埼玉工業大学(以下、埼工大 ) は5月24日、同大学「自動運転技術開発センター」の2020年度における自動運転バスの研究・開発において、年間合計約2,970㎞に及ぶ自動運転での走行を実現したと発表した。
この走行距離は、東京・大阪間を3往復した距離に相当し、国内の大学で開発する自動運転バスとしてはトップクラスの走行実績だ。
埼工大は2020年4月から2021年3月末までの1年間、地元・深谷市の公道走行をはじめ、SIP第2期「自動運転(システムとサービスの拡張」(以下、「SIP自動運転」)、塩尻MaaSなどの自動運転の実証実験に参画。特に年度の後半には、深谷観光バスとの協力により、NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公ゆかりの地を巡る「渋沢栄一 論語の里 循環バス」として、前年度に開発したマイクロバス(リエッセII)を、業務用の緑ナンバーを取得させ路線バスとして営業運行した。
コロナ禍においても、年間で2,970km(一部大学構内を含む)を自動運転で公道走行し、前年度の計652kmの約4倍となる長距離走行を実現して開発事業を展開したという
◾️主な参加プロジェクトと走行実績の内訳
① 大学キャンパスで内の走行:41.3km
② 大学周辺(深谷市)の公道走行:784.3km
③ 実証実験(1)、SIP自動運転(羽田空港地域):1,008.5km (自主走行を含む)
④ 実証実験(2)、「塩尻型次世代モビリティサービス実証プロジェクト」(塩尻市):234.8km
⑤ 路線バス、「渋沢栄一 論語の里 循環バス」(深谷市):900.7km
埼工大は、自動運転バスの開発において、「埼玉県スマートモビリティ実証補助金」に2年連続で採択されている。令和元年の採択により、マイクロバス(リエッセII)の自動運転バスを開発し、同年8月より公道による実証実験を開始。そして令和2年度の採択で、大型バス(レインボーII)を開発し、産学官連携で自動運転バスの研究・開発を進めている最中だ。
埼工大の自動運転バスは、自動運転OSのAutowareをベースに、同大学が独自開発したソフトウエアSAIKOカーWareにより、AI技術を積極的に採用して、自動運転レベル3相当を目指した開発を進めている。システムによる自動運転とドライバーによる運転が即時にスムーズに切替え可能で、交通の状況に応じて安全に、一般公道を法定速度で走行可能だとしている。
また、自動運転技術開発センター長によると、ITbook ホールディングスが代表を務める「水陸両用無人運転技術の開発 ~八ッ場スマートモビリティ~」(日本財団と共同)のプロジェクトにもメンバーとして参加しており、水陸両用バスの自動運転・運航システム開発をITbook テクノロジーと共同で始めているとのことだ。
◾️自動運転バスについて
マイクロバス(リエッセII)は、長さ:625cm、幅:203㎝、高さ:261cm、補助席含め24人乗り、4000ccディーゼル車の自動運転実証実験車両。「令和元年度 埼玉県スマートモビリティ実証補助金」(テーマ:公道走行可能な自動運転バスの実験車両とAIの実用化・市販化)の採択により開発された。
大型バス(レインボーⅡ)は、長さ:910cm、幅:244㎝、高さ:307㎝、定員58人乗り、5.19Lディーゼル車の自動運転実証実験車両。「令和2年度 埼玉県スマートモビリティ実証補助金」(補助事業テーマ:ドライバー不足解消に役立つ自動運転・安全運転支援機能の開発・商品化)の採択により開発された。
自動運転車両の開発については、ミクニライフ&オート(埼玉県加須市)の全面的な協力により実現している。
◾️埼工大 自動運転特設サイト :http://saikocar.sit.ac.jp/