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2024年10月18日【事業資源】

欧・ステランティス、アバルト車の原産地証明書の発行を開始

坂上 賢治

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ステランティスのヘリテージ部門は、2007年から今日までに製造されたアバルト ブランドの車が原産地証明書を受け取る資格があることを明らかにした。これによりイタリアの自動車史に貢献するステランティスのヘリテージリストに、アルファ ロメオ、フィアット、ランチアに次いでアバルトが追加された。

 

ここで今日までのアバルトの足取りを遡ると、過去16年間で、数多くの限定版や特別シリーズのアバルトモデルが生産されてきた。その中には、発売以来、ユーザーから高い評価を獲得し続けた「ヤングタイマー」も含まれている。そこにはコレクターやファンの間で伝説となっている2010年モデルのアバルト695トリブート フェラーリや、2012年モデルのアバルト695マセラティ エディションが含まれる。

 

今回、アバルト車が追加されたことについて、ステランティス ヘリテージ (アルファ ロメオ、フィアット、ランチア、アバルト) の責任者を務めるロベルト ジオリト氏は、「アバルトファンが当該ブランドと、どれほど強い絆で結ばれているか、またそのパフォーマンスと独特のスタイルに賭ける私たちの思い入れを、どれほど共有しているかも知っています。だからこそ原産地証明書を、アバルトファンの方々へ提供できることを心より嬉しく思います。

 

またそんな原産地証明書は単なる紙切れではありません。それはアバルトの歴史と情熱の系譜を資料から辿って体現するものであるからで、それによりブランドのアイデンティティを裏打ちし、今後も、その伝統を今も守り続けるものでもあるからです」と述べた。

 

数多のスコーピオン車の原産地証明書には、製造日、販売国、販売日、外装色、内装、エンジン番号など、車両の生産特性に関する詳細なレポートが記載されている。この証明書には文化的にも、歴史的にも価値があり、車体番号から個々の車両の足跡を解明できるよになる。その調査では、車体番号をヘリテージ ウェブサイト(URLリンク)のオンラインフォームに入力するだけだ。

 

 

またステランティス ヘリテージは原産地証明書に加えて、詳細な技術分析と綿密なアーカイブ調査を含む真正性証明書も提供する。更にスコーピオン車を保有する熱烈なコレクター達は、トリノのミラフィオーリ工場にあるオフィチネ クラシケの専門技術者が直接行うメンテナンス、修理、修復サービスも利用できる。

 

なお同作業を担うチームは、貴重なステランティス ヘリテージ コレクションを毎日管理している組織と同じチームだ。彼らは、これらの車両の設計、開発、製造メーカーに所属している訳だから、各々の車両が最高のパフォーマンスを発揮できるように仕立て上げるのに、これに勝る適格なチームは存在しない。

 

またステランティス ヘリテージのサービスには「Reloaded by Creators」も含まれる。これはアルファ ロメオ、フィアット、ランチア、アバルト ブランドのクラシックカーを限定数販売するプロジェクトを指す。

 

販売される車両は、オフィチネ クラシケの専門家によって元の美しさに復元された認定済の歴史的モデル達だ。そのクルマづくりには、ベース車両の発見することに始まり、その後の骨の折れるスカウト作業、復元、そして最終的に市場へ再復帰させるまで続く。結果、Reloaded by Creatorsは自動車の経済的価値に文化的価値を付加する。

 

クラシックカー愛好家達に支持されている同サービスは、すべてステランティス ヘリテージの修復および認証ワークショップであるオフィチネ クラシケで行われる。ワークショップは、2015年からトリノのプラヴァ通りミラフィオーリにある旧オフィチナ83で稼働。2022年に全面改装と拡張が施されたオフィチネ クラシケは、現在約6,000m2の面積を占め、12台のホイスト、特殊な工作機械、高精度仕上げ用のラインを備えており、個々のコンポーネントの塗装用に特別に設計されたキャビンも含まれる。

 

なお2015年から今日まで、日本、米国、コスタリカ、タイ、アンティグアに至るまで世界中の愛好家に多くの真正性証明書が発行されている。但し原産地証明書と真正性証明書は起源と目的が異なるため、取得するプロセスが異なることに留意して欲しい。ステランティス ヘリテージに、これらの文書を請求するプロセスは以下に記載している。

 

原産地証明書

 

これはアルファロメオ、ランチア、フィアット、そしてアバルト(2007年から現在までに生産されたモデル)が、生産ラインから出荷された時の車両の特徴を詳細に記載した証明書となる。

 

ユーザーはこ証明書で、生産日、販売国、販売日、外装色、エンジン番号、その他の詳細を必ず見つけることができる。 取得プロセスは自体は簡単で、ヘリテージサイトのオンラインフォームに車両のシャシー番号を入力して、アバルト、フィアット、ランチアの場合はトリノ、アルファロメオの場合はアレーゼの歴史的アーカイブに保存されている生産記録で確認するだけだ。

 

記録の確認と確定後、ユーザーに向けて入手可能な情報のリストと支払い方法が記載されたメールが送信される。 原産地証明書の価格はブランドによって異なり、ヘリテージのWebサイトで確認できる。支払いが完了すると詳細な文書が最初に電子メールで送信され、その後、上品な羊皮紙に印刷されてユーザーの自宅に直接送られる。

 

真正性証明書

 

真正性証明書は、ヘリテージアーカイブに保管された製造記録を証明書として単純転記したもので、車両のオリジナル性を証明する唯一の文書となる。但し同証明書は原産地証明書に比べて取得に係る手順が遙かに複雑になる。

 

というのは当該車両がオリジナルの特徴を維持していることを確認・証明するためには、詳細な技術分析と綿密なアーカイブ調査が必要となるからだ。この真正性証明書は、アルファロメオ、フィアット、ランチア、アバルトブランドの20年以上前の車両、または製造中止モデルや限定シリーズで利用でき、同社の先と同じくWebサイトのフォーム上からもリクエストできる。

 

その標準的な手続きは、まず右記へのメールを介して手続きを開始させることから始まる: heritage@stellantis.com。その後、当該車両のユーザーは予備診査を受けるため、トリノのオフィチネ クラシケ、またはローマとパレルモのステランティス施設のいずれかを選択する。なお追加オプションとして、オーナーの自宅で分析セッションを実施できるものも用意される。 但し当然のことながら、診査車両は照明とリフトを備えた屋内施設などが完備していなければならない。

 

当該診査に掛かる費用はモデル毎に異なり、より具体的には600ユーロから12,000ユーロ (税別) の範囲だ。この際、車両の履歴、メンテナンス基準、分析時の写真を含む証明書を追加することもできる。この領域の追加コストは、イタリア語の記載文書なら350ユーロ (税別)、英語版の場合は450ユーロ (税別) だ。

 

申請後は作業の詳細な見積もりが送信され、それをユーザーが同意した場合、診査チームの交通費に加えて車両検査の費用を前払いすることで手配が始まる。同段階でオフィチネ クラシケの専門家達は、すべての書類を収集・車両の主要な機械部品を撮影して検査に入る。次に自社アーカイブに保管されているオリジナルの技術図面などのリソースを使用して綿密な突き合わせ調査が行われる。

 

その後に分析結果は、ロベルト ジオリトが率いるステランティスの社内委員会と、当該ブランドの経営陣による最終審議が行われる。結果が肯定的であったなら当該車両のユーザーは支払いを完了させることで証明書と認定プレートなどを受け取る。

 

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2007 年から現在までのアバルト車について
スコーピオン バッジを掲げた同ブランド車の足跡は、1949年3月31日にカルロ アバルト (1908-1979) がドライバーのグイド スカリャリーニと共にアバルト& C.を設立した時に始まった。それ以来、アバルトの歴史は、常に最高のパフォーマンス、職人技、絶え間ない技術の改良を組み合わせていく創設者の精神を受け継いできた。

 

ステランティス ヘリテージが発行する原産地証明書は、アバルト グランデ プント(2007年)とアバルト500(2008年)に代表されるブランド復活の年に始まり、更に各車のチューニングキット、アバルト グランデ プント ラリー スーパー2000とアバルト500アセット コルセのレーシングバージョンも含まれる。

 

以降のアバルト695トリブート フェラーリ(2010年)、アバルト595ヤマハ ファクトリー レーシング(2015年)、アバルト695ビポスト レコード(2015年)、アバルト695リヴァーレ(2017年)、アバルト124スパイダー(2016年発売)、アバルト124GT、新しいアバルト595シリーズ(いずれも2018年導入)と、次々と新しいモデルが発売されている。

 

そして2019年には、アバルト「70周年記念」シリーズが登場、アバルト595とアバルト124、そして695 70周年記念特別シリーズが続く。アバルト695トリブート131ラリーとニューアバルト500eは完全な電動車として2022年にデビューした。

 

そして2022年、アバルトは歴史あるブランド初のSUVであるニューアバルトパルスを南米で発売。翌年アバルトはアバルトファストバックを導入。今年は新型695 75 th Anniversarioによりステランティス モータースポーツとの新しいパートナーシップにより、これまでで最もパワフルな量産型アバルトが誕生している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。