NTTデータと国際自動車は、kmタクシー(国際自動車)のドライバーを対象とした運転特性に基づき、脳の健康状態を推定可能か検証する実証実験を2024年1月から開始する。実証に参画・協力する企業は、NTTデータ・国際自動車・エーザイ・ゼンリン・NPO法人高齢者安全運転支援研究会の4者。
この実証実験では、エーザイが提供する脳の健康度のセルフチェックツールの活用とを組み合わせて、kmタクシーの車両にGPS機器を設置。これによってドライバーの運転行動を調査することで、現状の脳の健康状態を推定するアルゴリズムの実現性の評価検証を実施していく。
また同アルゴリズムの構築・検証にあたっては、運転者の速度、加減速状況等の走行データ、ゼンリンが提供する地図データを基に開発するとしている。
同実証を行うことになった理由は、これまで軽度認知障害の段階では症状に気づけず、認知症になって初めて病院を受診する人が多いため。
そこで将来的には、開発されたアルゴリズムデータを用いて運転行動から脳の現状の健康状態を推定・通知することで、認知機能の低下を抑制するための対処や、更には早期の病院への受診等の行動変容を促す。
図:本構想の将来目指す姿と社会的意義
結果、これらの取り組みを通じて、ドライバーの運転の安全性向上や健康の維持向上を図り、利用者が安心できるタクシー社会の実現を目指すとしている。加えて5年後までに同実証により開発した新たなサービスの商用化を目指す。
なおこれは運輸・運送業界から高齢ドライバーの早期退出を促すものではなく、自動車の運転という日常生活の中で収集可能なドライバーの運転特性から脳の現状の健康状態を推定。結果をドライバーへ通知して病院の受診や認知機能低下抑制に向けた対処を促すもの。
早期の軽度認知症の初期傾向を素早く発見することで、高齢ドライバーが認知症になってしまう前に、そうした兆候を抑えて安全運転が可能にするべく、健康寿命および運転寿命を延ばす施策にも活かしていく構え。
実際、認知症患者の数は年々増加傾向にあり、65歳~75歳頃を境に発症者が増え始めるといわれている。認知症による社会的な影響の一例として、認知機能の低下による運転事故が挙げられる。
具体的な死亡事故件数のうち、高齢者が第一当事者となる割合は増加傾向で、かつそれらの事故では認知機能低下が疑われる高齢者が多いというデータ(PDFリンク)も存在するという。
対して認知症は、これまで治療が難しいとされてきたが、認知症の約6割を占めるアルツハイマー病の早期段階への新たな治療薬が承認され、疾患の進行の抑制が期待できるようになっている。
つまり認知症発症以前の軽度認知障害の段階では症状に気づけないことを防ぎ、今後はどのように早期に認知機能低下を検出し、低下の抑制のための対処を始められるかを検証していく。
NTTデータと国際自動車では「物流業界を筆頭とした広域業界で、より安心安全かつ、健康長寿な社会の実現に貢献していきます」と話している。
まず実証実験では、実証に参加する対象者は、エーザイが提供する脳の健康度のセルフチェックツール「のうKNOW®」を利用して脳の健康度を把握する。
その後、kmタクシーの所有する車両に設置したGPS機器から、速度、加減速状況等の対象のドライバーの走行データを取得。これらの走行データとゼンリンが提供する地図データ、そして脳の健康度データをを突き合わせてドライバーの脳の健康状態を推定するアルゴリズムを開発する。
実証の対象となるのは、無作為に選定した数十名の65歳以上のドライバー。最初は少人数を対象に実施し、状況に応じて対象者を広げ、精度向上を図ることも検討していく。
検証期間 :2024年1月24日~6月30日
場所 :首都圏
実施内容:
(1)のうKNOWを利用し、対象者の脳の健康度データを取得する
(2)kmタクシーの車両にGPS機器を設置し、速度、加減速状況等のドライバーの走行データを取得する
(3)取得データを分析し、アルゴリズム開発を実施する
収集するデータ:
- 走行データ
- 脳健康度データ
目的 :運転者の速度、加減速状況等の走行データ、ゼンリンが提供する地図データを基に、脳の健康状態を推定するアルゴリズムを検討する
各社役割:
– NTTデータ:運転特性データの分析
– kmタクシー:実証フィールドの提供
– エーザイ:脳の健康度のセルフチェックツールの提供
– ゼンリン:地図データ(道路データ)の提供
– NPO法人高齢者安全運転支援研究会:検証に向けたデータ収集支援、及び分析検証への助言