日産自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市西区高島、社長:西川廣人)は、9月9日に定時取締役会を開催した。この席上で西川廣人社長は現職の代表執行役CEO(最高経営責任者)職を辞任したい意向を表明。日産は同取締役会での議論の後、9月16日付けで代表執行役CEO職からの辞任要請で決議し、西川氏はこれを了承した。(坂上 賢治)
これに伴い同社・取締役会は、同日付けで代表執行役でCOO(最高執行責任者)の任にある山内康裕氏にCEOを代行させることを決定。同日の午後9時40分頃から横浜市内の同社のグローバル本社で緊急記者会見を開いた。
今後は、同社の指名委員会で正式な後任CEOの選定を速やかに進め10月末までに決定したい意向を表明している。
西川氏の辞任理由に関しては、社外取締役で指名委員会委員長の豊田正和氏が「株価連動型報酬制度の内部調査が終了。制度自体も2020年度に廃止するなど一区切りがついたということで西川氏自身が辞任を申し出た。
後任のCEO選びについては、既に指名委員会で着手を進めており、世界の自動車産業を俯瞰でき、ルノー・三菱自動車との連携に理解と関心がある方という基準で後任候補を選定していく」とした。また辞任理由に関して、株価連動型報酬制度に基づく報酬嵩上げに関する事柄についての言及は避けた。
日産という企業としても「決算の過程で、役員報酬の会計処理と開示が適性になされていることを確認しているが、ガバナンス上の問題としても重く認識していることから、不正の認識等が一切認められなかった者についても、増加額の返納を求める。
既に西川氏ほか元取締役1名から返納の意思を確認しており、今後、執行役員についても会社として然るべき対応を取っていく」としている。
西川氏自身も「同制度に違法性はなかった」としつつも、実運用を行っていた前日産自動車代表取締役のグレッグ・ケリー氏の名前を挙げ、企業のガバナンス上、大変重い責務を認識しているとした。
なおこれに先立ち、同社はカルロス・ゴーン元会長らによる不正行為に関する社内調査報告を、外部法律事務所から受けたことを公式発表している。
この報告書では、ゴーン元会長らによる不正行為を認定。報告書の詳細については「個人情報保護」「社内に於ける密性情報」「司法手続きへの影響」を考慮し概要のみの公表に留めている。
同概要に関しては、ゴーン元会長およびケリー元代表取締役の両名が2009年度から2017年度まで合計約90億7800万円を取締役退任後に受領する形にすることで取締役報酬ではないように装い、取締役報酬開示義務違反を行った。
取締役報酬として開示すべきだった株価連動型インセンティブ受領権の公正価額合計約22億7100万円を確定しなかったかのように隠蔽して開示義務に違反した。
さらにゴーン元会長は、様々な方法で会社資産を私的に流用したなど、一連の不正行為に関わる日産の被害総額を総額350億円と推定。「当社はこの社内調査結果を踏まえ、今後、元会長らの責任を明確にすべく損害賠償請求のための提訴を含めた措置をとってまいります」と結んでいる。