Niterra(ニテラ)グループの日本特殊陶業( 社長:川合 尊 、本社:名古屋市東区)は3月27日、開発中の固体酸化物形セル(SOC:Solid Oxide Cell)を使用し、水電解による水素製造と燃料電池による発電を1台のセルスタックで実現するシステム「リバーシブル SOC システム」を開発した。
リバーシブルSOCシステム開発の背景は、 再生可能エネルギー由来電力の導入が進んでいるなかで、同エネルギーは発電量が変動するため、需給バランス上の電力の余り、あるいは不足する余剰電力の利活用が社会的な課題となっている。
これを受けて同社は、兼ねてから有する燃料電池の技術を応用し、セルスタック 1 台で 水電解による水素製造と燃料電池による発電が可能な 「リバーシブルSOCシステム」を開発した。
このリバーシブルSOCシステムシステムに使われるセルスタックは、「電気を使って水素を生成するSOEC」と、「水素と空気を使って電気を生み出す SOFC 」のそれぞれの動作が可能だ。
どちらもCO2などの温室効果ガスを排出しないため、カーボンニュートラルの実現には欠かせない技術といえる。また単一のスタックで水素製造と発電を切り替えながら使えるため、SOECとSOFCの併設に比べてシステムをコンパクトにすることができ、設置面積が小さくなるなどのメリットもある。
しかも既存のSOCシステムの場合は 、セルスタックを700℃前後の高温に保持する必要があり、この熱エネルギーのマネジメントがシステムの効率を大きく左右する。
対して同社システムでは、内部で発生する熱を有効に活用できる小型で高効率なホットモジュール(セルスタック、熱源、ガス配管類、断熱材で構成された構造体。高効率でセルスタックの700℃前後の昇温、高温の保持が可能)を搭載。高温環境下でのセルスタックの電気化学特性を制御する技術と熱流体解析技術を応用した。
これを踏まえた具体的な利用シーンとしては、発電量の季節間変動が大きい太陽光発電と水素貯蔵システムを組み合わせて、夏の余剰電力をSOECで水素に変換貯蔵。冬に不足する電力を夏に貯めた水素によるSOFC発電で補うことで、季節間の電力需給の調整が可能とした。
また災害などで停電が発生した際も、貯めた水素でいつでも発電でき 、昼夜問わず柔軟にエネルギーを供給できる電源となるため 、非常用電源としての役割も果たすこともできる。
同社では、このリバーシブルSOCシステムに係る将来展望について、「今後は2024年度に実証をおこないながらエネルギーマネジメントシステムとしての検証をしていきます。
実証ではSOCシステムの耐久評価実績の取得、水素貯蔵システムと組み合わせた稼働実績の取得、SOCシステムの変換効率向上のための改善活動などを予定しています。また、社会へのSOCシステム普及促進のための啓蒙活動、協業パートナーの探索をおこない、2025年度中の製品化を目指します。
当社はSOC事業に於いて、セルスタック、ホットモジュール、システムを広くお客さまに提供できる、業界のリーディングカンパニーを目指し、持続可能な社会の構築に貢献してまいります」と話している。