東京工業大学 工学院 電気電子系の千葉明教授が、国際的な学会「IEEE(アイ・トリプル・イー、Institute of Electrical and Electronics Engineering)」の2020年「ニコラ・テスラ賞(IEEE Nikola Tesla Award)」を受賞することが決まった。
千葉明教授は、「ベアリングレス・リラクタンスモータへの貢献」が認められ、2020年受賞者として選出された。
IEEEは電気・電子・情報関連分野における最も権威がある世界最大(43万人)の技術系の学術団体。32の専門分野(Field)にわけ、各分野に1人、あるいは3人までのグループに毎年Field Award(フィールド・アワード)を授与。いずれの賞にも、その分野の著名な人物の名前などが冠せられている。
ニコラ・テスラ(1856 – 1943)は、エジソンの時代に、現在でも多数利用されている交流送電、誘導モータの発見・実用化などに多大な貢献を行った人物で、磁束密度の単位の「Tesla」はテスラ氏の名字を発祥としている。
IEEEは、ニコラ・テスラ賞の受賞者に「電力の利用・発電に関して特筆すべき貢献を行った人」を毎年1人選出。1976年から44年間続くニコラ・テスラ賞は、IEEEでも歴史ある賞である。
IEEEのField Awardは、東工大の電気・電子・情報分野では、1986年に末松安晴栄誉教授・元学長、2003年に伊賀健一名誉教授・元学長、2008年に赤木泰文特任教授、2009年に深尾正名誉教授、2010年に古井貞熈名誉教授、2015年に岩井洋名誉教授らが受賞。
また、著名な日本人では、1961年に江崎玲於奈氏、1998年には赤崎勇氏と中村修二氏などのノーベル賞受賞者も受賞している。
[千葉教授のコメント]
ベアリングレスモータは磁気浮上して非接触で回転するモータです。東工大の博士後期課程で発明し、1989年より文部科学省の科学研究費などに支えられ独自研究開発を行ってきました。
モータは回転する力(トルク)を発生しますが、回転子は半径方向の電磁力も発生しています。この半径方向の電磁力はあまり有効利用されていなかった状況にありました。
この電磁力を調整することによってモータが磁気浮上して回転できるようになりました。
当初は「ユニークだね」とのコメントしか得られませんでしたが、現在では世界各国の研究者が研究を行い、また、企業が超純水のポンプ、半導体・液晶プロセス、超高速回転モータなどに実用化しつつあります。
一方、リラクタンスモータとしては、次世代自動車用駆動用として、レアアース永久磁石を使わないスイッチドリラクタンスモータの設計を工夫し、永久磁石モータと同等の効率、トルク密度、また、それ以上の出力が可能であることを理論的に、また、実験的に明らかにしてきました。
永久磁石モータと同等のパフォーマンスを持つモータをRare-earth-free-motor(レア・アース・フリー・モータ)と名付けました。
恩師の深尾正名誉教授、30歳の時にポスドクとして留学したカナダのメモリアル大学のRahman(ラーマン)教授のご指導に感謝します。
先輩の赤木特任教授にはIEEE Fellow, Field Award の価値についていろいろアドバイスをいただき感謝いたします。これまでともに研究を進めてきた同僚の研究者、大学院生など、多くの方々の貢献によるもので、深く感謝しています。
私としては定年ごろに受賞できればありがたいと思っていましたが、まさか50歳台で受賞することになるとは思いませんでした。この受賞を励みに、今後も研究に邁進していきたいと思っています。
■東京工業大学・千葉研究室:http://www.chiba.ee.titech.ac.jp/index.html
■(東京工業大学・千葉研究室)ハイブリッド自動車用スイッチドリラクタンスモータ、磁気浮上ベアリングレスモータ:https://educ.titech.ac.jp/ee/news/2016_11/052883.html