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2025年1月27日【イベント】

WRC第1戦モンテカルロ、オジエが通算10回目の優勝

坂上 賢治

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ラリー・モンテカルロ、エバンスは総合2位、ロバンペラは総合4位でフィニッシュ

 

1月26日(日)、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第1戦ラリー・モンテカルロの最終日デイ4が、フランス南部ギャップのサービスパークを起点に行なわれ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)のセバスチャン・オジエ選手/ヴァンサン・ランデ選手組(GR YARIS Rally1 17号車)が優勝。

 

エルフィン・エバンス選手/スコット・マーティン選手組(33号車)は総合2位で、カッレ・ロバンペラ選手/ヨンネ・ハルットゥネン選手組(69号車)は総合4位でフィニッシュした。

 

なお、デイ3終了時点で総合6位につけていた勝田貴元選手/アーロン・ジョンストン選手組(18号車)、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ選手/マルコ・サルミネン選手組(5号車)はリタイアとなった。

 

69号車(カッレ・ロバンペラ選手、ヨンネ・ハルットゥネン選手)

 

ラリー・モンテカルロの最終日デイ4は、サービスパークからモナコへと向かいながら3本、合計50.90kmのステージを走行。オープニングのSS16、続くSS17は、木曜日のデイ1でナイトステージとして走行したSS3、SS1の再走ステージとなった。

 

天気は早朝から良好だったが、土曜日の夜に降った雨の影響でステージは一部が濡れていたり、凍結している区間もあり、また最終のパワーステージ、SS18はチュリニ峠の一部に積雪および凍結区間もあった。そのため3本のステージ全てにマッチしたタイヤを選ぶことは難しく、ドライバーたちは早朝サービスを離れる直前まで、エンジニアとタイヤ選びに頭を悩ませた。

 

夜明け前にスタートしたSS16では、オジエ選手がベストタイムを記録。2番手タイムの総合2位エバンス選手との差を24.3秒に拡げた。オジエ選手とエバンス選手は共に、金属製のスタッドが埋め込まれたウインタータイヤ4本と、2本のスリックタイヤ(スーパーソフト)を選択。彼らのチョイスは正しく、総合3位のアドリアン・フォルモー選手より20秒程度速いタイムを記録して差を大きく拡げた。

 

しかし、続くSS17ではフォルモーが選んだ4本のスリックタイヤが路面にマッチし、ベストタイムを記録。総合2位エバンス選手と4秒差、首位オジエ選手と22.2秒差に迫った。

 

そして迎えた最終のパワーステージ、SS18はミックスコンディションとなり、全体的にはドライコンディションだったが、標高が高いチュリニ峠の一部には凍結路面も残る状況。そのため上位3人のドライバーは、いずれもスリックタイヤとスタッドタイヤをミックスして装着しステージに臨んだ。

 

33号車(エルフィン・エバンス選手、スコット・マーティン選手)

 

結果、同ステージの上位選手の中では一番最後にスタートしたオジエ選手がベストタイムを記録。ラリー・モンテカルロ通算10勝目を獲得した。また、エバンス選手はパワーステージでラインが膨らみ土手に接触しながらも、オジエ選手と0.215秒差の2番手タイムを記録。

 

フォルモー選手を7.5秒差で抑えて総合2位を獲得し、スーパーサンデーも制覇。スーパーサンデーではロバンペラ選手が2番手となったことで、TGR-WRTは総合順位、スーパーサンデー、そしてパワーステージの全てで1-2を達成し、合計60ポイントを獲得。パーフェクト・ラリーを実現した。

 

オジエ選手のTGR-WRTでの優勝回数はこれで通算15回目となり、そのうちモンテカルロは3勝目となった。かつてのカッレ・ロバンペラ選手、過去に2回世界王者を獲得したカルロス・サインツ選手と並び、オジエ選手はトヨタのクルマで最も多くの勝利を飾ったドライバーとなった。また、トヨタのモンテカルロでの優勝は、これで6回目となっている。

 

またデイ3で総合5位に順位を下げたロバンペラ選手は、SS16で3番手タイム、SS17で2番手タイム、SS18で4番手タイムを記録したことにより、総合4位を獲得。スーパーサンデーでも、オジエ選手を抑えて2番手のリザルトを残した。

 

ラリー序盤は思うようなタイムを出すことができず苦戦したが、終盤に向けて確実にペースが改善されていき、ポジティブな形でシーズンフル参戦復帰の初戦を締め括った。なお、デイ3終了時点で総合6位につけていた勝田選手、総合7位につけていたパヤリ選手は、デイ4オープニングのSS16でコースオフを喫し、リタイアとなった。

 

以下はTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team各位のコメントとなる

 

<豊田 章男 (TGR-WRT会長)>
記念すべき“セブのモンテカルロ10回目の優勝”で今シーズンの幕を開けることができました。
2019年までのセブは色々なクルマでモンテカルロを6連勝。トヨタに来てくれた2020年からは1年おきに2位と1位の繰り返し…。その法則があったので今年は絶対に勝ってくれると思っていました。

 

セブ、モンテカルロ10回目の優勝おめでとう!来年はそろそろ法則を破ってもらっていいと思っています。

 

昨シーズンは、最終戦の最終日の最終ステージまで、ヒョンデと戦い続けた本当に楽しいラリーでした。但し、それはラリーファンとしての気持ちです。チームの一員としては苦しい気持ちになることの方が多いシーズンでした。

 

今年はチームの一員としても“心の底から楽しいラリーだった”と思えるようなシーズンにしていきたいと思っています。そして、その気持ちを、またラリージャパンで味わいたい!

 

ヤリ-マティ代表、ユハ代表代行、ドライバーのみんな、コドライバーのみんな、そして、チームのみんな、よろしくお願いします!わかっていると思いますが、今年のラリージャパンは最終戦じゃないですからね…

 

ヴァンサン・ランデ選手、セバスチャン・オジエ選手

 

<ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)>
本当に嬉しい気持ちです。きっと、これ以上いいスタートは望めないでしょう。チームとして最大の60ポイントを獲得し、総合でも1-2-4フィニッシュを達成し、セバスチャン・オジエがラリー・モンテカルロ10回目の勝利を獲得するという、本当に素晴らしい、そして他に類を見ない偉業を成し遂げることができました。

 

第1戦は、最後までコンディションは非常に厳しく、今朝のタイヤ選択は大きなストレスを感じるものでした。なぜなら、ルートノートクルーがステージを走り終えた後に、路面が凍結したからです。

 

残念ながら、サミと貴元はコースアウトしてしまいましたが、彼らが安全策を選ぶように私がプッシュするべきでした。彼らにとって、このラリーは経験を積むことが全てでした。他のドライバーたちのおかげで最終的には上手くいったので、彼らに感謝したいと思います。とても見どころの多いラリーでしたし、今年はきっとエキサイティングなシーズンになると思います。

 

<エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 33号車)>
今回は典型的なラリー・モンテカルロとなり、ここ数年よりも少し過酷な週末でした。ですので、最後にポイントを獲得してフィニッシュすることができてとても嬉しく思います。今日は、非常に難しいコンディションで始まりました。

 

最後の最後で、スタッドタイヤを4本選ぶという変更に踏み切りましたが、果たしてそれが正しい判断だったかどうかはわかりませんでした。結局、2つの選択肢にそれほど大きな違いはなかったようで、最後のパワーステージはかなりスリリングな展開になりました。フィニッシュまであと数コーナーというところで危ない瞬間がありましたが、幸いにも無事に切り抜けることができました。

 

<カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)>
モンテカルロは常にタフなラリーですが、今年は特にそうでした。個人的には、かなり難しい週末になってしまいました。望んでいたような結果やペースは得られませんでしたが、最終的には多くのポイントを獲得することができたので満足しなければなりません。今日は自分たちにとって悪くない一日となり、ベストを尽くし、安定性を保ち続けたことが報われました。チームに感謝します。次はスウェーデンなので、どうなるのか楽しみです。

 

セバスチャン・オジエ選手

 

<セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 17号車)>
このラリーで10回目の優勝を飾ることができたのは素晴らしいことですし、信じられないほど幸せで、誇らしい気持ちです。このラリーは、私がラリードライバーになるという夢を与えてくれたものです。ですから、シーズンでもし1イベントだけ勝てるとしたならば、常にこのラリーを選びます。

 

今年は最後のステージまで大接戦でした。コンディションの変化や難しいタイヤ選択、そして最後までプレッシャーを感じ続けるなど大変でしたが、なんとかうまくコントロールすることができたので良かったです。確かに危ない場面もありましたが、このラリーで勝つには運も必要だと思います。チームにとって最高のスタートが切れたので、これ以上は望みようがありません。

 

<勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 18号車)>
朝最初のステージがかなり難しいコンディションになることは分かっていましたが、凍結した右コーナーに差しかかった時、ペースノートにその情報が反映されていませんでした。かなり速度を落としてコーナーに進入したのですが、それでもクルマがワイドに脹らんで小さな溝に落ちてしまい、そこから抜け出せなくなってしまいました。それまでは、特に土曜日はペースも良かったので、かなり良い戦いができていたと思います。残念ですが、次のラリー・スウェーデンに向けて集中し、チームのために良い仕事ができるように頑張ります。

 

<サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 5号車)>
今日のアプローチはこれまでと同じで、特にハードにプッシュするつもりはありませんでした。ただ、予想外の凍結したブレーキングポイントが一ヶ所あり、そこでミスを犯してしまいました。それまではすべて計画通りに進んでいたので、残念な結末となってしまいました。

 

特に土曜日は、タイムが良くなり、フィーリングも良くなり、自信もかなりつきました。すべてがうまくコントロールできているように感じていただけに、このような結末を迎えるのは残念ですが、今回の事から学び、次のスウェーデンに臨みたいと思います。

 

<ラリー・モンテカルロの結果>
1 セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1) 3h19m06.1s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1) +18.5s
3 アドリアン・フォルモー/アレクサンドレ・コリア (ヒョンデ i20 N Rally1) +26.0s
4 カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン (トヨタ GR YARIS Rally1) +54.3s
5 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1) +59.0s
6 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1) +5m44.2s
7 ジョシュ・マッカーリーン/オーエン・トレーシー (フォード Puma Rally1)+10m15.1s
8 ヨアン・ロッセル/アルノー・デュナン(シトロエン C3 Rally2)+10m26.8s
9 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ(シュコダ Fabia RS Rally2)+11m40.7s
10 エリック・カミリ/ティボー・デ・ラ・アイユ(ヒョンデ i20 N Rally2)+13m14.6s
R 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1)
R サミ・パヤリ/マルコ・サルミネン (トヨタ GR YARIS Rally1)
(現地時間1月26日18時30分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)

 

<第1戦終了時点でのドライバー選手権順位>
1 セバスチャン・オジエ 33ポイント
2 エルフィン・エバンス 26ポイント
3 アドリアン・フォルモー 20ポイント
4 カッレ・ロバンペラ 18ポイント
5 オィット・タナック 11ポイント
6 ティエリー・ヌービル 9ポイント
7 ジョシュ・マッカーリーン 6ポイント
8 ヨアン・ロッセル 4ポイント
9 ニコライ・グリアジン 2ポイント
10 エリック・カミリ 1ポイント

 

<第1戦終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位>
1 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 60ポイント
2 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 36ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 11ポイント

 

<次回のイベント情報>
WRC次戦は、2月13日から16日にかけて、スウェーデン北部のウーメオーを中心に開催される、第2戦「ラリー・スウェーデン」。雪と氷に覆われた森林地帯の未舗装路が舞台となるこのイベントは、2025年もシーズン唯一のフルスノーイベントとなる。

 

ステージは全て積雪路となり、ラリーカーは金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれた雪道専用の「スタッドタイヤ」を装着して走行。かたく締まった雪道や凍結路にスタッドがしっかりと食い込むことで、非常に高いグリップが得られる。そのため平均速度は例年非常に高く、WRCの全イベントの中で3本の指に入る超高速ラリーとなる。

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。