川崎製油所常圧蒸留装置
電算機による深層学習に取り組むPreferred Networks(PFN/プリファードネットワークス)と、石油製品の精製・販売を担うENEOS(エネオス)は5月24日、ENEOSの川崎製油所で原油処理を行う常圧蒸留装置でAIシステムによる自動運転を開始した。
このAIシステムは、これまで原油処理に於いて長年の知見に基づく運転ノウハウが求められる石油精製プラントを自動運転化するもの。両社は2018年度から人の技量に左右されないプラントの保安力を高めて恒久的な安定運転を確立するべく、共同開発に取り組んできた。
プラント自動運転AIシステムのイメージ
なかでも常圧蒸留装置は、これまで温度、圧力、流量、製品性状など、制御対象としている要素数(24個)や予測に用いる入力センサー数(930個)が多いことから、運転制御・操作には熟練の技術や知識が必要とされてきた。
これをAI技術による常時自動運転化した事例は世界で初めてのこととなった。具体的には先の通りで、24個の運転重要因子の常時監視と13個のバルブを同時に操作することで、原油処理量の変更や原油種の切り替え時の変動調整作業に対応。むしろかつての手動操作を超える経済性と安定高効を実現した。
プラント自動運転AIシステム稼働前後の運転重要因子(製品性状値)の制御性
常圧蒸留装置処理での原油切り替え期間中のプラント自動運転AIシステムの制御性
今後は、川崎製油所での運転に留まらず、他の製油所への展開並びにソリューションパッケージとして、同ソリューションを製品化して一般販売することを計画しているという。
両社は、今回の取り組みを通じて、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標項目の9番目にあたる「産業と技術革新の基礎をつくろう」のゴールである「強靱なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」などの達成に貢献していきたいと述べている。