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2018年3月5日【オピニオン】

SUBARU、新社長に米国販売会社を牽引してきた中村氏を擁立へ

坂上 賢治

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それは右肩上がりに拡大し続ける同社の自動車事業のなかで、SUBARUの原点と云える技術者達、そしてそうした「現場」を支える生真面目な社員達の足並みが乱れてしまうこと。それにより同社の屋台骨が揺らいでしまう危惧にあった。

そこで同社の核心と云えるものづくりの現場である製造工場に。そして車両が販売好調で推移するなか、増え続ける顧客に対して真摯に応えてきた販売店にも心を寄せるなど、SUBARUの屋台骨であるいわば「現場」とのコミュニケーション連携、「現場」で働く社員達の環境改善に心血を注いできた。

 

しかし結果は、マーケットから求められるに乗じて、事業が急速に拡大していくという流れのなかで、吉永氏がもっとも大事にしたいと考えていた筈の「現場」に、経営規模拡大のしわ寄せが及んでしまったと、同氏も当日の会見で語っていた。

 

 

また吉永氏は、自らがCEO職を引き継ぐことに対して、「今日の役員会議でも話しましたが、ツートップのようになるつもりはありません。中村さんに権限をどんどん渡して、邪魔にならないようにしたいと思います」と語っており、また先の完成検査問題については、「企業体質を改善していく問題からも逃げずに、身近らで責任を持ちたいと思います」と述べている。

 

つまり吉永氏は、いずれSUBARUが完成検査などの「現場」に於ける様々な課題を克復し、現在の事業規模に対して、経営そのものが身の丈に合う様に成長していく方向性を見届けるまでの間、当面、側面から中村新社長を支え続ける考えのようだ。

 

さらにSUBARUには、もうひとつの課題がある。その鍵となるものはトヨタとの協業体制である。

現在、SUBARUとトヨタのアライアンスは、技術面で、目に見える協業を成果を獲得するまでには至っておらず、100年に一度の大変革期に直面している自動車業界のうねりのなか、SUBARUがトヨタとのアライアンスのなかで、どのように先導的な役割を演じていけるかが未だ不透明なのである。

 

しかし、その方向性の一端は、おそらく今夏発表されるであろう新中期経営計画で明らかになる。

かつてはエンジニアの発言権が強く、営業部門は蚊帳の外。独自技術を背景に尖ったクルマを作り続けてきたSUBARUを、利益を産むことのできるマーケット路線に乗せることに成功した吉永体制。

そんなSUBARUが、中村新社長体制に移行していくなか、同社の秘めたる可能性を、どのように伸ばしていくことが出来るのか。

 

 

今日、新たな船出を迎え、吉永氏のサポートが実を結び、SUBARUが自動車事業を含めた上で「真のグローバル企業」になっていけるかの分水点に立っていると言えそうだ。(MOTOR CARS 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。