NTTドコモは、、4月11日、観光地や景勝地など、周辺にアンテナ設置に適するような場所がなく、また人の集まる場所における通信速度の低下への対策や、より繋がりやすいサービスエリア構築を目的とした、マンホール型基地局の試作機を国内で初めて(※1) 開発し、3月6日から実証実験(以下、本実験)を開始したと発表した。
同社は、観光地や景勝地などでは、アンテナ設置に適した建物がなく、人の目につかないように通信設備を設置することが難しいため、安定したサービスエリアの構築が困難となっており、そのような場所のエリア化には景観を保護しながら設置が可能な基地局の必要性を述べている。
また、このマンホール型基地局を本格運用するにあたっては、あらゆる環境で以下の3点を満たすことが必要であり、同実験では、これらを満たす技術の確立を目的とするとしている。
①利用客に快適な通信環境を提供できるサービスエリアが確保できること
②マンホール上を含むマンホール型基地局周辺の電波の強さが、電波防護指針(※2)に基づく電波法令を順守した値であること
③設置場所の安全基準(※3)に準拠したマンホール蓋の強度であること
同実験では、まず積雪環境下で上記の3点を満足できるかを確認するため、北海道札幌市のドコモ管理環境内に実験用の基地局を開設、鉄製のマンホール蓋と同様の「耐荷重性能T-25規格(※4)」を満たす樹脂製のマンホール蓋を用いて、想定通り半径90m程度(※5) のサービスエリアを確保できることを確認しており、マンホール上の電波の強さについて安全性を確保した設計法を検証。
引き続き、多くの利用客が集まる環境での高負荷環境や高温多湿の環境、降雨の多い環境下などで上記3点を満たすことができるかを確認するため、東京都内や沖縄県にて実験を行うとしている。
今後ドコモは、2018年度内の本格運用をめざし、基地局設置が難しかった地域への通信環境の改善に取り組み、将来的な5Gへの技術の応用についても並行して検討を進めていくとコメントしている。
※1:2018年4月11日現在、日本国内における通信事業者として初めてとなる。(ドコモ調べ)。
※2:電波が人体に影響を及ぼさないために国が定める指針で、電波の強さの基準値を規定している。
※3:同実験では高速自動車国道、または道路管理者が指定する「重さ指定道路」で規定されている規準(最大25t)を安全基準としている。
■国土交通省 重さ指定道路:http://www.ktr.mlit.go.jp/road/sinsei/road_sinsei00000023.html
※4:マンホール上部に緊急大型車両(はしご付消防ポンプ自動車など)が停車する可能性を考慮した耐荷重規格。同実験では、マンホール型基地局全体の耐荷重として上記規格を満たしている。
※5:札幌での実証実験局における数値。サービスエリアの広さは周辺の環境によって異なる。
[マンホール型基地局の概要]
1. 概要
マンホールの中に基地局を設置。サービスエリアを最大化しつつ、基地局の真上に人が立った状態でも基地局からの電波の強さが電波法令を満たすことが同技術のポイントとなる。
アンテナは地中10cmの深さに設置されており、無線装置への光回線の接続、電源の確保は、地下埋設された配管により地上から引き込んでいる。また、サービスエリアは半径90m程度となっている。
本技術の導入により、地上への構造物の設置が難しい環境においても基地局のエリアを構築することが可能となる。
2. マンホール型基地局のスペック
<マンホール型基地局スペック(札幌検証局)>
方式:FDD-LTE
周波数:1.5GHz帯(BAND21)
帯域幅:15MHz
MIMO対応:2×2MIMO
下り変調方式:256QAM
最大スループット:DL:150Mbps/UL:37.5Mbps
サイズ(埋設部分):70cm×70cm×70cm
装置のサイズ:約29cm×約17cm×約7.5cm
重さ:約15kg
<マンホール蓋のスペック(札幌検証局)>
サイズ:直径64.8cm・厚さ5cm
重さ:約27kg
耐荷重:25t(トン)
3. 実証実験基地局
実証実験用の初めての基地局を北海道札幌市に開設し、主に、積雪環境が運用に与える影響を検証、今後、高温環境やトラフィック負荷が運用に与える影響の検証も予定している。これらの実証実験は、2018年度末の完了を予定している。