仏ルノー、日産自動車、三菱自動車の首脳は5月27日、それぞれの本社でビデオ会議に臨み、新しい3社アライアンスの枠組みを発表した。これまで限定的だった車両プラットフォームの共通化、部品共同購買などの取り組みを拡大・進化させ、コロナ経済危機で予想される競争激化のなか、3社が生き残るための基盤、新ビジネスモデルになるものと期待を込めた。(佃モビリティ総研・間宮潔)
アライアンスオペレーティングボード議長でルノー会長のジャン・ドミニク・スナ―ル氏は冒頭、新型コロナウイルスによる世界の状況に触れ、「劇的な変化のなかで、われわれの共通のアライアンスの志は変わっていない」とし、ここ数週間にわたって議論を深めたアライアンス再構築の背景、ポイントを説明した。
従来のアライアンスは、すべての市場で力強い成長、高水準の販売を追求する拡大路線だったが、世界はモビリティへのニーズが大きく変化、競争も激化していることから、コロナ禍を機に方向転換した。
「再び生産・販売を再開できた時だからこそ、3社のアライアンスは回復力、レジリエンス(強靭)、競争力を支える土台、鍵となる」と強調した。
日産の内田誠社長兼最高経営責任者は「今年は日産にとって経営立て直しに向け、加速化させる重要な年。競争力向上には選択と集中で、強味のある分野に資産を集中させ、他の領域はアライアンスの力、サポートを活用していきたい」とメッセージを寄せた。
三菱自動車の益子修会長は過去、拡大戦略を過剰に追求した結果、厳しい経営環境を招いたとの反省、「これを元の成長路線、ビジョンに軌道修正するために、アライアンスの力を活かしてきたい」とコメントした。
「リーダーとフォロワー」の枠組み導入で重複投資を削減
新アライアンスの骨子は、商品開発や先進技術、市場への取り組みで、それぞれ重複した投資を避け、先行して投資しているリーダー会社の技術、生産設備、販売アフターなどの資産をフォロワー会社が積極的に活用する「リーダーとフォロワー」の枠組みを導入した。
現在、3社生産ボリュームの39%にとどまっているプラットフォーム(車体)共有化を2024年までに倍増させ、部品共通化を拡大させる。
またプラットフォームの共通化は、アッパーボデーの領域にも広げ、モデル開発投資および生産設備投資も含めて最大4割の削減を目指す。金額にして20億ユーロ規模の削減効果が期待されている。
商品セグメント毎に、リーダー会社を決め、マザービークル(リーダー会社の開発車両)をベースに、フォロワー会社のシスタービークルの開発をサポートする。また必要に応じて、リーダー会社とフォロワー会社の車両生産を、少数の工場に集約するなど、3社による効率追求を目指す。
すでに小型商用車(LCV)の領域で、リーダー会社、フォロワー会社を決め、取り組んでいるが、これを乗用車領域に広げる。先進技術分野でも「リーダーとフォロワー」の枠組みを明確化。また各社が強味とする市場を「リファレンス地域」と位置付け、そのリーダー役がフォロワー会社を補完し、市場ごとに3社の効率を追求する。
「リファレンス地域」を設定し、リーダー会社が3社アライアンスを牽引
日産は中国、北米、日本。ルノーは欧州、ロシア、南米、北アフリカ。三菱はアセアン、豪州をリファレンス地域とした。
小型商用車(LCV)では、バン・小型ピックアップトラック分野でルノーがリーダー役となり、日産のNV250など、三菱のエクスプレスをフォロワー会社のシスタービークルに位置付けた。
1トンピックアップトラックでは、日産のナバラがリーダーとなり、ルノーのアラスカンがフォロワーとなる。
欧州市場では、BセグメントSUVのモデル刷新、コンパクトEVの将来モデルをルノーがリードして展開するが、CセグメントSUVのモデル刷新は日産がリードする。
南米地域では、ルノーと日産が現行4プラットフォームで6モデルを投入しているが、将来、1プラットフォームに集約。7モデルの投入が計画されており、ハッチバック系とSUV系で2工場が生産を分担する予定。1プラットフォームで30万台の生産ボリュームを狙っている。
日本では、日産が軽自動車のプラットフォームを開発、生産を三菱が分担。アセアンでは、三菱エクスパンダ―の日産へのOEM供給拡大(リヴィナ)、フィリピンなどでの協業を推進している。豪州はルノーが三菱向けにバンをOEM供給する。
アライアンスの対象となったモデル数は、2019年段階で全体の9%(US、中国専用モデルを除く)に過ぎないが、25年には半数の48%になる見通し。
先進技術の領域でもリーダー会社がそれぞれ分担し、効率的な開発を追求
技術領域での協業は、既にパワートレインとプラットフォームで進展しているが、先進技術領域でもリーダー会社を決めた。
運転支援技術では日産がリーダー会社を務める。eボデー(電気電子アーキテクチャのコアシステム)はルノーが開発リーダーとなった。
コネクテッドカーでは、アンドロイドプラットフォームがルノー、中国向けプラットフォームで日産が担当する。eパワートレインはCMF-A/B用でルノー、CMF-EV用で日産自動車が担当する。三菱自動車もC/Dセグメント向けPHEVの開発でリーダーとなる。