KDDIと大林組、日本電気(NEC)の3社は、2月3日から14日に三重県伊賀市で建設中の川上ダムの一部フィールドで、第5世代移動通信システム(5G)を活用し、3台の建設機械の遠隔操作と自動運転システムを搭載した振動ローラの同時連携に加え、工事に必要な施工管理データのリアルタイム伝送・解析による一般的な道路造成工事の施工を実施し、成功した。
なお、実証試験は、総務省の5G総合実証試験(※1)の一環として実施された。
建設業では、現場作業員の高齢化、若手就業者の減少による労働力不足や技能の継承が喫緊の課題であり、省人化による生産性の向上が急務となっている。
また、実際の建設工事では、設計データや出来形管理などさまざまな大容量データを活用して施工が行われるが、その際、測量や出来形の確認などは人の手によって行われているため、多くの時間と労力を要しており、施工の効率化が求められている。
そのため、専門的な技能を有するオペレーターが建機に搭乗せずとも、建機を遠隔で操作できる遠隔操作システムの活用や、工事現場におけるICTを活用したセンシング技術による作業効率化が期待されている。
[実証試験の実施概要]
3社は、これまで複数回にわたり5Gを活用した遠隔施工の実証試験(※2)を重ね実用化に向けた取り組みを実施。
今回の実証試験では、一般的な工事現場での活用を見据え、2月3日から14日まで、川上ダムの一部施工フィールドの提供を受け、5Gを活用して以下1~4を実施。道路造成工事に係る一連の作業を遠隔操作、自動化で実現できることを確認した。
実証試験で用いられた技術は、統合施工管理システム(※3)として、将来的には、オフィスなどの遠隔施工管理室から複数の工事現場への連続アクセスや、一人の熟練工が複数建機や複数現場への同時対応ができるよう目指す。
その結果、現場への移動時間や工数の削減につなげる。
なお、実証試験には、サムスン電子が提供する端末を含めたアクセスソリューション(※4)が用いられている。
1. 5Gを活用した3台の建機の遠隔操作による掘削、運搬、敷きならしの実施
3台の建機(油圧ショベル、クローラキャリア、ブルドーザ)に、前方映像用の2Kカメラを各3台、全方位カメラ各1台設置し、計12台のカメラ映像と遠隔操作の信号データを5Gでリアルタイムに伝送。
加えて、各建機の工事エリアを俯瞰する計8台の2Kカメラと、工事エリア全体を俯瞰する4K3Dカメラも活用し、土砂の掘削、運搬、敷きならしを実施した。
なお各建機には、5G端末と基地局を向き合わせるための仕組みとして正対装置が搭載された。
2. 5Gを通じた、自動運転システム搭載の振動ローラによる転圧作業の施工指示、および施工結果の取得
振動ローラにて敷きならしされた土砂の転圧を実施。転圧作業にあたっては、5Gを活用して自動運転システムを搭載した振動ローラと遠隔施工管理室間で、施工指示データと、振動ローラの位置情報、転圧結果、品質をリアルタイムに伝送した。
3. 5Gを活用したGNSS(※5)データ伝送による施工管理
上記1、2の各建機からの映像やデータ伝送と合わせて、4台の建機(油圧ショベル、クローラキャリア、ブルドーザ、振動ローラ)に設置したGNSSから取得するデータ(建機の位置情報、現場状況(施工状況)と設計値(三次元設計データ)との差異)を5Gで遠隔施工管理室に伝送し、マシンガイダンス(※6)により各建機の遠隔操作をサポートするとともに施工結果をリアルタイムに取得した。
4. リアルタイム3Dレーザースキャナによる土砂量や造成結果データの5G伝送
建機の工事エリアに3Dレーザースキャナを2台設置し、マシンガイダンスにデータを利用するとともに5Gを用いて施工現場の土砂量や造成結果のデータを伝送し、遠隔地からリアルタイムに出来形を確認した。
[実証試験での各社の役割]
– KDDI:5G総合実証試験の推進、5Gインフラの構築。
– 大林組:
・建機の遠隔操作システムの開発、試験。
・振動ローラの自動運転システムによる施工。
・リアルタイム3Dレーザースキャナの開発、試験。
– NEC:無線エントランス(80GHz帯高速無線伝送システムiPASOLINK EX Advanced)の提供。
※1)5G総合実証試験:電波を有効に利用できる実現性の高い技術について技術的検討を行い、その技術の早期導入を図ることを目的として、総務省が「技術試験事務」を実施している。(総務省)周波数ひっ迫対策のための技術試験事務の実施:http://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/purpose/tectest/
※2)遠隔施工の実証試験:
・KDDI、大林組、NEC 「5G」を活用し、建機の遠隔操作による連携作業に成功(2018年12月14日付):https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20181214_1.html
・KDDI、大林組、NEC 国内初!「5G」、4K3Dモニターを活用した建機の遠隔施工に成功(2018年2月15日付):https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20180215_1.html
※3)統合施工管理システム:土木施工作業における複数の作業工程(計画、機械施工、出来形、品質管理、安全管理)を統合し、遠隔地で管理運用するシステム。
※4)アクセスソリューション:5Gネットワーク(基地局、コア装置)および5G実証試験用スマートフォン。
※5)GNSS:Global Navigation Satellite Systemの略。
※6)マシンガイダンス:建設機械の操作席のモニター画面に、施工する部分の完成形などを表示し、オペレーターの操作をサポートする機能。マシンガイダンス(MG)、マシンコントロール(MC):https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d100.html