自然エネルギー財団の大林ミカ事業局長と同研究員の一柳絵美氏は4月15日、脱原発を完了した後の「ドイツと欧州各国の電力輸出入の状況」に係る学術記事を出稿した。
それによると「同夜にドイツは脱原発を完了。2011年当時のメルケル政権は、東日本大震災の東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、2022年末までの段階的な原発停止を決定し、原子力法(AtG)を改正した。
脱原発完了時期は、ウクライナ侵攻の影響で、およそ3ヶ月月半の延長となったが、今回は再延長とならず、最後の3基の原発が予定通り停止された。
この脱原発実現に対して、ドイツは国内の原発を止めて、フランスの原発の電気を輸入するという論調がある。ここで、今一度、ドイツと欧州各国の電力輸出入の状況を見直してみたい」と述べている。以下は、それに係る記事と当該で示した数値等の根拠となる。
1. ドイツは 欧州の電力純輸出国 である
それでは、ドイツと欧州各国間の電力取引の状況をみてみよう。ドイツの連邦ネットワーク庁と連邦カルテル庁が2023年 2月に公表した年次モニタリングレポートを参照する。2008年から2021年までの 電力取引総量は、年によって異なるが、 総じて電力輸出量が電力輸入量を上回っている。つまり、ドイツは電力 純輸出国であることがわかる(図1)。
図1:ドイツの国境を越えた電力取引 総量出典: Bundesnetzagentur & Bundeskartellamt (2023.02) “Monitoringbericht 2022” p.249
2. ドイツは フランスに対しても 電力輸出超過
ここで、ドイツとフランスに着目して、近年の電力取引状況をみてみよう。2020年には、ドイツはフランスに8.3TWhを輸出、6.7TWhを輸入で、収支は1.6TWhの輸出超過である。2021年には、11.2TWhを輸出、4.7TWhを輸入で、収支は6.5TWhの輸出超過である。
つまり、ドイツはフランスに対しても電力の純輸出国である。反対に、2020年・21年ともにドイツが輸入超過になっているのは、自然エネルギー拡大が顕著なデンマークを筆頭に、スウェーデン、ノルウェーといった北欧の国々との間の電力取引である(図2)。
図2:ドイツの国境を超えた電力取引 2020年・2021年の欧州各国との取引状況 (単位:TWh)出典: Bundesnetzagentur & Bundeskartellamt (2023.02) “Monitoringbericht 2022” p.247