加藤勝信厚生労働大臣は4月27日、新型コロナウイルス感染症を、令和5(2023)年5月8日から「5類感染症」に位置づけることを発表した。これを契機に、新型コロナウイルス感染症への対策は、行政が様々な要請・関与をしていく仕組みから、基本的には個人の自主的判断に委ねられることとなる。
5類感染症への移行について
新型コロナウイルス感染症対策本部は、今年1月27日、新型コロナウイルス感染症(※1)について、オミクロン株と大きく病原性が異なる変異株が出現する等の特段の事情が生じない限り、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法/※2)上の「新型インフルエンザ等感染症」に該当しないものとし、5月8日から「5類感染症」に位置づけることを決定(※)。
本日開催の厚生科学審議会感染症部会にて、
①国内では、いずれもオミクロン株の亜系統であるXBB.1.5系統やXBB.1.9系統の占める割合が増加する等の動きはあるものの、これらの変異株について重症度が上昇していることを示す知見は国内外で確認されていないこと。
②感染状況は足元で増加傾向となっているが、水準は昨年夏の感染拡大前を下回る状況が継続し、病床使用率や重症病床使用率は全国的に低い水準にあること。
から、病原性が大きく異なる変異株の出現等の科学的な前提が異なるような特段の事情は生じていないことが確認された。
これを受けて、加藤厚労相は、感染症法第44条の2第3項の規定に基づき、新型コロナウイルス感染症が5月7日を以て「新型インフルエンザ等感染症」と認められなくなる旨を公表。これに伴い、新型コロナウイルス感染症は、翌8日から感染症法の「5類感染症」に位置づけられ、「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(※4)も、同日廃止されることとなった。
加藤厚労相は、新型コロナウイルス感染症の確認以降の3年余りを振り返り、医療機関や高齢者施設等の現場で献身的に従事をしてきた医師・看護師・介護職員等エッセンシャルワーカー、保健所等で対策に当たってきた都道府県・市区町村の担当者等、関係者の協力により、8回に亘る感染拡大の波を乗り越え、ウィズコロナへの移行が進められたこと、また、新型インフルエンザ等対策特別措置法(※5)に基づく緊急事態宣言をはじめ、様々な制限・制約への国民の理解・協力に対して、改めて謝意を述べた。
※1)新型コロナウイルス感染症:病原体がベータコロナウイルス属のコロナウイルス(令和2年1月に、中華人民共和国から世界保健機関に対して、人に伝染する能力を有することが新たに報告されたものに限定)であるものに限る。
※2)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律:平成10年法律第114号。
※3:「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更等に関する対応方針について」
※4)新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針:令和3年11月19日新型コロナウイルス感染症対策本部決定。
※5)新型インフルエンザ等対策特別措置法:平成24年法律第31号。
新型コロナウイルス感染症への今後の対応
これまで、新型インフルエンザ等対策特別措置法、感染症法、予防接種法(※6)、検疫法(※7)等に基づいて行われてきた政府による各種対策は、「5類感染症」に位置づけられることを契機に、行政が様々な要請・関与をしていく仕組みから、個人の自主的な判断を基本とする対応に転換される。
(1)発生動向の把握
患者の発生動向等の把握については、感染症法に基づく定点医療機関による新規感染者数の報告を基本とし、これに加えて、血清疫学調査(抗体保有率調査)や下水サーベイランス研究等を含め、重層的な確認を行っていく。
(2)医療提供体制
入院措置を原則とした行政の関与を前提とした限られた医療機関による特別な対応から、幅広い医療機関による自律的な対応に移行。具体的には、今後も一定の感染拡大が生じることも想定し、各々の都道府県が策定した移行計画に従って、段階的に移行していく。
(3)感染患者等への対応
感染症法に基づく入院措置・勧告、外出自粛要請といった私権制限が撤廃され、これに伴い医療費の一部自己負担が生じることとなるが、急激な負担増を避ける観点から、一定の公費支援について期限を区切って継続。外出を控えるかどうかは、ウイルスの排出期間や外出を控えることが推奨される期間(発症後5日間)を参考に、個人の判断に委ねられる。
(4)基本的な感染対策
マスクの着用をはじめとする基本的な感染対策については、個人や事業者の判断に委ねることを基本としつつ、その判断に資するよう、情報提供を進める。また、その実施に当たっては、感染対策上の必要性に加え、経済的・社会的合理性や、持続可能性の観点も考慮して、改めて感染対策を検討するよう要望。
(5)新型コロナワクチン
特例臨時接種として、引き続き自己負担なく接種を実施。追加接種の対象となる全ての人を対象に9月を目途に接種を開始する予定ではあるが、高齢者等重症化リスクの高い人等には秋を待たずに、5月8日以降、接種を実施する。
※6)予防接種法:昭和23年法律第68号。
※7)検疫法:昭和26年法律第201号。
厚生労働省は、新型コロナウイルス感染症は今後も一定の流行が続くことが懸念されることから、「5類感染症」への位置づけの変更に伴う、以上の対応を医療関係者、都道府県、市区町村等関係者と連携して進める一方、今後、オミクロン株とは大きく病原性が異なる変異株が出現する等、科学的な前提が異なる状況になった場合には、直ちに見直すと共に、迅速かつ的確に、次の感染症危機に対応できるよう、昨年成立した改正感染症法等に基づく必要な準備についても進めていくとしている。
■(厚生労働省)新型コロナウイルス感染症について