シリーズCラウンドで総額96億円の資金を調達
乗用ドローン並びに貨物ドローンの開発を担うスカイドライブ( SKY Drive/本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO福澤知浩 )は9月26日、三菱UFJ銀行など13社を引受先とした第三者割当増資・銀行融資を課してシリーズCラウンドで総額96億円の資金調達を実施。これにより同社の累計調達額は約147億円となった。( 坂上 賢治 )
なおシリーズCの資金調達引受先は以下通り
・SCSK株式会社
・関西電力株式会社
・近鉄グループホールディングス株式会社
・スズキ株式会社
・損害保険ジャパン株式会社
・東京海上ホールディングス株式会社
・豊田鉃工株式会社
・日本化薬株式会社
・日本発条株式会社
・ペガサス・テック・ベンチャーズ
・三井住友信託銀行株式会社
・株式会社三菱UFJ銀行
・りそなグループ
併せて同社は、来たる2025年の大阪・関西万博開催時に、大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスを始動させるにあたり目下、鋭意開発を進めている「空飛ぶクルマ」の商用機「SKYDrive式SD-05型( 以下、SD-05 )」の機体デザインも発表した。
商用機SD-05は日本初の型式証明取得を目指す
「SkyDrive式SD-05型(SD-05)」のデザイン
「SD-05」のイメージ動画(SD-05 Zero Emission Flying Vehicle)
この「SD-05」は、将来的に空飛ぶクルマが自動車のように日常的に空の移動手段として使われる世界を目指した機体で、〝電動・垂直離着陸〟の特徴を備えたコンパクトな2人乗り航空機(乗客1名とパイロット1名)だ。しかもコンピュータ制御のアシストを介して飛行を安定させる機能を持っている。
機体は日本初の国土交通省の型式証明取得を目指しており、最大航続距離は約10キロメートル、最高巡航速度は時速100キロで移動できる。
デザインは、新ジャンルの移動手段に相応しい「プログレッシブ( 先駆性・先進性 )」さをキーワードに纏められた。
メインボティをサイドから見ると、空へ飛び立つ一対のプロペラのようなS字型のシルエットとなっており、機体を上から眺めた時には、高い飛行能力を有し、小型でも俊敏に空を飛ぶツバメをイメージしたという。
実際に機体の設計では、鳥や動物のストリームラインを取り入れ、水平と垂直の尾翼を設けた。機体の上部には12基のモータとプロペラが置かれ、既に1,000回以上の飛行テストで培った制御技術で安定した飛行を実現する。
検討されているSD-05のユースケースは3つ
技術的な開発環境では、航空機用内装メーカーのジャムコ、高度な炭素繊維強化プラスチック( Carbon Fiber Reinforced Plastics )用品を提供する東レ・カーボンマジック、電動航空機向けの高出力かつ認証可能なパワートレインが開発出来るバッテリーシステムのエロクトロニックパワーシステム( Electric Power Systems, Inc )との提携等により現在も開発が進められている。
なお現段階で、本機体が実検討されているユースケースとして以下3例がある。
1. 既存の公共交通機関では遠回りになってしまう地形でのショートカット
例えば、大阪湾周辺に観光スポットが集結する大阪ベイエリアでは、あるレジャー施設から別のレジャー施設迄の直線距離はわずか1キロメートル程度ながら、施設間が海を隔てている場合、公共交通機関を使うと40分程度の時間が掛かる事は決して珍しくない。そうしたケースで「SD-05」を使えば約5分、より効率的に移動できる選択肢としての可能性がある。
2. リゾート施設へのアクセス
静かに垂直方向へふわりと上空へ飛び立てるため、今までにない飛行体験と上空からの景色で、リゾート施設へ移動する空間と時間に於いて、非日常体験を味わえる全く新しいモビリティとして、活用の検討が進む可能性がある。
3. 救急医療現場での活用
「SD-05」は、従来のヘリコプターよりもコンパクトで軽く、静音性が高いエアモビリティであるから、狭い場所やビルの屋上など、より多くの場所に離着陸が可能となる。従って医療従事者が、一刻も早く現場に駆けつける手段として空飛ぶクルマが活用される可能性がある。
なおスカイドライブでは、日本国内に限らず海外展開も目指しており、米国ではラストワンマイルの空の移動手段というニーズで大きく伸びる可能性が高い。そこで2022年9月に米国で現地事務所を設置。自治体や協業企業と共に市場開拓を進めている。
空飛ぶクルマ、空の道の実現へ更なる大きな一歩を刻む
機体構造についてスカイドライブの山本卓身デザインディレクターは、「2020年8月に公開有人飛行試験を成功させたSD-03の発表から2年。その後継機であるSD-05の発表出来る事はとても嬉しい事です。
〝日々の移動に翼を与える〟をデザインコンセプトに、単なるA to Bの移動手段ではなく、安全で楽しい移動のパートナーとなるべく、更に洗練されたデザイン、更なる飛行性能、安全性を備えた機体となっています。
空飛ぶクルマの実現に向けた大きな一歩、空の道の実現を目指し、当社はこれからも未来の夢をデザインーを重ね続けていきます。2025年の大阪万博で、お会い出来るのを楽しみにしております」と話している。
シリーズB~シリーズCまでの活動を経た未来について
なおスカイドライブは「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく2019年に日本で初めて「空飛ぶクルマ」の有人飛行に成功。
その後、サービスの実現のためにシリーズBラウンドが終了した2020年9月以降、2021年10月には日本で初めて「空飛ぶクルマ」の型式証明申請が国土交通省に受理。2022年1月には海外での事業展開を見据えて、世界最大規模のテクノロジー見本市「CES2022」に出展した。
また「物流ドローン」に関しては、2021年6月に豊田市とドローン活用・社会実装促進に向けた協定の締結、2021年11月には日本で初めて国内ドローンメーカーとして航空・宇宙及び防衛分野の品質マネジメントシステム「JIS Q 9100:2016」認証を取得。2022年8月には、電力会社における導入開始と、安心・安全な製品の開発と社会実装を着々と進めている。
モノや人が自由に空を移動する世界を作りたい
最後にスカイドライブの代表取締役を務める福澤知浩CEOは、「2年前のラウンドBの資金調達完了以降、世界ではエアモビリティやビジネスドローンを中心とした新しい空のモビリティの本格的実現に向けた動きが加速。
当社はカーゴドローン事業の本格開始。商用機SD-05の開発推進などをして来ました。そして今回、新たな資金調達と、事業で密接に関わる方々との資本提携を発表させて頂く事になり、大変感謝しております。
このシリーズCラウンドでは、関西電力・近鉄グループホールディングス・りそなグループと関西エリアを中心に事業開始に向けた様々な議論をさせて頂いております。
またソフトウェア開発ではSCSKと連携させて頂き、スズキとは量産やインド・アジア地区地域での販売の可能性を共創させてい頂いております。
更に損害保険ジャパン・東京海上ホールディングスとは、安全安心を担保するための保険の検討を推進中、豊田鉃工・日本化薬・日本発条には部品を中心にモビリティ全体の開発でご協力頂いています。
加えてファイナンス分野では、三井住友信託銀行・三菱UFJ銀行にご支援頂き、ペガサス・テック・ベンチャーズには世界と日本を繋ぐVCとしてお世話になっています。
こうした貴重なチャンスとご縁を頂く中、まずは物流ドローンによる危険で大変な作業のサポート、そして2025年のエアモビリティのサービス開始を通じて、モノや人が自由に空を移動する世界を作って参ります」と未来への抱負を語っている。