岸田内閣総理大臣は4月8日、総理大臣官邸での記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻に対するロシアへの追加制裁とウクライナへの支援、また石油備蓄の放出について、以下の通り発表した。
1.ロシアへの追加制裁
以下、5つの柱から成る追加制裁を科す。
①ロシアからの石炭輸入を禁止
段階的な輸入削減でエネルギー分野でのロシアへの依存を低減。夏や冬の電力需給逼迫を回避するため、再エネ、原子力などエネルギー安保および脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用を図る。
②ロシアからの輸入禁止措置の導入
機械類、一部木材、ウオッカなどのロシアからの輸入について、来週、これを禁止する措置を導入する。
③ロシアへの新規投資を禁止
G7とも連携し、速やかに新規投資の禁止措置を導入する。
④金融制裁の更なる強化
ロシアの最大手銀行のズベルバンクおよびアルファバンクへの資産凍結を実施。
⑤資産凍結の対象の更なる拡大
400名近くのロシア軍関係者や議員、更には国有企業を含む約20の軍事関連団体を新たに制裁対象に加える。これにより、資産凍結の制裁の対象となる個人は合計約550名、団体は合計約40団体へと広がる。
2.ウクライナ人および在留邦人の支援
①ウクライナ周辺国への人的貢献
政府では、既にモルドバにJICA(独立行政法人国際協力機構)のニーズ調査団を派遣し、保健医療分野のニーズ調査に加え、WHO(世界保健機関)と連携した形で現地の医療データ管理等に貢献しているが、今週から、PKO(国連平和維持活動)の政府調査団も派遣する。また、現地のニーズも踏まえ、更なる人的貢献を速やかに具体化する。
②ウクライナ避難民受入れと在留邦人支援
ウクライナ避難民が、今後とも円滑に日本渡航できるよう、当面、毎週、政府がポーランドとの直行便の座席を借り上げ、日本への渡航を支援。その第1便を4月8日(発表日当日)、日本に向けて出発させる。ウクライナ在留邦人についても、自力で渡航手段を確保することが困難な人については、この便を利用できるようにする。
3.石油備蓄の放出など(4月7日決定)
・IEA(国際エネルギー機関)加盟各国とも協調し、日本としてIEAの割当て量の1.5倍の1,500万バレルの備蓄を放出する。
・原油価格や物価の高騰による国民生活への影響に対し、緊急かつ機動的に対応するため、4月中に原油価格・物価高騰等総合緊急対策を取りまとめる。
■IEA(英語):https://www.iea.org/
[8日会見での岸田総理冒頭発言(原文ママ)]
本日は、ロシアによるウクライナ侵略に対する我が国の更なる制裁を中心にお話させていただきます。
ロシアによる残虐で非人道的な行為がキーウ近郊のブチャのみならず、ウクライナ各地で次々と明らかになっています。ロシアは、これまでも民間人の殺害や原子力発電所に対する攻撃など、重大な国際人道法違反を繰り返してきました。断じて許されない戦争犯罪です。こうしたロシアによる非道な行為の責任を厳しく問うていかなければなりません。こうした観点から、我が国として国際刑事裁判所(ICC)による調査や国連による独立した調査を支持いたします。我が国のICCへの分担金の支払を前倒しして行うなど、ICC検察官による戦争犯罪の捜査を後押ししてまいります。
昨晩、ロシア軍による残虐行為を最も強い言葉で非難し、ウクライナへの連帯を示すとともに、G7としての追加的な対露制裁措置を採ることを表明するG7首脳声明が発表されました。このG7首脳声明を踏まえ、我が国はロシアに対し、次の5つの柱から成る追加制裁を科し、ロシアに対する外交的、経済的圧力を強化いたします。
これ以上のエスカレーションを止め、一刻も早い停戦を実現し、侵略をやめさせるため、国際社会と結束して強固な制裁を講じてまいります。
第1に、ロシアからの石炭の輸入を禁止いたします。早急に代替策を確保し、段階的に輸入を削減することでエネルギー分野でのロシアへの依存を低減させます。夏や冬の電力需給逼迫(ひっぱく)を回避するため、再エネ、原子力などエネルギー安保及び脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用を図ってまいります。
第2に、ロシアからの輸入禁止措置の導入です。機械類、一部木材、ウオッカなどのロシアからの輸入について、来週、これを禁止する措置を導入いたします。
第3に、ロシアへの新規投資を禁止する措置を導入いたします。G7とも連携し、速やかに措置を導入いたします。
第4に、金融制裁の更なる強化です。ロシアの最大手銀行のズベルバンク及びアルファバンクへの資産凍結を行います。
第5に、資産凍結の対象の更なる拡大です。400名近くのロシア軍関係者や議員、更には国有企業を含む約20の軍事関連団体を新たに制裁対象に加えます。これにより、資産凍結の制裁の対象となる個人は合計約550名、団体は合計約40団体へと広がります。
次に、ウクライナの方々に寄り添った支援及び在留邦人支援について、2点申し上げます。
第1に、ウクライナ周辺国への人的貢献です。既にモルドバにJICA(独立行政法人国際協力機構)のニーズ調査団を派遣し、保健医療分野のニーズ調査に加え、WHO(世界保健機関)と連携した形で現地の医療データ管理等に貢献しています。また、今週からは、PKO(国連平和維持活動)の政府調査団も派遣いたしました。現地のニーズも踏まえ、更なる人的貢献を速やかに具体化してまいります。
第2に、ウクライナ避難民受入れ及び在留邦人支援についてです。昨日も申し上げましたが、ウクライナ避難民の方々が、今後とも円滑に我が国に渡航できるようにするため、当面、毎週、政府がポーランドとの直行便の座席を借り上げ、我が国への渡航を支援いたします。その第1便は、早速本日、日本に向けて出発いたします。ウクライナ在留邦人についても、自力で渡航手段を確保することが困難な方については、この便を利用できるようにいたします。
ロシアのウクライナ侵略によってエネルギーや食料の価格が高騰しています。我が国のみならず、世界各国の人々がガソリン価格、電気代、食材価格などの高騰に苦しんでいます。エネルギー市場を安定化させるため、昨日発表しましたが、IEA(国際エネルギー機関)加盟各国とも協調し、日本としてIEAの割当て量の1.5倍の1,500万バレルの備蓄を放出することといたしました。日本として初めての国家備蓄の放出です。引き続き日本としてできることにしっかりと取り組んでまいります。
また、政府としては、この原油価格や物価の高騰による国民生活への影響に対し、緊急かつ機動的に対応するため、4月中に原油価格・物価高騰等総合緊急対策を取りまとめます。国民の皆様の生活を守るために、国際、そして国内、双方で最大限の対策を迅速に講じてまいります。非道な侵略を終わらせ、平和秩序を守るための正念場です。国民の皆さんの御理解と御協力をよろしくお願いいたします。
先日、ゼレンスキー大統領は、日本の国会演説において、ロシアに対してアジアで最初に圧力をかけたのは日本、制裁を続けてほしい。また、ロシアが平和を追求するようになるために努力をしよう。こうした切実な思いを我々に対して訴えました。こうした声に日本はしっかりと応えていきます。
G7を始めとした関係国と連携して、日本が、国際社会が、ロシアによる暴挙を決して許さないこと。そして、日本がウクライナと共にあることを断固たる行動とウクライナの方々に寄り添った支援で示してまいります。
ありがとうございました。