NEXT MOBILITY

MENU

2021年3月19日【テクノロジー】

日産、産学連携のバーチャル交通安全研究所を創設

NEXT MOBILITY編集部

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
実車を使った運転機能の計測

 

 

日産自動車は、新潟大学、北里大学、相模女子大学と連携し、ネットワーク上に「交通安全未来創造ラボ」を創設した。このラボでは、交通死亡事故ゼロを目指し、高齢ドライバーや幼児・児童、訪日外国人、さらに過疎化による公共交通機関の縮小等で移動に不安や不自由を抱える人など、誰一人取り残すことのない交通社会におけるダイバーシティ(多様性)の実現に向けた研究を行っていくと云う。

日産・新ロゴ

交通安全未来創造ラボは、日産と新潟大学が2018年に発足した、まち・生活・交通を結び、安全な未来を目指す交通安全プロジェクトである「トリトン・セーフティ・イニシアティブ(*3)」を発展、拡大させたもの。また、日産が約60年間継続して取り組む交通安全啓発活動「ハローセーフティキャンペーン」の一環として進められるものでもある。

 

ラボでは、先行研究により、認知力や身体機能の低下等に起因することが判明している、高齢ドライバーの運転誤操作について、正確に解明する他、その背景要因(生活習慣や文化、地域社会との繋がり)まで遡って研究を進める他、その成果を活かした、高齢ドライバーが健康で長く、安全に運転できるような交通安全ソリューションの創出に挑戦する等、優先課題として高齢ドライバーの交通事故削減に取り組んでいく。

 

また、参加者に生体医工学、医療衛生、生活・衣装デザイン、ソーシャルデザインなど多岐に亘る研究者を迎え、多様な参加者の知識を融合することでイノベーションを産み出す手法“Diversified innovational method”を採用。自治体、研究教育機関、医療機関、まちおこし団体など、幅広い連携先からもパートナーを発掘していくと云う。

 

 

コンピュータグラフィックスを使ったドライバーの視認性の計測。

コンピュータグラフィックスを使ったドライバーの視認性の計測。

 

 

[計画する研究テーマ]

 

① 身体機能測定、ドライビングシミュレータ、実車走行試験を組み合わせた、高齢ドライバーの運動・運転機能データの収集とその同期解析。2021年は、高齢ドライバーの運転時の視線解析、色彩反応解析を中心に取り組む。

 

② コンピュータグラフィックスを用いて、高齢ドライバーの視認性研究と、その自覚ツール及び交通安全ソリューションの開発。視認性については、最先端の有効視野研究(*1)に取り組む。

 

③ 生活・服飾文化研究、及び上記①②の研究成果を使った、高齢ドライバーにも目につきやすい歩行者側での交通安全ソリューションの開発。

 

④ 新潟大学と日産が共同創案した「ハンドルぐるぐる体操(*2)」の効果検証。

 

⑤ 研究で開発した自覚ツール、交通安全ソリューションが社会に広まり定着していくためのソーシャルデザイン研究。

 

それぞれの研究は分野にまたがる横断チームによって行われ、その成果は次年度以降、随時公開される。

 

 

日産は、今後も、先進安全技術の幅広い車種への搭載や、さらに安全な技術開発の推進を通じて、交通事故による死亡者を出さないゼロ・フェイタリティ社会の実現を目指すとしている。

 

 

[ラボ登録研究員]

 

・村山 敏夫 特別研究員 (新潟大学 工学部工学科、教育学部保健体育・スポーツ科学講座 准教授)

専門は、応用健康科学・健康社会デザイン。人の行動変容を促し豊かな社会創りに向けた提言活動を行う「行動する研究者」。受賞歴は日本体育学会測定評価専門分科会優秀賞等多数。住民一人ひとりに寄り添った交通安全活動で新潟県警察本部、出雲崎町から感謝状を受領。本ラボでは、高齢ドライバーの運動機能評価と地域デザインを担当。

 

・川守田 拓志 特別研究員 (北里大学 医療衛生学部リハビリテーション学科視覚機能療法学 准教授)

専門は、眼光学と視覚設計。加齢と視覚に関する研究や社会活動での実績多数。信条は「見やすい世界を創ること」。夕方早めの点灯を促す「おもいやりライト運動」を研究者の立場から牽引。本ラボでは、高齢者の視覚機能を担当する。日本眼光学学会常任理事、International Refractive Society副会長。

 

・角田 千枝 特別研究員 (相模女子大学 学芸学部生活デザイン学科 准教授)

専門は、衣生活、被服設計・生産、服飾文化。お茶の水女子大学・奈良女子大学の大学院で博士(生活工学)を取得。アパレル業界での実務経験を活かし、一般市民に向けた安心・安全な日常生活のための衣服設計を研究テーマとして活動。ラボでは、データに基づき、「おしゃれ×安全」をテーマとする研究に取り組む。

 

<協力団体>

 

・株式会社PRIDIST(ドライビングシミュレータ、自覚ツール・交通安全ソリューションの開発)

 

上記に加え、日産自動車、株式会社TBWA HAKUHODO等から、事故分析・運転行動モデル化、機械工学、将来交通、ソーシャルデザイン等の研究員が登録されている。

 

 

*1)有効視野研究:ドライバーが眼を使い、生理的視野(眼科で計測する視野)中心付近に固視点(注視点)を設けている際に、外界から有効に情報を得られる範囲を有効視野と呼びます。その有効視野範囲や視野内の反応時間を評価する仕組みを創る研究。

*2)ハンドルぐるぐる体操:実演映像<https://youtu.be/4hxe-z7WrFY

*3)ToLiTon (Town, Life and Transportation) Safety Initiative:
従来の交通安全の枠にとどまらず、「まち・生活・交通」を結ぶ提案を目指すことから命名したプロジェクト。ギリシャ神話に登場し水害を鎮める海の神であるトリトン(Triton)から、プロジェクトの目指す安全・安心な世界観を表現。また、太陽系でもっとも遠い惑星でもある海王星の衛星でもあるトリトンからプロジェクトのサステナビリティ(持続可能性)をイメージ。

 

 

■(日産)交通安全未来創造ラボ:https://www.nissan-global.com/JP/SAFETY/HELLOSAFETY/LAB

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。