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2021年11月8日【企業・経営】

ソフトバンクG、上期の純利益が1.5兆円減の3635億円

山田清志

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ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長

 

ソフトバンクグループ(SBG)は11月8日、2021年度上期(4~9月)の連結業績を発表した。それによると、売上高が前年同期比13.4%増の2兆9835億円と増収だったが、当期純利益は同80.7%減の3635億円と大幅減益となった。第2四半期(7~9月)だけをとれば、最終損益が3979億円の赤字(前年同期は6274億円の黒字)だった。四半期の最終損益が赤字になるのは20年1~3月期(1兆4381億円の赤字)以来、6四半期ぶりだ。これは、中国の投資先企業の株価が下落し、業績の足を引っ張ったためだ。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

ソフトバンクグループのNAV

 

「真冬の嵐のど真ん中だ」

 

「人生って面白い。ちょうど半年前、2021年3月期の決算発表で、ソフトバンク創業の地である福岡の雑餉隈付近の踏切の向こうには夢がある。それからソフトバンクは大いに成長したと言った。今日はその続編だ。続編はどうなったのか。真冬の嵐のど真ん中だ。20年4~9月期は1兆8000億円の純利益だったが、今年の4~9月期は1.5兆円の大幅な減益となり、3600億円の純利益となった。黒字を確保しているが、実質は大赤字で、6兆円の赤字だ」

 

孫正義会長兼社長は記者会見の冒頭、こう2021年度上期を振り返った。SBGが重視するNAV(時価純資産)は21年6月末の27兆円から21年9月末には20.9兆円と6.1兆円も減った。

 

その理由は、中国政府が7月以降に自国のIT産業や教育産業への規制を強化した結果、投資先である中国企業の株価が大きく下落したためだ。アリババの株価は3割強も下落し、配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)が4割強、オンライン教育サービスの掌門教育(ジャンメン・エデュケーション)に至っては約8割も下落した。

 

ビジョン・ファンドの投資事業損益

 

孫会長兼社長も「唯一、利益が減ったのは中国だ。今まで稼いだ利益をこの3カ月間ですべて吐き出した。この3カ月間はNAVに占める一番大きな部分のアリババの大幅な下落と、ビジョン・ファンドの中国銘柄の下落、この2つがわれわれのNAVの価値、純利益を下げた一番の要因だった」と頭を抱える。

 

しかし、このように大きく業績を下げても、財務については健全性を強調する。「いまだに借金大魔王と言われるが、とんでもない誤解だ。英ボーダーフォンの日本法人や米スプリントを買収した際にはLTV(負債カバー率)が65%で、借金過多の危険な会社だったが、今のLTVは19%だ。充分安心していいレベルだと認識している。LTVは25%を下回る範囲で運用し、非常時でも35%を超えないようにしている」と説明する。

 

確実にヒットを狙う作戦に

 

ビジョン・ファンドの投資先についても、国・地域の分散を進めている。9月末時点の時価ベースでは、米国が35%、アジア・欧州・中南米などが46%、中国が19%となっており、中国企業への投資は継続しているものの、少額に止めているそうだ。

 

しかも、孫会長兼社長によると、ビジョン・ファンド2号(VF2)は、同1号(VF1)のように一発ホームランを狙ってぶんぶん振り回すのではなく、確実にヒットを狙う作戦で、1件あたりの投資額もVF1の5分の1である約200億円とのことだ。

 

ビジョン・ファンドの投資先分野

 

そして、投資する業界についても、フィンテックや医療などにも広く分散し、バランス良く、地域的、テーマ的にも細切れに連打を打っていくそうだ。その地域分散の一環で、10月末には国内バイオベンチャーのアキュリスファーマ(神奈川県藤沢市)に投資した。これは、ビジョン・ファンドで初めて日本企業への投資で、2件目についても具体的な投資条件や手続きを進めている最中だという。

 

「近いうちに公表できると思う。ほかにもいくつかまさに検討中の会社があるので、これから日本の銘柄も徐々に増えていく。ぜひ応援していきたい」と孫会長兼社長。投資先の選定については、3000社の候補先を常に見つつ、全世界のSBGの投資チームによる資産査定などを経て、最終的に決定している。

 

エグジットの件数

 

また質疑応答で、傘下の英半導体設計大手アームのエヌビディアへの売却に対して経済安全保障上の懸念が指摘されていることについての質問も飛んだ。これについて、孫会長兼社長は「SBGが持っていようが、エヌビディアの傘下に入ろうが、アームについては少なくともそんなに変わらない。私は当局の審査を最終的に無事通り、売却手続きに入れると今でも思っている」との認識を示した。

 

ビジョン・ファンドは2017年に開始して以来、IPOなどのエグジット件数が2社、4社、6社、14社と着実に増加し、21年度は上期だけで18社を数え、下期には13社のエグジットが予定されているという。

 

「嵐の中でも着実に金の卵をどんどん産み続ける仕組みができ、しかも自分たちの資金で回っていくエコシステムができてきた」と孫会長兼社長はビジョン・ファンドについて自信を示す。そして、「嵐が来たら来たでチャンスだ。言い訳抜きでNAVが下がったのは事実で、山あり谷ありだが、これからもめげずに、懲りずにとことん頑張っていきたい。やれる自身が私にはある」と話して決算会見を締めくくった。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。