パナソニックは8月28日、電気自動車のバッテリーに蓄えた電力をビルや施設内などへ供給するV2X(Vehicle to X)と蓄電池を連携させ、太陽光発電の電気をビルや施設内などで自家消費する新製品「産業用蓄電システム」の受注を12月21日から開始すると発表した。
同社はすでに電気自動車の電気を住宅に供給するV2H(Vehicle to Home)システムを販売しており、今回のV2Xで産業用にも広げてシステムの売り上げを大きく伸ばそうと目論む。(経済ジャーナリスト・山田清志)
業界初の電気自動車と蓄電池に同時充放電を実現
再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の段階的な値下げや、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた脱炭素化、電気自動車の普及の加速、電気代高騰などを受け、太陽光でつくった電気を売電するのではなく、ビルや施設などで利用する自家消費のニーズが高まっている。
パナソニックの産業用蓄電システムは、業界初の電気自動車と蓄電池による同時充放電を実現した。最大9kWの太陽光発電による充電、最大6kWの交流出力が可能となり、より多くの太陽光発電をビルや施設内などで有効活用でき、太陽光発電の売電量・系統からの購入電力量を減らし、電力自給率向上に貢献する。
また、平常時は高度な協調制御により同一共用分電盤に最大4システム接続でき、従来比約4倍の最大出力24kWまで対応可能にした。これによって、負荷に合わせたシステムの構築が可能となり、より幅広いお客にシステムを提供できるという。
さらに、単相負荷に対する追従制御で外部制御装置なしでも太陽光発電の全量自家消費を実現。逆潮流発生やRPR動作によるシステム停止リスクを低減することで太陽光発電の継続利用を実現し、自家消費向上が図れる。
1セットあたり472万円から設置可能
これまで工場に電気自動車の電気を融通するシステムは電力機器大手などが提供していたが、高電圧を必要とする産業用機器を停電時でも動かせるようにシステムを組むため、初期投資が数千万円かかるケースが少なくなかった。これに対して、パナソニックのシステムは蓄電池の台数によって価格が異なるが、1セット472万7800円~901万7800円(工事費別)となっている。
ちなみに472万円のセットは産業用パワーステーション1台、産業用蓄電池用コンバータ1台、産業用リチウムイオン蓄電池ユニット(6.3kWh)1台、系統・自立切替器1台で、901万円のセットは産業用パワステ-ション1台、産業用蓄電池用コンバータ2台、産業用リチウムイオン蓄電池ユニット2台、系統・自立切替器1台、産業用V2Xスタンド1台だ。
V2Xスタンドは、エアコン室外機1台分より小さい床面積で設置可能なコンパクトサイズで、駐車場の限られたスペースにも設置しやすく、電気自動車の購入時期に合わせて屋外工事のみで後から増設が可能だという。
パナソニックは2月に電気自動車の電力を家庭に供給するV2Hと蓄電池を連携させ、太陽光発電の電気を家庭で自家消費するV2H蓄電システム「eneplat(エネプラット)」の受注を開始。2025年度までに年間数万台の販売を計画している。同社は今後もエネルギーソリューションの提供を通じて、快適で豊かな暮らしの実現に貢献していく方針だ。