NEXT MOBILITY

MENU

2024年8月22日【IoT】

参画6社、千葉でデジタルツイン活用の自動運転実証を開始

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

デロイト トーマツ コンサルティング、BIPROGY(旧社名・日本ユニシス)、三菱プレシジョン、東京海上日動火災保険、IHI、先進モビリティは8月22日、千葉市で自動運転バスを始めとする近未来モビリティの実装に向けて、デジタルツインを活用した安全性検証に取り組む。

 

より具体的には、リアル実証時の自動運転の質を高めるべく、仮想空間上でのシミュレーション環境を整備することで、レベル4の自動運転サービス実装に向けた検証構築の構築を目指す。

 

なおこの試みは千葉市からの委託を受けた取り組みで、自治体が主導し仮想空間で自動運転の安全性を検証する事業としては全国初の試みとなる。

 

ちなみに自動運転車両並びに開発環境の構築にあたり、デジタルツイン環境を必要した背景には、レベル4の自動運転サービスを都市部の人口密集地で社会実装するには、人や車両が多く行き交う公道での安全性の担保や、実際の交通流に応じた停車位置及び運行スケジュールの調整といった実運用上の課題があるからだ。

 

 

そもそも実車を用いた公道での検証には想定外の事故等のリスクが伴う。人や車両の急な飛び出しや交通量の多い道路での右左折といった危険が伴う状況など、現実的に全てのシナリオをリアル検証することは困難が伴う。

 

加えて自動運転車両の調達費や運転手の人件費などの費用や、検証準備から実走行に至るまでに数か月から半年と長時間を要するといった時間やコスト上の課題もある。

 

そこで千葉市が取組む当該事業は、あらかじめ現実の環境を仮想空間に構築したデジタルツイン上での安全運行のシミュレーションを繰り返すことで、実車を用いた公道での検証では、質が高く、かつ安全性の高いリアル検証が可能になる。

 

 

具体的には、幕張新都心の実際の交通環境や車両走行データ、リスク箇所や事故データを用いて仮想空間の環境を構築。その上で、走行条件や車両パラメータを自由に設定し、走行検証を何度も重ねることができる。

 

更に、リアル実証に技術検証が移った後でも、実走行とデジタルツイ上の双方でのトライアンドエラーを繰り返すことで、更なる実証実験の改善を重ねることも想定しているという。このよに、どのような走行条件であれば安全な運行が可能であるのかを緻密に分析し、その結果、幕張新都心に於ける自動運転サービスの社会実装に大きく貢献したい考えだ。

 

デジタルツインを用いたシミュレーション イメージ図(画像は千葉市より提供)

 

———————————-

 

具体的な事業の枠組みは以下の通り

 

まずはBIPROGYが「デジタルツインを活用した自動運転実証環境構築・実証実験業務を千葉市より受託。三菱プレシジョン、東京海上日動火災保険、IHI、先進モビリティへ再委託する。また一方でデロイトトーマツ コンサルティングは「実証実験業務」の監督を行うものとして「デジタルツインを活用した自動運転車サービス実装支援等業務委託」を千葉市より受託する。

 

 

<受託企業各社の役割>
• デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
自動運転車の安全性検証やデジタルツインに係る知見に基づくアドバイザリー及び事業進捗の監督

 

• BIPROGY 株式会社
デジタルツイン環境の構築、安全性評価の為のシナリオ検討及びシミュレーション実施

 

• 三菱プレシジョン株式会社
幕張新都心周辺の環境計測とデジタルツイン環境対応の 3D モデル化

 

• 東京海上日動火災保険株式会社
自動車保険の特約として提供している通信型ドライブレコーダーのデータ等を活用した幕張新都心の交通環境に基づくリスクマップの作成や、現地調査に基づく検証シナリオの作成

 

• 株式会社 IHI
幕張新都心の交通環境(事故データ/交通流等)に基づくリスク箇所の検討、検証シナリオの抽出

 

• 先進モビリティ株式会社
デジタルツイン環境上への自動運転車両モデル導入及びチューニング、ODD(Operational Design Domain。道路条件、地理条件、環境条件など、自動運転システムが正常に作動する前提となる設計上の走行環境に係る特有の条件のこと)検討/安全性検証

 

———————————-

 

安全性検証のスケジュール
• 幕張新都心のデジタルツイン環境構築:2024 年 9 月頃まで
• 検証シナリオの作成:2024 年 9 月頃まで
• 走行シミュレーション・ODD 検討/安全性検証:2024 年 10 月~2025 年 3 月

 

———————————-

 

次年度以降の展望
当該事業を通じて構築したデジタルツイン上で、シミュレーションによる ODD 評価・フィードバックを行い、将来的にはまちづくり等への活用も想定していく。

 

———————————-

 

当該取り組みに係る各社からのコメントは以下の通り

 

• BIPROGY 株式会社(代表取締役社長:齊藤 昇氏)
BIPROGY株式会社は、新たなパーパスに掲げた社会的価値創出企業の実現に向け、2022 年 4月 1 日に日本ユニシス株式会社から会社名(商号)を変更しました。

 

BIPROGYグループは、日本初の商用コンピューターによって今日の情報社会を拓き、以来 60 年以上にわたりシステムインテグレーターとして顧客課題を解決し、社会や産業を支えるシステムを構築してきました。

 

この経験と実績をバックボーンに、様々なパートナーと共に取り組んできた社会を豊かにする新たな価値創造と社会課題解決の取り組みを加速させ、社会的価値創出企業に変革していきます。その取り組みの 1 つとして、自動運転車の安全性評価のためのプラットフォーム「DIVP®(DIVP は、学校法人幾徳学園の登録商標)シミュレーションプラットフォーム」を BIPROGY グループの V-DriveTechnologies が提供しています。

 

———————————-

 

• 三菱プレシジョン株式会社(代表取締役 取締役社長:藤本 聖二氏)
フライトシミュレータと航法装置の設計・製造会社として 1962 年に発足しました。現在では、航空機・鉄道・自動車等のシミュレーションシステム、航空・宇宙機器、パーキングシステムの 3 事業を中心に、安全・安心・快適な未来社会実現のため、社会インフラの発展に貢献しています。

 

———————————-

 

• 東京海上日動火災保険株式会社(取締役社長:城田 宏明氏)
東京海上グループは、お客様や地域社会の“いざ”をお支えするというパーパスを掲げ、100 年以上に わたり自動車保険をはじめとする様々な保険商品を提供してまいりました。

 

近年では、ドライブレコーダー付き自動車保険の開発や、AI による潜在危険度予測モデルを活用した交通事故削減支援サービス 等、テクノロジーを活用したソリューション開発に取り組んでいます。

 

また、2023 年には自動運転の事故防止を支援する「リ スクアセスメント」、安心・安全な運行を支援する「遠隔監視・インシデント対応サービス」、事故に備える 「保険」を組み合わせた、自動運転車導入・運行支援パッケージ”Hawk SafEye“の提供を開始しました。これからも、自動運転の社会実装に向けて、お客様や地域社会とともに活動してまいります。

 

———————————-

 

• 株式会社 IHI(代表取締役社長:井手 博氏)
IHI は日本を代表する総合重工業グループです。1853 年創設の日本初の近代的造船所を起源とし、造船技術をもとに陸上機械、橋梁、プラント、航空エンジンなどに事業を拡大。近年は、資源・エネルギー、社会インフラ、産業機械、航空・宇宙の4つの事業分野を中心に幅広いソリューションを提供しています。

 

社会に新たな価値を継続的に提供するため、IHI グループを支える基盤技術の高度化に加えて、新たな技術の獲得と育成による革新的な技術開発に取り組んでいます。また、お客さまのユースケースに沿った社会実装を加速させ、実社会で得られる新たなニーズやデータを活⽤して、新たな事業につながる技術の創出を⽬指しています。

 

———————————-

 

• 先進モビリティ株式会社(代表取締役社長 博士(工学):瀬川 雅也氏)
先進モビリティ株式会社は、東京大学生産技術研究所の次世代モビリティ連携研究センターの技術を基礎に、バス、トラックなどの大型車両の自動運転技術の事業化による社会貢献を目指すベンチャー企業です。

 

当社が目指す自動運転システムは、様々な道路環境に適応し、安全に自動運行を可能とするシステムです。車両制御、環境認識領域における最新の技術を導入して、目標とする自動運転システムの実現、社会普及を通じて、ドライバー不足や高齢化による公共交通や、物流の維持に関する社会問題の解決に貢献していきます。

 

———————————-

 

• デロイト トーマツ コンサルティング合同会社(代表執行役:神山 友佑氏)
日本で最大級のビジネスプロフェッショナルグループであるデロイト トーマツ グループの主要事業法人の一つであり、5千名超のコンサルタントが在籍しています。

 

グループの 2 万人のプロフェッショナル共通のパーパスの下で、クライアント・社会・メンバーのため、最も価値あることをもたらすために日々挑戦を続けています。

 

また、国際的なビジネスプロフェッショナルのネットワークである Deloitte(デロイト)の各国ファームと連携して、世界中のリージョン、エリアに最適なサービスを提供できる体制を有しています。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。