日産自動車は9月21日、東北大学 薬学研究科などと共同で「常温暗所でも効果を発揮する空気酸化触媒活性種によるウイルス不活性化技術(以下、空気酸化触媒・ウイルス不活性化技術)」を開発したと発表した。
同技術には、ウイルス表面のタンパク質などを酸化して変性・分解し、ウイルス不活性化への応用が期待できる他、通常、酸化に必要な光照射を必要とせず、空気中の酸素を酸化剤として働かせて、常温暗所でも効果を発揮する特長があることから、新型コロナウイルスやその他様々なウイルスに加え、各種病原体、真菌・カビ、細菌等を不活性化する効果、また将来的には空調機器や空気清浄機のフィルター、抗菌・抗ウイルス性基材に加え、マスク、医療用各種繊維製品などへの幅広い応用が期待できると云う。
技術の詳細
有機ニトロキシルラジカル酸化触媒(以下、ラジカル触媒)には、触媒作用を向上させる物質(助触媒)と協働し、空気中の酸素を酸化剤として様々な有機化合物を酸化。また、通常、酸化には光照射が必要となるが、常温暗所でも効果を発揮する特長があると云う。
日産は、東北大学 薬学研究科、材料科学高等研究所及び多元物質科学研究所と共同で、このラジカル触媒を活用した「空気酸化触媒・ウイルス不活性化技術」を開発。
その効果検証に於いて、ラジカル触媒の空気酸化によって生成させるオキソアンモニウムイオンが、ウイルス表面のタンパク質を酸化し不活性化することで、標的細胞への結合やウイルスの感染力を低下させること、そしてSARS-CoV2(オミクロン株)のスパイクタンパク質の受容体結合ドメインを処理することで、受容体への結合活性が著しく低下することを確認(タイトル図)。
また実際に、SARS-CoV2の代替ウイルスであるネコのコロナウイルスを用いて、ネコの腎細胞への感染活性について評価したところ、細胞の形態変化が顕著に抑制されたと云う。
技術開発の背景
日産では以前より、添加剤として、従来より自動車用塗料の高分子基材のほか、内外装材に使われる繊維材料や有機高分子材料に使用され、長期間に亘って光劣化反応(ひび割れ、脆化、退色等)を抑制する効果があると知られるラジカル触媒に着目。その触媒作用を積極的に有効活用する方法として、ウイルスの酸化による不活性化への適用のための研究開発を行ってきたと云う。
今回、こうした日産の自動車開発における技術や知見と、東北大学 薬学研究科などが有する医薬品開発技術、医薬品評価技術等の薬学技術、触媒調製技術、触媒性能評価技術を活用し、技術を開発するに至った。