スパークス・グループとトヨタ自動車、三井住友銀行の3社が2015年11月に設立した「未来創生ファンド」が2月26日、ジャパンタクシー(JapanTaxi)株式会社(本社: 東京都千代田区、代表取締役社長:川鍋一朗)へ2度目の投資を行った。(坂上 賢治)
先の通りJapanTaxi への出資は、2017年6月以来 2 度目となるもの。投資は円による投資で、その額面は10.5億円。
投資先のJapanTaxi株式会社は、国内タクシー会社最大手の日本交通傘下のグループ企業であり、日本最大の利用者数・加盟台数のタクシー配車アプリ「全国タクシー」の開発・運営を行っている。
しかし現況に甘んじる事なく同ソフトウエアは、改良が続けられており、現在400万ダウンロードを突破した。
これはタクシー配車アプリの加盟台数換算で、全国のタクシー車両の約4分の1に達する約6万台分。現段階ではタクシー配車アプリ国内最大手としての立ち位置を維持している。
今回の資金調達でJapanTaxiは、このソフトウエアの機能改善、アプリケーションサービスを使用しての顧客体験の質を高めることを目指す。
具体的には、タクシー事業者のデジタライゼーション(業務手順やサービス提供の手段などのプロセスがデジタル技術によって拡充されること)促進を目指して、ソフト・ハード両面から統合的に目下、構築しているプラットフォームの強化を図っていくと云う。
こうした取り組みの背景としては、今日のタクシー業界で、配車アプリの開発競争が過熱していることにある。
タクシー業界に於ける競争は、新聞などのメディアで騒がれるような米の配車大手ウーバー・テクノロジーズ等の「ライドシェア(自家用車の相乗り)」の攻勢だけではないのだ。
まさに今のタクシー業界は、営業区域外からのライバルの参入のみならず、より広く深く、多角的な戦国時代が到来し、風雲急を告げている。
例えばソニーはAI事業の深化を図る「AIロボティクスビジネスグループ」の設立を背景に、人工知能(AI)技術を用いて天候や顧客の需要要素から、タクシーの客待ち走行などの稼働効率を削減させる技術の完成を目指している。
また先の2月12日には、中国の配車アプリ大手である滴滴出行(ディディチューシン、DiDi)とソフトバンク株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長 兼 CEO:宮内 謙)が日本のタクシー事業者向けサービスで協業を決めた。
神奈川県タクシー協会は、ディー・エヌ・エー(DeNA)と協力し、配車アプリ「タクベル」を目下鋭意開発しているが、このディー・エヌ・エー自体は、先の2月23日に日産と、近距離無人交通システム「Easy Ride」の実証実験にも動き出している。
またそもそも自動運転の技術発展に乗じて、自動車が自ら周囲の環境と交信する(いわゆるIoT)ことによって成立するAIソリューションの可能性は日夜拡大を続けている。
それは自動車自身が直接、周囲の環境をセンサーで読み取ることもあれば、地形や道路の状況について人工衛星やビーコンなどのの外部通信設備から情報を受信して活用することもある。
このような事象下で、自動車はドライバーや乗降客を介在させることなく、技術と技術が直接、繋がる「三次技術」によって、これまでの輸送サービスを超えた新たな価値創造や効用を生み出す目前にまで迫っている。
そうしたなか「未来創生ファンド」を背景とする企業グループにとっても、モビリティ業界を揺るが要因が極めて広域要素になった今日、新たな投資を追加して、いち早く変化に対応、厳しい覇権争いに勝ち残ることを加速化させる事を決断したということなのだろう(MOTOR CARSより転載 )。