中日本高速道路(NEXCO中日本)は11月21日、橋梁の鉄筋などの金属腐食抑制を目的に、富山県立大学、札幌市立大学と共同開発してきたプロピオン酸ナトリウムを活用した新たな凍結防止剤を、今年度の冬期よりE8 北陸自動車道(北陸道)やE41 東海北陸自動車道(東海北陸道)の一部区間で導入すると発表した。
なお、導入にあたっての検証では、従来のものと比較しても性能・作業性共に変化がなく、ライフサイクルコストを約10%低減が見込めるとの結果を確認。これにより、橋梁など構造物のさらなる長寿命化が図られ、安全性の向上が期待できると云う。
開発の背景と経緯
NEXCO中日本では、高速道路の冬期走行時の安全性を確保するため、凍結防止剤として、これまで主に「塩化ナトリウム」(以下、塩ナト)を使用してきたが、1993年頃にスパイクタイヤが使用されなくなって以降、その使用量が順次増加。それに伴い、橋梁などが塩害で劣化する事例が多くなったことから、劣化抑制に有効な凍結防止剤が求められてきたと云う。
そこで2015年度より、塩ナトに金属腐食抑制効果に優れる「プロピオン酸ナトリウム」(以下、プロナト)を混合した新たな凍結防止剤の導入に向けた検討と現場への試験散布を実施してきた。
適用性の検討結果
プロナトは高価なことから、塩ナトとプロナトを重量比9:1に混合し、その性能を検証した結果 、塩ナトと比べ凍結防止効果が同程度で、散布時の走行安全性や周辺環境(水質、臭気、植生)への影響や作業性に問題はなく、さらに金属腐食抑制効果があることがわかった。
橋梁の鉄筋コンクリート床版の塩害劣化事例(左)と、顆粒状プロピオン酸ナトリウム(右)。
期待される効果と今冬期の導入状況
さらに、以上の2015年度からの試験結果や試験散布の実績から、新たな凍結防止剤と従来の塩ナトを、橋梁が多い区間(散布区間の橋梁延長比率が約6割)に散布した場合の100年間のライフサイクルコスト(凍結防止剤の散布に要する費用と鉄筋腐食による構造物の補修に要する費用の合計)について試算・比較を実施したところ、新たな凍結防止剤のほうが約10%のコスト低減が見込めることが判明。
このことから、NEXCO中日本は、この凍結防止剤を、今冬期より北陸道の「白山インターチェンジ(IC)~金沢森本IC」間と東海北陸道の「白川郷IC~小矢部砺波ジャンクション(JCT)」間で導入することを決定。今後は、ライフサイクルコストなどを勘案しながら、同社管轄の他区間への導入も検討していくと云う。