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スカニア(Scania Aktiebolag)とドイツポスト傘下のDHLグループ
は2月20日(セーデルテリエ・瑞典/ボン・独、発信)、ICEレンジエクステンダーを備えた電気トラックを共同で開発した。これにより完全な充電ネットワークを待つことなく輸送システムの電化が可能になる。
一方で、ピュアBEVの活用は未来を見据えた「究極の輸送システムへの移行」を約束するものであり、完全な輸送システムの電化は今すぐにでも加速させていく必要がある。しかし、その一方で、経路充電のための充電施設の不足。冬の朝の電力コストの高騰。デポで十分な充電容量を確保するための設備コストの高騰などの厳しい課題が付きまとう。
そこでスカニアとDHLは、早期の輸送システムへの電化を果たすべくExtended Range Electric Vehicle(EREV)を試行することを決めた。この車両は、投資コストの高騰という当面のハードルをクリアさせつつ、再生可能電力で全走行距離中で80~90%を電気で走行できるようにする。
そこで、この新しいレンジエクステンダー搭載のEVトラックは、DHLの輸送ネットワークに追加する前段階として、ベルリンとハンブルク間のPost & Parcel Germany部門(小包輸送)に配備され、日常業務でのパフォーマンスをテストする。
ICEレンジエクステンダーは、BEVトラックのバッテリーパックの一部に入れ替えられる。その分、バッテリーパックで走行できる航続距離は短くなるが、新たに搭載したICEレンジエクステンダーにより、残りのバッテリーパックへ充電エネルギーを供給する。
これにより必要に応じて既存のガソリンスタンドで燃料が補給できることから、車両の航続距離は650〜800キロメートル(テスト想定)となる。これは同等のピュアEVトラックの航続距離550キロメートルに匹敵する。
DHLグループでCEOを務めるトビアス・マイヤー氏は、「当社のような大規模輸送システムが、ピュアBEVトラックに完全に依存できるほど再生可能電力、送電網、充電インフラが堅牢になるまでには、暫く時間が掛かるでしょう。
そこで我々は、その日が来るのを黙って待ち続けるのではなく、その間も物流をより持続可能にするべくCO2排出量を80%以上削減するための実用的なソリューションで協力していきます。
この車両は、貨物輸送に於ける温室効果ガス排出量の早期の削減に貢献できる賢明で実用的なソリューションです。私たちは、こうした取り組みが気候変動との戦いに取り組む最善のイノベーションプロジェクトだと考えています。
今回のEREVによる試走実証は、スカニアとのパートナーによって常に新たなテクノロジーとソリューションの可能性を模索していく活動の一環となっています。今回、航続距離を延長できるEREVは、完全な低炭素輸送実現のためのインフラ条件が不足している場合に大幅なCO2削減を可能とする暫定的なソリューションとなります。 EUおよび各国は、現実的な環境負荷低減政策を適切に運用・奨励すべきであると考えます」と述べた。
一方、スカニアでCEOを務めるクリスチャン・レビン氏は、「我々の未来の担うべきエネルギーは電気であることに疑いの余地はありません。私たちはそこに向かいつつも輸送システムが最終的に100%電化される前段階で、脱炭素輸送の事業規模を最大化していかなければなりません。効果的な気候変動対策には、政策立案者がこのような解決策を受け入れ、公共インフラやその他の条件整備への投資を増やすことが必要です。
今回、我々が試行するEREVは全長10.5メートル、最大重量40トンのトラックで、230kW(ピーク295kW)の電動モーターを搭載しています。これを駆動させるエネルギーとして416kWhのバッテリーと120kWのICE発電機を介して供給されます。
これによりトラックの走行距離は最大800キロメートルにまで伸ばすことが可能です。 またEREVには、レンジエクステンダーの使用を制限するソフトウェアも組み合わせているためCO2排出量を削減することが可能です。最高速度は89km/hで、積載量は約1,000 個 (スワップボディの容積) です。また同トラックは、追加のスワップボディを備えたトレーラーを牽引することもできます」と話している。