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2020年12月6日【イベント】

オジエ、通算7回目のWRCドライバーズタイトルを獲得

NEXT MOBILITY編集部

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12月6日、2020年FIA世界ラリー選手権(WRC)の最終戦となる第7戦「ラリー・モンツァ」の最終日デイ4が、イタリアのミラノ近郊モンツァ・サーキット内で行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのセバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア組(ヤリスWRC 17号車)が優勝。今季2勝目を記録し、オジエは自身通算7回目となるドライバーズタイトルを獲得した。

 

また、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)は総合5位で、前日のデイリタイアを経て再出走したエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(33号車)は総合29位で完走を果たした。

 

ラリー・モンツァの最終日デイ4は、モンツァ・サーキット内で3本のステージが行なわれた。オープニングのSS14は、デイ3までに既に2回走行している全長10.31kmのステージ。

 

デイ3終了時点で総合2位のライバルに17.8秒差を築いていた首位のオジエは、このSS14でベストタイムを記録。2位との差を25.5秒に拡げた。続くSS15と、その再走ステージでボーナスの選手権ポイントがかかる「パワーステージ」に指定されたSS16をミスなく走り切ったオジエは、最終的に2位のライバルに13.9秒差をつけて優勝。今季2勝目を飾るとともに、2018年以来となる通算7回目のドライバーズタイトルを獲得した。

 

オジエは、トヨタのクルマでドライバーズタイトルを勝ち取った5人目の選手となり、ヤリスWRCは昨年のオィット・タナック、今年のオジエと、2年連続でトヨタのドライバーを世界王者に導いた。

 

ラリー後の表彰式では、優勝マニュファクチャラーを代表してトミ・マキネンもポディウムに立ち、チーム代表として戦った最後のラリーでオジエ、イングラシアと喜びを分かち合った。マキネンは2021年より、トヨタのモータースポーツアドバイザーという立場で活動を見守ることになる。

 

17号車(セバスチャン・オジエ、ジュリアン・イングラシア)

 

非常にトリッキーなコンディションのステージでクレバーな走りを続けたロバンペラは、総合5位でフィニッシュしポイントを獲得。シーズン7戦中6戦でトップ5フィニッシュを果たすなどポイントを積み重ね、ドライバー選手権5位でWRカー参戦初年度を締めくくった。

 

69号車(カッレ・ロバンペラ、ヨンネ・ハルットゥネン)

 

また、デイ3で一時総合3位につけるもコースオフでデイリタイアを喫したエバンスは、再出走を果たし総合29位で完走。最終のパワーステージでは3番手タイムを記録してボーナスポイントを獲得し、オジエと8ポイント差のドライバー選手権2位でシーズンを終えた。

 

33号車(エルフィン・エバンス、スコット・マーティン)

 

チームは今回オジエとロバンペラの活躍によりマニュファクチャラーズポイントを加算したが、首位のライバルを逆転するには至らず。5ポイント差のマニュファクチャラー選手権2位で2020年シーズンを締めくくった。なお、TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムにより、ヤリスWRCで出場の勝田貴元は、ラリー最終日も好調を維持。SS14では4番手タイムを記録し、パワーステージのSS16ではWRC参戦後初のベストタイムを記録。困難な4日間の戦いを経て、確かな成長をタイムで証明した。

 

以下、チームメンバーからコメントが寄せられた。

 

<<豊田 章男(チーム総代表)>>
セバスチャン、最終戦モンツァでの優勝、そしてシーズンチャンピオン獲得おめでとう! チームメンバーから「出発1分前のオジエ選手です」と写真が送られてきました。

 

もう出発という瞬間まで、君はパソコンの画面に向かいコースのデータ確認をしていました。その後、「SSの前のオジエ選手です」という写真も送られてきました。そんな時でも君はいつも通り、貴元の質問に丁寧に答えてあげてくれていました。

 

チャンピオンを獲ってくれたことも本当に嬉しいですが、これらの写真を見て、君がTOYOTA GAZOO Racingを選んでくれて本当によかったと思いました。一緒に戦ってくれてありがとう。

 

残念ながらチームとしてのタイトルは逃してしまいました。我々のつくったヤリスWRCにも何か足りないものがあり、チームとしても足りないことがあったということだと思います。もしかしたらエルフィンは、チームタイトルを獲れなかったことが、自分のコースオフのせいだと感じているかもしれません。

 

そのコースオフによって、彼は自身のチャンピオン獲得からも遠のきました。一番悔しい想いをしているのはエルフィン自身のはずです。しかし、彼はサービスに戻り、開口一番「チームタイトルに貢献できず申し訳ない」と言ってくれたそうです。チームタイトルを逃したことは悔しいですが、チームのために走ってくれていたこの言葉は嬉しく思いました。

 

カッレも今年1年で大きく成長してくれました。貴元も本当に頼もしいドライバーになってくれています。モンツァの最終ステージでは全ドライバー中トップタイムを貴元は出してくれました。こ

 

の選手たちと2020年のシーズンを戦えて本当に良かったと思います。一緒に戦ったドライバー、コ・ドライバー、メカニック、チームスタッフのみんな、大変なシーズンでしたが、本当にお疲れさまでした。本当にありがとう。

 

そして、今回のラリーは、トミがチーム代表を努める最後のラリーでした。トミ……、君とも一緒に戦って来れて本当に良かったと思っています。WRCに出ることを決意して、そのクルマづくりとチームづくりをトミにお願いしました。

 

実は、当時、少し無理なお願いをしたかなと思っていました。しかしトミは、本当に1年の準備期間でクルマもチームもつくり上げてくれました。しかも、デビュー戦のモンテカルロで2位表彰台、その次のスウェーデンで優勝です。その後、苦しい戦いもありましたが、その経験のひとつひとつを、我々のクルマを強くすることに繋げていってくれました。

 

2018年のフィンランドで優勝して、一緒にヤリスの屋根に上ったのは最高の思い出です。トミがヤリスを強くし続けてくれたおかげで、我々は新たにGRヤリスをつくることもできました。

 

トヨタがラリーへの参戦を通じてクルマづくりを変えて来れたのもトミがいてくれたからこそです。先日発表のとおり、トミはモータースポーツアドバイザーという役割に変わります。引き続き、トヨタのもっといいクルマづくりに力を貸してもらいたいと思います。

 

最後になりますが、大きな変化の中で臨機応変に7戦のラリーを開催いただいた主催者の皆さま、そして変わらず応援を続けてくださったファンの皆さま、1年間本当にありがとうございました。2021年も世界のあらゆる道でライバルチームの皆さまと共に走れることを願っております。

 

<<トミ・マキネン(チーム代表)>>
今年もドライバーズタイトルの獲得に成功し、しかも選手権2位も獲得できたので素晴らしい気分です。ドライバーもコ・ドライバーも、皆本当に良くやってくれましたし、良いシーズンでした。

 

セブが7回目のタイトル獲得を、我々のクルマで成し遂げてくれたのは信じられないくらい嬉しいことですし、エルフィンも我々が契約を結んだ時の期待にしっかり応えてくれました。そして、チームの全員にも感謝しています。彼らは本当に素晴らしい仕事をしてくれましたし、今後もこれまでと変わらずいい仕事を続けてくれるだろうと確信しています。

 

今回の結果は、強固なチームワークと、皆の頑張りによってもたらされたものです。これからも間近で彼らのフォローを続け、常に見守っていきたいと思います。

 

<<セバスチャン・オジエ (ヤリスWRC 17号車)>>
もちろん、今日はとても良い日です。信じられないような週末でしたし、本当に、本当に難しいラリーでした。間違いなく、最終ステージは自分のキャリアの中であまり楽しめないステージのひとつでした。

 

路面はとても荒れていたので、とにかく生き残り、ミスをしないように走りました。ここに来た時、我々はこのラリーで勝つことだけを考えていました。序盤は非常に接戦でしたが、自分たちの計画に従って攻めの走りを続け、プレッシャーをかけ続けました。エルフィンに起こったことは、タイトル獲得を狙う我々にとって非常に大きな事件でしたし、素晴らしいシーズンを戦ってきたエルフィンとスコットに同情を禁じ得ませんでした。

 

チームはマニュファクチャラーズタイトルの獲得を渇望していると感じていましたし、我々は3人のドライバーで5人のライバルを相手に戦い、あと一歩のところまでいきました。私が獲得した7回目のドライバーズタイトルはチームが成し遂げたものでもあり、彼らなしでは実現できなかったことなので感謝していますし、キャリアの延長として戦う2021年が今から楽しみです。

 

<<エルフィン・エバンス (ヤリスWRC 33号車)>>
昨日のようなことが起きてしまった後で、今日再び走り始めるのはもちろん簡単ではありませんでした。目標をパワーステージに置き、ペース自体はとても良かったのですが、難しいコンディションで2回もストールしてしまったのは残念です。

 

それでも、少しポイントを獲得し、選手権ではセブのすぐ後ろの順位を確保できました。セブ、ジュリアン、タイトル獲得おめでとう。選手権2位はもちろん自分が望んでいた順位ではありませんが、それでも決して悪くはありませんし、去年までと比べても良い結果です。

 

TOYOTA GAZOO Racingでの1年目は本当に楽しかったですし、チームのモチベーションはとても高いので、今後も改善を続けていけば来年はさらに上の順位を得られると信じています。

 

<<カッレ・ロバンペラ (ヤリスWRC 69号車)>>
本当にトリッキーな週末でしたし、今日はそれを最後まで戦い抜くための1日でした。パワーステージのグラベルセクションはとても荒れていたので注意深く走りましたが、ちゃんと完走できて良かったです。

 

ワールドラリーカーで臨んだ最初のシーズンは、自分でもとても良い戦いができたと思います。いくつかのラリーでは不運に見舞われましたが、同じくらい良い週末も過ごしました。重要なのは、シーズンを通して安定した戦いができたことと、自分が速く走れると証明できたことです。チームに心から感謝するとともに、セブとジュリアンのタイトル獲得を祝福します。

 

<<ラリー・モンツァの結果>>

1 セバスチャン・オジエ/ジュリアン・イングラシア (トヨタ ヤリス WRC) 2h15m51.0s
2 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +13.9s
3 ダニ・ソルド/カルロス・デル・バリオ (ヒュンダイ i20クーペ WRC) +15.3s
4 エサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム (フォード フィエスタ WRC) +45.7s
5 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ ヤリス WRC) +1m11.1s
6 アンドレアス・ミケルセン/アンダース・ジーガー (シュコダ ファビア R5 Evo) +3m56.2s
7 オリバー・ソルベルグ/アーロン・ジョンストン (シュコダ ファビア R5 Evo) +4m12.1s
8 ヤリ・フッツネン/ミッコ・ルッカ (ヒュンダイ i20 R5) +5m15.4s
9 マッズ・オストベルグ/トルシュテン・エリクソン (シトロエン C3 R5) +5m27.4s
10 ポントゥス・ティディマンド/パトリック・バース (シュコダ・ファビア R5) +5m53.0s
29 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ ヤリス WRC) +20m12.6s

 

<<トヨタのクルマでWRCドライバーズタイトルを獲得した選手>>

1990: カルロス・サインツ (セリカ GT-Four ST165)
1992: カルロス・サインツ (セリカ ターボ 4WD ST185)
1993: ユハ・カンクネン (セリカ ターボ 4WD ST185)
1994: ディディエ・オリオール (セリカ ターボ 4WD ST185)
2019: オィット・タナック (ヤリス WRC)
2020: セバスチャン・オジエ (ヤリス WRC)

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。