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2022年9月26日【MaaS】

スカイドライブ、新型機体を開発し総額96億円の資金も調達

坂上 賢治

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シリーズCラウンドで総額96億円の資金を調達

 

乗用ドローン並びに貨物ドローンの開発を担うスカイドライブ( SKY Drive/本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO福澤知浩 )は9月26日、三菱UFJ銀行など13社を引受先とした第三者割当増資・銀行融資を課してシリーズCラウンドで総額96億円の資金調達を実施。これにより同社の累計調達額は約147億円となった。( 坂上 賢治 )

 

なおシリーズCの資金調達引受先は以下通り
・SCSK株式会社
・関西電力株式会社
・近鉄グループホールディングス株式会社
・スズキ株式会社
・損害保険ジャパン株式会社
・東京海上ホールディングス株式会社
・豊田鉃工株式会社
・日本化薬株式会社
・日本発条株式会社
・ペガサス・テック・ベンチャーズ
・三井住友信託銀行株式会社
・株式会社三菱UFJ銀行
・りそなグループ

 

併せて同社は、来たる2025年の大阪・関西万博開催時に、大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスを始動させるにあたり目下、鋭意開発を進めている「空飛ぶクルマ」の商用機「SKYDrive式SD-05型( 以下、SD-05 )」の機体デザインも発表した。

 

商用機SD-05は日本初の型式証明取得を目指す

 

「SkyDrive式SD-05型(SD-05)」のデザイン

 

「SD-05」のイメージ動画(SD-05 Zero Emission Flying Vehicle)

 

この「SD-05」は、将来的に空飛ぶクルマが自動車のように日常的に空の移動手段として使われる世界を目指した機体で、〝電動・垂直離着陸〟の特徴を備えたコンパクトな2人乗り航空機(乗客1名とパイロット1名)だ。しかもコンピュータ制御のアシストを介して飛行を安定させる機能を持っている。

 

機体は日本初の国土交通省の型式証明取得を目指しており、最大航続距離は約10キロメートル、最高巡航速度は時速100キロで移動できる。

 

デザインは、新ジャンルの移動手段に相応しい「プログレッシブ( 先駆性・先進性 )」さをキーワードに纏められた。

 

メインボティをサイドから見ると、空へ飛び立つ一対のプロペラのようなS字型のシルエットとなっており、機体を上から眺めた時には、高い飛行能力を有し、小型でも俊敏に空を飛ぶツバメをイメージしたという。

 

実際に機体の設計では、鳥や動物のストリームラインを取り入れ、水平と垂直の尾翼を設けた。機体の上部には12基のモータとプロペラが置かれ、既に1,000回以上の飛行テストで培った制御技術で安定した飛行を実現する。

 

検討されているSD-05のユースケースは3つ

 

技術的な開発環境では、航空機用内装メーカーのジャムコ、高度な炭素繊維強化プラスチック( Carbon Fiber Reinforced Plastics )用品を提供する東レ・カーボンマジック、電動航空機向けの高出力かつ認証可能なパワートレインが開発出来るバッテリーシステムのエロクトロニックパワーシステム( Electric Power Systems, Inc )との提携等により現在も開発が進められている。

 

 

なお現段階で、本機体が実検討されているユースケースとして以下3例がある。

 

1. 既存の公共交通機関では遠回りになってしまう地形でのショートカット
例えば、大阪湾周辺に観光スポットが集結する大阪ベイエリアでは、あるレジャー施設から別のレジャー施設迄の直線距離はわずか1キロメートル程度ながら、施設間が海を隔てている場合、公共交通機関を使うと40分程度の時間が掛かる事は決して珍しくない。そうしたケースで「SD-05」を使えば約5分、より効率的に移動できる選択肢としての可能性がある。

 

2. リゾート施設へのアクセス
静かに垂直方向へふわりと上空へ飛び立てるため、今までにない飛行体験と上空からの景色で、リゾート施設へ移動する空間と時間に於いて、非日常体験を味わえる全く新しいモビリティとして、活用の検討が進む可能性がある。

 

3. 救急医療現場での活用
「SD-05」は、従来のヘリコプターよりもコンパクトで軽く、静音性が高いエアモビリティであるから、狭い場所やビルの屋上など、より多くの場所に離着陸が可能となる。従って医療従事者が、一刻も早く現場に駆けつける手段として空飛ぶクルマが活用される可能性がある。

 

なおスカイドライブでは、日本国内に限らず海外展開も目指しており、米国ではラストワンマイルの空の移動手段というニーズで大きく伸びる可能性が高い。そこで2022年9月に米国で現地事務所を設置。自治体や協業企業と共に市場開拓を進めている。

 

 

空飛ぶクルマ、空の道の実現へ更なる大きな一歩を刻む

 

機体構造についてスカイドライブの山本卓身デザインディレクターは、「2020年8月に公開有人飛行試験を成功させたSD-03の発表から2年。その後継機であるSD-05の発表出来る事はとても嬉しい事です。

 

〝日々の移動に翼を与える〟をデザインコンセプトに、単なるA to Bの移動手段ではなく、安全で楽しい移動のパートナーとなるべく、更に洗練されたデザイン、更なる飛行性能、安全性を備えた機体となっています。

 

空飛ぶクルマの実現に向けた大きな一歩、空の道の実現を目指し、当社はこれからも未来の夢をデザインーを重ね続けていきます。2025年の大阪万博で、お会い出来るのを楽しみにしております」と話している。

 

シリーズB~シリーズCまでの活動を経た未来について

 

なおスカイドライブは「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく2019年に日本で初めて「空飛ぶクルマ」の有人飛行に成功。

 

その後、サービスの実現のためにシリーズBラウンドが終了した2020年9月以降、2021年10月には日本で初めて「空飛ぶクルマ」の型式証明申請が国土交通省に受理。2022年1月には海外での事業展開を見据えて、世界最大規模のテクノロジー見本市「CES2022」に出展した。

 

また「物流ドローン」に関しては、2021年6月に豊田市とドローン活用・社会実装促進に向けた協定の締結、2021年11月には日本で初めて国内ドローンメーカーとして航空・宇宙及び防衛分野の品質マネジメントシステム「JIS Q 9100:2016」認証を取得。2022年8月には、電力会社における導入開始と、安心・安全な製品の開発と社会実装を着々と進めている。

 

 

モノや人が自由に空を移動する世界を作りたい

 

最後にスカイドライブの代表取締役を務める福澤知浩CEOは、「2年前のラウンドBの資金調達完了以降、世界ではエアモビリティやビジネスドローンを中心とした新しい空のモビリティの本格的実現に向けた動きが加速。

 

当社はカーゴドローン事業の本格開始。商用機SD-05の開発推進などをして来ました。そして今回、新たな資金調達と、事業で密接に関わる方々との資本提携を発表させて頂く事になり、大変感謝しております。

 

このシリーズCラウンドでは、関西電力・近鉄グループホールディングス・りそなグループと関西エリアを中心に事業開始に向けた様々な議論をさせて頂いております。

 

またソフトウェア開発ではSCSKと連携させて頂き、スズキとは量産やインド・アジア地区地域での販売の可能性を共創させてい頂いております。

 

更に損害保険ジャパン・東京海上ホールディングスとは、安全安心を担保するための保険の検討を推進中、豊田鉃工・日本化薬・日本発条には部品を中心にモビリティ全体の開発でご協力頂いています。

 

加えてファイナンス分野では、三井住友信託銀行・三菱UFJ銀行にご支援頂き、ペガサス・テック・ベンチャーズには世界と日本を繋ぐVCとしてお世話になっています。

 

こうした貴重なチャンスとご縁を頂く中、まずは物流ドローンによる危険で大変な作業のサポート、そして2025年のエアモビリティのサービス開始を通じて、モノや人が自由に空を移動する世界を作って参ります」と未来への抱負を語っている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。