ステランティスは6月9日、フランス国内で水素タクシーを提供するハイプ社( Hype )と共に水素動力車両の製造・供給と運営に関する提携を発表した。これに伴い両社は2023年からパリ地区に於いて、車椅子を搭載・輸送出来る50台の水素タクシーを本格稼働させる。( 坂上 賢治 )
ちなみハイプ社は、2015年のCOP21開催を契機にパリで誕生した世界初の水素タクシー会社。同会社は、2009年にパリでバッテリー駆動のタクシーを開発することを目的としたベンチャー企業「STEP」の設立から始まった。
その後、EVタクシーサービスの稼働率を上げるには、充電時間短縮の重要性に着目。航続距離が比較的長く取れ、充電時間が短い水素燃料電池車への移行を決定して新たな専業会社のハンプ社を設立した。
その程なく産業用ガスのリーディングカンパニーであるAir Liquide社やフランスの公的金融機関であるCDC社とパートナーシップを結んだ。
今回、ステランティストハイプ社とで使用車両は、車椅子利用の1名を含む5名が乗車可能な仕様だ。または車椅子の乗員が無い場合は6名の乗客を収容・輸送できる。
この架装車のベースモデルとなったのは、ステランティスのホーダン工場で製造されたプジョーe-エキスパートと、シトロエン ë-ジャンピーの乗用車バージョンを特別に改造したものとなる。
同車は水素駆動であるため航続距離400km、給油時間3分、排出ガスゼロ、車両積載量に一切の妥協がないため運行に係る制限が一切伴わない。また車両の格納能力は改造前のオリジナル車両と同じ最大限が確保できる。
更にもう1つのユニークな特徴は、充電式バッテリーと水素燃料電池システムで構成される100%電気駆動の「ハイブリッド仕様」であることだ。
今回の提携の一環としてステランティスとハイプは、2024年末までに最大1,000台の水素タクシーを配備する予定だ。この配備車両の具体的な数量は、現在フランス政府による運営ライセンスの管理体制に伴うもの。
今後の車両配備が進めば、移動が困難な人々のための輸送サービスが質に於いても、量に於いても大きく向上することになる。もちろんゼロエミッション輸送の新たな手段になるため、当地のオー・ド・フランス地域の産業活動を強化する役割を果たすことができる。
こうした取り組みについてステランティスのLCV(小型商用車)部門を担うザビエル・プジョー氏は「今後、Hypeとのパートナーシップを通じて、移動能力の低下した人々に焦点を当てたゼロエミッションバンにおけるリーダーシップをさらに強化できることを嬉しく思います」と話している。
一方でハイプ社のマシュー・ガーディーズCEO兼創業者は「ステランティスとのパートナーシップの一環として、パリでプジョーとシトロエンの車椅子対応水素タクシー50台の稼働を開始したことに大変満足しています。
これはハイプ社の発展とフランスの水素産業に於ける新たな一歩を示しています。今後は環境保護と社会貢献を責務を果たしながら、より広域での輸送業務が展開できるようになります。
今後、当社は、2024年のパリオリンピック・パラリンピック競技大会が迫っていることを踏まえ、他のタクシー事業者や、独立系のタクシー運転手やレンタカー企業に向けても、このゼロエミッションサービスの拡大に向けて挑戦し続けていきます」と語っている。