リアルタイム追跡の技術に大きく頼る日本の物流企業者
日本国内に於いても位置情報のプラットフォーム技術を提供するヒア テクノロジーズ(HERE Technologies)は5月29日、日本を含むアジア太平洋(APAC)地域の輸送/物流(T&L)業界従事者を対象にした初の広域調査の結果〝APAC On The Move〟を発表した。
この調査は、サプライチェーン、車両、物流管理を左右する最新の技術トレンドと導入の現状について当該地域の輸送/物流企業幹部1,300人(日本の回答者100人を含む)から収集したもの。
それによるとコロナ禍が始まってから3年が経過した現在でも、日本の物流企業者にとって〝エンドツーエンドのアセット追跡〟と、〝荷物の可視化の克服〟については今も難しい状況下にあると答えたという。
というのはリアルタイムかつエンドツーエンドに於けるサプライチェーンの可視化を実現する上で、人材上の課題と共に技術導入体制の難しさが大きな障壁となっているからだ。
ちなみにこのようなサプライチェーン強化のための技術導入について、回答した日本の物流企業の過半数(70%、APAC: 51%)は、アセット追跡/荷物モニタリングソフトウェアを利用して荷物、貨物をリアルタイムで追跡している。
日本の多くの物流企業が、既に何らかのIoT技術の導入を目指している
そんな国内事業者にとって位置情報取得のための主な3つの用途は、カスタマーサービスの向上(21%)、到着予定時刻(ETA)の予測とトラック&トレース機能の使用(19%)、アセットの追跡(16%)だという。
また追跡やモニタリングのソリューションを検討する際、顧客最優先の戦略を取り、回答者の3分の2近く(60%、APAC: 40%)が、荷物/貨物モニタリングソリューションの構築または購入の動機として顧客満足度の向上を挙げている。
併せて日本の多くの物流企業が、既に何らかのIoT技術の導入を目指していることも裏付けられた。日本の物流企業の間でIoTの用途として最も一般的なのは、倉庫管理(22%)、アセット追跡(19%)、在庫管理(18%)だ。
やがてトラックドライバーの時間外労働の上限強化が到来する
更に事業上のスコープをより将来に目を向けると、日本の物流企業の半数以上がブロックチェーン(58%、APAC: 27%)、ドローン(56%、APAC: 33%)、電気自動車(55%、APAC: 23%)、自動運転車(51%、APAC: 27%)への投資を計画。
これらの技術は物流業界で、顧客満足度を高めるだけでなく、重要なリアルタイム情報へのアクセスを改善することで意思決定を助ける(56%、APAC: 38%)、技術力を高める(50%、APAC: 39%)と認識されており、日本での労働力不足を緩和するための助力になると国内事業者達は期待している。
しかし根本的に日本では、深刻なドライバー不足を既存ドライバーの勤務時間を延長することで補ってきたのも事実だ。しかし2024年4月1日よりからはトラックドライバーの時間外労働の上限を年間960時間に制限するという規制強化が到来するため、この「2024年問題」へ早急に対処しなければならないと結んだ。
なおこれを踏まえ、日本国内に於いてHEREと協力関係にある技術系企業は以下のように答えている。
物流DXの実現で社会と業界へより一層、貢献できると確信
ジオテクノロジーズの杉原博茂代表取締役社長CEOは「日本の物流業界では本調査にもあるよう2024年問題が、日本の物流網の維持にも影響を与える事態が想定されます。
ジオテクノロジーズは、ミッション〝地球を喜びで満たそう〟の下、私たちがこれまで蓄積してきたビッグデータと最先端の技術を駆使して地球上で起こる様々な事象を予測出来るようにする事で課題解決を目指しています。
そんな当社は、HERE Technologiesとのパートナーシップを通じ、物流業界の労働力不足など直面する課題解決に貢献。グローバルで鍛え上げられた、革新的な技術をご紹介し、物流DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現を介して社会と業界の皆様により一層、貢献できると確信しています」と述べた。
また三菱商事の産業DX部門、田代浩司インダストリーDX部長は「弊社出資先であるHERE社調査において、実に多くの企業が、〝技術パートナーとのアライアンスが日本の物流産業におけるイノベーションの鍵であること〟を表明しております。
弊社の産業DX戦略に於いても私たちは”物流DX”をテーマに、HERE Technologies社とともにそのグローバルな知見やテクノロジーを活用し、物流産業改革に資するソリューション・サービス開発を進めています。
私たちは今後もHERE Technologies社とのパートナーシップを梃に、物流・モビリティ産業の変革に貢献し、社会課題の解決に資する持続可能なエコシステムの構築を目指して参ります」と語った。
日本の物流事業者は、位置情報を利用したDXに乗り出す必要がある
加えてFrost & Sullivan社のVivek Vaidya代表取締役社長CEOは「APAC地域のサプライチェーン/物流企業は、アセット追跡と荷物のモニタリングに於いて、進歩の段階にばらつきがあります。IoT、AI、ドローンに投資し、リアルタイムの可視化を目指す企業がある一方、多くの企業はまだ手作業で同じ目的を達成しています。
現在、手作業に頼っている企業は、おそらく一足飛びで現代のソリューションを導入することになるでしょう。アセットや貨物をリアルタイムで可視化することへの意識は、コロナ禍以後に急速に高まり、今後も続くことが予想されます。
このことは今後10年間のこの分野において、HERE Technologiesのようなソリューションプロバイダーに大きな成長の可能性があることを示しています」と話している。
最後にHERE Japanの枝隆志代表取締役社長は「日本の物流業界は現在、急速な成長を遂げるとともに、ビジネスや消費者の需要に応えるために重大な構造的な変化を経験しています。
物流業界は差し迫った『2024年問題』に対処すると同時に、業務の最適化、効率化、持続可能性の目標達成に向け、位置情報を利用したデジタルトランスフォーメーションに乗り出す必要があります。
これにより最終的な収益を増やすだけでなく、この重要な業界に人材を誘致し、定着させることも可能となるでしょう」とコメントした。