取締役会が新レーシングカーの開発を承認、LMDhプロトタイプで総合優勝を誓う
独・ポルシェAG(本社:ドイツ、シュトゥットガルト 社長:オリバー・ブルーメ)は12月16日、レースレギュレーションの評価期間を経てLMDhプロトタイプの開発を承認。新レギュレーションに合致した純レーシングカーの開発を命じた。(坂上 賢治)
同社は2023年からのFIA世界耐久選手権(WEC)と北米スポーツカーシリーズのIMSAウェザーテックスポーツカー選手権へ参戦する。これらふたつのレースシリーズは共にLMDh車両という規格で争われる。
ハイブリッドプロトタイプカー規格を取り入れた両シリーズは、ボルシェAGにとってはマーケティング戦略上も、また勝ちを狙うレースカテゴリーとしても格好の標的と映ったようで、新たに開発される新レーシングカーは重量約1,000kgで、最大出力500kW(680hp)のハイブリッドシステムを搭載する予定だという。
実際ポルシェは、2014年から2017年にハイブリッドシステムを搭載した919ハイブリッドでWECのLMP1クラスに於いて、当時参戦していたアウディやトヨタを退け、ル・マン24時間レースで3連勝を達成。マニュファクチュアラーおよびドライバー選手権でも3年連続で王座に輝いている。
ポルシェAG取締役会会長のオリバー・ブルーメ氏は「LMDhカテゴリーはル・マンやデイトナ、セブリングにおいて膨大なコストを掛けることなくハイブリッドシステムで総合優勝を争うことができる、ポルシェにとって魅力的なプロジェクトです。耐久レースは我々のブランドにとってDNAの一部です」と話している。
同じ車両を用いて世界中で争われる耐久レースのトップカテゴリーへ参戦が可能となるのは、この20年間では初めてのこと。この新しいLMDhカテゴリー車両はアップグレードしたLMP2クラスシャシーの採用や、コントロールユニットを含むハイブリッドシステムのスペックをレギュレーションで統一するなど、コストの効率化でも有効に働く。
ポルシェAG研究開発部門の役員であるミヒャエル・シュタイナー氏は「中期的にポルシェはフル電動システム、効率に優れたプラグインハイブリッド、そしてエモーショナルな内燃エンジンと3つのドライブトレイン戦略に取り組んでいます。
これは市販車とモータースポーツにおいても同様です。フル電動コンセプトは環境に対する我々のコミットメントの一環として、FIAフォーミュラEを効率的かつエモーショナルな内燃エンジンではGTカテゴリーを戦っています。
ここにLMDhクラスが加わることで2つのカテゴリーのギャップを埋めることができます。ポルシェが多くの市販車に採用しているパワフルなハイブリッドドライブによる戦いが繰り広げられるのです。合成燃料の使用が可能なレギュレーションはサステナビリティの観点からも魅力的です」と述べた。
さらモータースポーツ部門の責任者であるフリッツ・エンツィンガー氏は「我々が提示したモータースポーツ戦略に絶大なる信頼を示してくれた経営陣に感謝します。ル・マン24時間レースでの総合優勝19回という記録に加え、ポルシェはアメリカの大きなレースでも何度も表彰台に上がっています。
こういった伝統をLMDh車両でもコスト管理をしながら続けていきたいと思います。他にも多くのマニュファクチャラ―がこのカテゴリーに興味を示しています。1980年代や1990年代と同様に、多くのライバルと激しい戦いを繰り広げることが、モータースポーツへの大きな後押しになることでしょう」と車両開発の熱意を示していた。