日本電信電話(NTT)は、存在を意識させることなく周囲に馴染む電池として、光透過性を有する「透ける電池」を作製し、電池動作を確認。今後、この研究開発を推進し、IoTの更なる可能性を拡げるため、この電池の適用領域を探索すると共に、性能向上を図っていく。
なお、同成果は、11月29日から30日開催の「NTT R&Dフォーラム2018(秋)」で展示される。
[研究の背景]
NTTでは、IoT(あらゆるモノをデバイス化しネットワークに接続させる事)の普及により、今後、巷に様々なデバイスが溢れ、将来、人々がこれらデバイスを煩わしく感じる可能性について懸念。その存在感を抑えるという意味においても、デバイスの小型・軽量化は重要だとしている。
そして同社は今回、新たな観点として「透ける・透明」に着目。スマートフォンなどの長時間の使用や、安定的な電力供給のエネルギー源として蓄電池の研究・開発を行ってきた経験を活かして、存在を感じさせないデバイス作製の可能性探索のため、光の透過性を訴求した電池を開発した。
[研究の成果]
これまでの電池の研究開発は、EV、スマートフォン、ドローン等への適用を念頭に、より大容量、より長寿命、より高い安全性を目指して設計。そのため、従来電池の電極は、金属の集電層上に活物質、導電材、結着剤が混合された合材層が形成され、全体的に黒色で光を透過しない構造が一般的だった。
今回NTTは、光透過性の観点から電池を構成する材料と構造に着目。入射光の吸収と反射を抑制する技術開発を行い、存在感なく周囲に馴染むデバイスを目指した(図1)。
○材料選定技術:光の吸収を抑制しやすい材料を電池の電極として選択。
○構造制御技術:光の吸収と反射を抑制しやすい構造とするための、電池の電極を作製。また、適用領域の拡張を目指して、電極を導電性フィルム上に成膜し、電解質をゲル化することで、「透ける」に加えて、「曲がる」電池を実現。
今回開発された電池は、一辺が9×5cmの長方形(図2.左)。動作確認のため、電池を市販LEDに接続し、5分間の点灯を確認した(図2.右)。
その具体的な性能は、光透過特性については、平均約25%の透過率(図3.左)。向こう側が透けて見える一般的なサングラスの透過率に相当する。
また、充放電性能評価では、平均電池電圧1.7V、放電容量0.03mAh(電流密度0.01mA/cm2)。一般家庭にある掃き出し窓約1.5個分のサイズで市販のコイン電池CR1025の容量に相当する。
さらに、充放電可能な二次電池として動作することを確認(図3.右)。充放電を100回繰り返した後でもLED点灯が可能であることを確認した。
[今後の展開]
NTTでは、この「透ける電池」について、従来の電池では適用困難だった領域への適用範囲拡大の可能性を指摘。近年、研究開発が進んでいる透明に関する技術分野(情報表示端末分野のディスプレイ、建物の窓等の建材分野の太陽光発電素子など)との組み合わせにより、IoTの新たな可能性拡大に繋がるとしている。
今後、同電池の透明度と電池性能の向上の両立に取り組み、具体的な適用先を探索していく。
■NTT R&Dフォーラム2018(秋):https://labevent.ecl.ntt.co.jp/forum2018a/info/index.html