一般社団法人シェアリングエコノミー協会は12月10日に記者会見を開き、情報通信総合研究所と共同で行った日本国内のシェアリングサービスに係る市場調査を実施(全国の20-60代の男女。プレ調査29,949人、本調査2,613人を対象)した結果を広く発表した。
なお同調査によると、2020年度日本に於けるシェアリングエコノミーの市場規模は2兆1,004億円となり、来る2030年度には14兆1,526億円に拡大する見通しであるとした。
本調査の背景とポイント
新型コロナウイルス感染症の拡大は、シェアリングエコノミーの成長に大きな影響を及ぼした。このような背景を踏まえ、シェアリングエコノミー協会と情報通信総合研究所は、日本国内に於けるシェアリングエコノミーの「市場規模」と「経済波及効果」の調査を実施。さらにこの動きがSDGsなど社会に与える貢献効果などを含めた将来予測も纏めている。
市場規模の定義について
調査にあたって対象としたサービスは、〝インターネット上で資産やスキルの提供者と利用者を結びつけるもの〟、〝利用したいときにすぐ取引が成立するもの〟とし、その市場規模は資産・サービス提供者と利用者の間の取引金額と定義(プラットフォーマーの売上ではない)した。
課題解決シナリオの考え方
シェアリングエコノミーの成長には、未だ同マーケットに対する認知度が低い点、個人が提供するサービスを利用する際の不安などの課題が幾つか存在する。そこでサービス提供側・利用側双方について、以下の様に成長の課題が解決する状況を想定した場合の市場規模を算出したという。
2020年度と2030年度の市場規模 推計結果
【2020年度市場規模】
2020年度の市場規模は2兆1,004億円。同数値は新型コロナウイルスの影響のなか、前回調査を踏まえた上で当初予測を下回る見通しを示している(なお前回調査は、2019年4月実施され、シェアリングエコノミーの経済規模は過去最高の1兆8,000億円超。2030年にはさらに11兆円と、生活の充実度や幸福度向上にシェアリングエコノミー経済が寄与すると推定していた)。
【2030年度市場規模】
上記2020年度の推計を踏まえ、現状ペースでシェアリングエコノミー市場が着実に成長を果たした場合は7兆4,719億円の数値を想定している。一方で、新型コロナウイルスによる不安の解消。さらにはシェアリングエコノミーに係る様々な認知度が改善・浸透していくプランを推定した場合、その数字は14兆1,526億円まで拡大すると予測した。
いずれにしても2020年の消費市場が、新型コロナウイルスという〝非常事態〟を経験したことで、条件や事業内容によっては、むしろ一部ではシェアサービスの利用意向が拡大する流れもある。従って長期的視点で俯瞰した際、将来予測は過去調査予測を上回っていく可能性が高いと定義している。
*ちなみに以下は2019年4月9日に発表した国内シェアリングサービス市場調査記事のリンクとなる(弊誌過去記事/別ページとして開きます)。
シェアリングエコノミー協会ら、日本のシェアリングサービス市場調査公表
新型コロナウイルスによる影響①(プラス面とマイナス面)
新型コロナウイルスが市場規模に与える影響はプラスとマイナスの双方があるとした。例えばインバウンド旅行者利用が多い民泊や、人と人が接触する対面型のスキルシェアに対してはマイナスの影響が大きく、オンラインで完結するサービスや外出回避につながる食事宅配等はプラスの影響が大きくなった。
新型コロナウイルスによる影響②(サービス提供者・利用者の拡大)
新型コロナの影響でサービス提供・利用を始めた人の回答を見ると、多くのサービスで「提供者」の割合が大きく、収入獲得のために開始したことが伺える(特に部屋、モノ、自動車等既存資産の活用)。
既存産業への経済波及効果推計結果
同調査によると、シェアワーカー(プラットフォームを通じて収入を得る個人)の収入から推計される既存産業への経済波及効果は、2020年度で1兆3,519億円。2030年度はベースシナリオで4兆8,006億円、課題解決シナリオで9兆3,893億円と、シェアリングエコノミーの成長は既存産業へもかなり好影響を与えることが判明しているという。
シェアリングエコノミーのSDGsへの貢献効果
また調査により、シェアリングエコノミーのSDGsへの貢献効果も市場拡大に伴って拡大することが判明したと述べている。
SDGsへの貢献効果:2020~2030年度の成長予測は以下リンクを参照されたい。
一部(赤字部分)を抽出して計測した効果(2020年11月調査参照)の将来予測を実施
https://sharing-economy.jp/ja/wp-content/uploads/2020/11/84458750915acdfc1480c8f68f23474a.pdf
■調査資料(いずれも別ページが開きます/一部同記事上に同一リンクあり)
https://sharing-economy.jp/ja/wp-content/uploads/2020/12/4b6ea3862b05a5b686be4dbcfd15298c.pdf
■シェアリングエコノミー協会
https://sharing-economy.jp/ja/
■情報通信総合研究所
https://www.icr.co.jp/