パナソニックは9月14日、大手総合化学工業メーカーのトクヤマと、同社徳山製造所(山口県周南市)で発生する副生水素を用いた純水素型燃料電池の実証を開始したと発表した。なお、実証期間は、2023年3月までを予定していると云う。
世界的に脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速する中、次世代エネルギーの1つとして水素への関心が高まっている。
そのような中で、パナソニックとトクヤマは、苛性ソーダの製造工程で副次的に発生する副生水素の有効活用は、地球温暖化防止やエネルギーセキュリティの観点のみならず、化学産業にとっても社会貢献へ活用できるものであり、大きな意義がある取り組みであるとして、今回、副生水素を用いた純水素型燃料電池の実証を開始した。
徳山製造所内に設置される実証機では、水素の供給配管や熱配管、電力出力ラインなどを集約してユニットに接続し、パナソニックが開発した6台の純水素型燃料電池を1つのシステムとして稼働させる連携制御を実現。
実証に用いる純水素型燃料電池単体の発電出力は700Wだが、6台の実証機を個別に稼働および停止させることができるため、700W~4.2 kWで任意の発電出力に設定することが可能。さらに、仮に1台が故障したとしても残り5台の継続稼働ができるため、順番にメンテナンスを行えうことで、システムとして電力の連続供給も可能となるなど、運用の柔軟性向上も期待できると云う。
なお、純水素型燃料電池の6台連携制御の実証は、国内に於いて初の取組みとなる(※)。
トクヤマでは、副生水素の有効活用を図ると共に、水素を活用した地域貢献モデルの検討を進めており、今回の実証はその一環。実証では、イオン交換膜食塩電解法で苛性ソーダを製造する時に発生する副生水素を、純水素型燃料電池に供給し、発電した電力を製造所内の事務室で使用するほか、発電する際に生成する熱も温水にして回収し有効利用する。
一方、パナソニックは、副生水素を用いた場合の稼働性能に加えて、連携制御の検証・評価を実施。将来的には、連携制御による大規模な電力需要への対応も想定していると云う。
トクヤマとパナソニックは、今回の実証を通じて、水素社会の実現を目指した取り組みをさらに進めていくとしている。
※定置用燃料電池システムにおいて、2021年9月14日現在、パナソニック調べ。