沖電気工業(OKI)は、自動運転車の円滑な走行支援ため実用化が期待される道路インフラシステム(路側センサー、路車間通信装置(注1)など)の設置条件の検討や運用効果測定のためのシミュレーション技術を開発した。
この技術は、高速道路などの自動運転車の合流地点において、実道路に設置する道路インフラシステムの導入効果の事前確認が可能。また、交通流、道路環境、路側センサーの検知性能や路車間通信装置の通信性能など、さまざまな条件に応じて、設置環境に最適な設備構築の検証ができると云う。
自動運転車は、車載の自律系センサー(注2)で周囲の安全を認知・判断していることから、円滑な走行を行うためには、道路インフラシステムによる支援が必要なケースも想定される。
特に、建造物などに遮られた合流地点では、自動運転車が本線側を走行する車両(以下、本線車両)の位置や速度などを把握できず、合流タイミングの調整が困難となる場合も。
その実現のためには、本線車両の情報を提供する新たな支援システム適用の検討が必要となるが、その際、道路インフラシステムの設置条件の検討、効果測定および運用の検証が課題となっている。
OKIはこの点に着目し、自動運転を支援する道路インフラシステムの実用化に向け、自動運転車や混在する一般車の車両制御モデル、各種道路の上限・下限速度、路車間通信の路側機設置条件や路側センサーの設置条件などを取り入れたシミュレーション技術を開発。この技術により、道路インフラシステムを導入した合流地点における車両走行の安定化の検証ができると云う。
OKIは、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議が推進する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1期/自動走行システム」の一環として、2018年度に実施された「実環境を想定した自動走行通信支援のメッセージセット及びプロトコルに関する調査検討」において、同シミュレーション技術を使用。
実環境で想定される周辺車両による電波の遮蔽やマルチパスなどの影響を考慮し、車両挙動の安定化や交通流の円滑化を支援する通信のメッセージセットやプロトコルを検討し、その効果を評価した。
また、この成果を活用し、都市高速道路および都市間高速道路の合流のモデルケースにおいて車両の挙動の安定化検証をさらに拡張。
本線車両を検知するための路側センサー、および自動運転車に本線車両の情報を配信する路車間通信装置の設置条件の検討に加え、自動運転車の挙動の把握や合流地点の交通流の変化の推測など、自動運転車合流時の円滑走行に効果が期待できる運用条件を分析することも検証した。
OKIは、次世代交通分野でインフラと車などが通信手段により情報交換を行うインフラ協調型ITSサービスを推進。今回開発した同シミュレーション技術の検証結果を踏まえ、フィールドでの検証を重ね、自動運転の普及と道路交通に関するさまざまな課題の早期解決を目指し、道路インフラシステムの実用化に幅広く取り組んでいくとしている。
注1)路車間通信:LTEなどの基地局を介さない、道路に設置した通信設備と自動車間で行われる直接通信のこと。
注2)自律系センサー:車両単独で周辺の障害物などを検知可能なレーダやカメラなどの車載センサーのこと。