 全長/全幅/全高:5,255/2,065/2,760 mm
– 乗員:20名(オペレーター1名含む)※車いすの場合 4名+スタンディング7名
■TOYOTA Concept-愛i(東京2020オリンピック・パラリンピック仕様)
EVによるワンモーションシルエットの外観デザインで、オリンピック聖火リレーの隊列車両やマラソン競技などの先導車として数台を導入。
また、東京2020大会への提供車両に加え、大会期間中にMEGAWEB及びお台場・豊洲周辺の公道で体験試乗を実施予定。人の感情認識や嗜好推定を行い、会話を行うエージェント機能や自動運転(SAEレベル4相当/※4)等の「人を理解する」AI技術により、新しい移動体験をもたらす未来の愛車を紹介する。
【主要諸元】
– 全長/全幅/全高:4,530/1,840/1,480 mm
– 乗員:4名
<その他提供車両>
■MIRAI
東京2020各会場間における大会関係者の移動用に約500台を導入する。
・MIRAIの詳細:https://global.toyota/jp/newsroom/toyota/21797834.html
■歩行領域EV
東京2020のオリンピックスタジアム、有明テニスの森等大規模な会場を中心に「立ち乗りタイプ」約300台を導入し、警備・メディカルスタッフの移動をサポートする。さらに、車いすの利用者や歩行困難者向けに、「座り乗りタイプ」と「車いす連結タイプ」を活用することも検討中。
【主要諸元】
<立ち乗り、座り乗り、車いす連結>
– 全長/全幅/全高:700/450/1,200 mm
– 最高速度:2、4、6、10km/h(切り替え可能)
– 満充電当たりの走行距離:約14km
– 充電時間:2.5時間(電池交換可)
<座り乗り>
– 全長/全幅/全高:1,180/630/1,090 mm
– 最高速度:2、4、6km/h(切り替え可能)
– 満充電当たりの走行距離:約10km
– 充電時間:2時間(電池交換可)
<車いす連結>
– 全長/全幅/全高:540/630/1,090 mm
– 最高速度: 2、4、6km/h(切り替え可能)
– 満充電当たりの走行距離:約20km
– 充電時間:2.5時間(電池交換可)
※1:カタログに記載しているCO2排出量を元にトヨタで試算。PHV燃費については、2013年3月1日に取りまとめられた『乗用自動車のエネルギー消費性能の向上に関するエネルギー消費機器等製造事業者等の判断の基準』の計算方法に準拠してトヨタで試算。なお、一部大会専用に特別な架装をした車両については、架装による重量増加分による燃費をトヨタにて試算。2019年8月23日時点。
※2:Autonomous Vehicle(自動運転車)とMaaS(Mobility-as-a-Serviceモビリティサービス)を融合させた、トヨタによる自動運転車を利用したモビリティサービスを示す造語。
※3:バスがバス停から隙間を開けずに停車すること。
※4)SAEレベル:https://global.toyota/jp/automated/how-toyota-approaches-automated-driving-development/