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2025年2月21日【MaaS】

スカニアとDHL、レンジエクステンダーEVトラックの実証へ

坂上 賢治

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スカニア(Scania Aktiebolag)とドイツポスト傘下のDHLグループは2月20日(セーデルテリエ・瑞典/ボン・独、発信)、ICEレンジエクステンダーを備えた電気トラックを共同で開発した。これにより完全な充電ネットワークを待つことなく輸送システムの電化が可能になる。

 

一方で、ピュアBEVの活用は未来を見据えた「究極の輸送システムへの移行」を約束するものであり、完全な輸送システムの電化は今すぐにでも加速させていく必要がある。しかし、その一方で、経路充電のための充電施設の不足。冬の朝の電力コストの高騰。デポで十分な充電容量を確保するための設備コストの高騰などの厳しい課題が付きまとう。

 

そこでスカニアとDHLは、早期の輸送システムへの電化を果たすべくExtended Range Electric Vehicle(EREV)を試行することを決めた。この車両は、投資コストの高騰という当面のハードルをクリアさせつつ、再生可能電力で全走行距離中で80~90%を電気で走行できるようにする。

 

そこで、この新しいレンジエクステンダー搭載のEVトラックは、DHLの輸送ネットワークに追加する前段階として、ベルリンとハンブルク間のPost & Parcel Germany部門(小包輸送)に配備され、日常業務でのパフォーマンスをテストする。

 

ICEレンジエクステンダーは、BEVトラックのバッテリーパックの一部に入れ替えられる。その分、バッテリーパックで走行できる航続距離は短くなるが、新たに搭載したICEレンジエクステンダーにより、残りのバッテリーパックへ充電エネルギーを供給する。

 

これにより必要に応じて既存のガソリンスタンドで燃料が補給できることから、車両の航続距離は650〜800キロメートル(テスト想定)となる。これは同等のピュアEVトラックの航続距離550キロメートルに匹敵する。

 

 

DHLグループでCEOを務めるトビアス・マイヤー氏は、「当社のような大規模輸送システムが、ピュアBEVトラックに完全に依存できるほど再生可能電力、送電網、充電インフラが堅牢になるまでには、暫く時間が掛かるでしょう。

 

そこで我々は、その日が来るのを黙って待ち続けるのではなく、その間も物流をより持続可能にするべくCO2排出量を80%以上削減するための実用的なソリューションで協力していきます。

 

この車両は、貨物輸送に於ける温室効果ガス排出量の早期の削減に貢献できる賢明で実用的なソリューションです。私たちは、こうした取り組みが気候変動との戦いに取り組む最善のイノベーションプロジェクトだと考えています。

 

今回のEREVによる試走実証は、スカニアとのパートナーによって常に新たなテクノロジーとソリューションの可能性を模索していく活動の一環となっています。今回、航続距離を延長できるEREVは、完全な低炭素輸送実現のためのインフラ条件が不足している場合に大幅なCO2削減を可能とする暫定的なソリューションとなります。 EUおよび各国は、現実的な環境負荷低減政策を適切に運用・奨励すべきであると考えます」と述べた。

 

 

一方、スカニアでCEOを務めるクリスチャン・レビン氏は、「我々の未来の担うべきエネルギーは電気であることに疑いの余地はありません。私たちはそこに向かいつつも輸送システムが最終的に100%電化される前段階で、脱炭素輸送の事業規模を最大化していかなければなりません。効果的な気候変動対策には、政策立案者がこのような解決策を受け入れ、公共インフラやその他の条件整備への投資を増やすことが必要です。

 

今回、我々が試行するEREVは全長10.5メートル、最大重量40トンのトラックで、230kW(ピーク295kW)の電動モーターを搭載しています。これを駆動させるエネルギーとして416kWhのバッテリーと120kWのICE発電機を介して供給されます。

 

これによりトラックの走行距離は最大800キロメートルにまで伸ばすことが可能です。 またEREVには、レンジエクステンダーの使用を制限するソフトウェアも組み合わせているためCO2排出量を削減することが可能です。最高速度は89km/hで、積載量は約1,000 個 (スワップボディの容積) です。また同トラックは、追加のスワップボディを備えたトレーラーを牽引することもできます」と話している。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。