日産自動車は3月6日、バイオエタノールを使用して高効率発電を行う定置型発電システムを開発。自社・栃木工場にてトライアル運用を開始した。今後は栃木工場での運用を介して発電量を向上させつつ、来たる2030年からの本格運用を目指していくと見られる。
この発電システムを開発したことについて日産は、2016年に固体酸化物形燃料電池(SOFC)を発電装置とした燃料電池システム「e-Bio Fuel-Cell」技術を自動車の動力源として世界で初めて車両に搭載。その車載用SOFC開発の経験を生かした同技術を定置型発電システムへ応用していくという。
今回、トライアル運用で使用するSOFC( 固体酸化物形燃料電池 )は、エタノール、天然ガス、LPガスなどの様々な燃料を使って発電することが可能なシステムだ。
これら複数の燃料を高温で作動させられる改質器を使って酸素と反応させ、発生した水素を利用して発電を行う仕組みだ。システムは高温で作動するため触媒の活性度も高く、固体高分子形燃料電池(PEFC)の発電効率が60%であるのに対して、日産SOFCの燃料電池単体の発電効率は70%という高効率が実現されていることも大きな特徴のひとつだ。
今後、日産はSOFCスタックの構成部品であるメタルサポートセルを開発し、セル強度を向上していく構え。その結果、起動停止時間の短縮や急な出力変動要求に対する負荷追従運転が可能となり、将来的に再生エネルギーとの連携を行う場合に、効果的なSOFCシステム運転が可能になると話している。
なお今回の定置型発電システムでは、バイネックス(本社:東京都港区、社長 青木 宏道)と共同開発したソルガムを原料としたバイオエタノール(ソルガムバイオエタノール)を採用し、同社より調達する(2025年より調達予定)。
ソルガムバイオエタノールは、SOFC発電時にはCO2を放出するが、そのCO2はソルガムが成長する過程で大気中のCO2が吸収されたものであり、CO2の増加をゼロに近づけることが出来る「カーボン・ニュートラル・サイクル」の実現に貢献できるものとしている。
ソルガムの特徴は以下の通り
(1)イネ科の一年草植物で、生育が早く、約3ヵ月で収穫できるため、栽培適地では年に複数回収穫ができる。
(2)寒冷地や乾燥地にも順応できため、幅広い地域や土壌での栽培が可能。
(3)茎部分をエタノールの原料、実部分は食料に使用するため、食料との競合が発生しない。
(4)搾汁後の茎の絞りカス(バガス)もバイオマス発電に活用できる可能性がある。
日産のパワートレイン生産技術開発を担当する常務執行役員の村田和彦氏は、今回取り組むSOFC発電に関して、「内燃機関から電気自動車への大きな変革の中で日産は新たな領域における様々な技術開発にチャレンジしており、SOFC発電システムも日産が強みを持つ技術の一つです。
今後も他がやらぬ革新的な技術で、電動化の推進とともに、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります」と説明している。
また日産は2050年までに事業活動を含むクルマのライフサイクル全体におけるカーボンニュートラルを実現する目標に取り組んでおり、生産分野に於いては、工場のエネルギーを削減しながら革新的な生産技術を導入し、2050年までに工場設備を全面的に電動化させていくという。
加えてそれと同時に、使用する電気をすべて再生可能エネルギーで発電された電気と代替燃料を使って燃料電池で自家発電した電気に替えていくことで、生産工場におけるカーボンニュートラルを実現していきたい考えだ。