米シリコンバレーに本社を置くAI(人工知能)開発企業のNauto Japan合同会社(ナウト ジャパン)は6月5日、現在販売中のAI搭載安全運行管理プラットフォーム「ナウト」に「歩行者衝突警報(PCW)」、「前方衝突警報(FCW)」、および「後退検知」の機能を追加した。
従来の高精度なわき見検知、携帯電話検知、眠気検知等の先進機能に加え、今回の追加機能により外部環境のリスクを即時に認識しドライバーに警告することで、更なる交通事故削減に貢献するという。
また、ドライバーが自らの運転を振り返って運転行動を改善するための「Nauto Connectアプリ」、ならびに一時不停止検知機能も、近日リリース予定としている。
上記のナウトの歩行者衝突警報(PCW)は、進行方向の路上および道路脇にいる歩行者等を検知すると、自車両および歩行者等の動きを予測し、衝突の危険がある場合にリアルタイムで警告音を鳴らす。検知の対象となる歩行者等は以下の通り。
- 歩行者
- 自転車
- キックボード
- スケートボード
- 車椅子
- オートバイ
近年では自転車やキックボードによる交通ルール違反も社会問題となっているが、万が一衝突してしまった場合は、車対車の事故と比べ、重大事故に繋がり易く、なおかつ過失割合でも不利になり易いため、リスク対策が一層重要となってきている。
ナウトの歩行者衝突警報(PCW)は、歩行者だけでなく自転車やキックボードも認識し、衝突のリスクを適宜警告する。
また前方衝突警報(FCW)は、前方の走行車両または停止車両に衝突する危険がある場合にリアルタイムで警告音を鳴らす。
前方衝突を防ぐためのシステムは、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の義務化に伴い完成車メーカー各社が取り組んでおり、搭載車両は年々増えてきている。一方、特にトラックに於いては、登録車両の9割が中古車によって占められていることや、車両入れ替えのサイクルが長いことなどから、普及が進んでいるとは言い難い状況にある。
更には意図せぬ急ブレーキによる荷崩れを嫌って自動ブレーキ機能をオフにしているドライバーの存在も指摘されている。ナウトの前方衝突警報(FCW)であれば、車両を入れ替えることなくこれらの先進運転支援機能を導入でき、自動ブレーキをオフにしていても危険な状況については適宜警告を受け取ることができるため、事業者にとって大きなメリットがある。
ナウトの後退検知機能は、車外カメラの映像を分析することによって、車両が後退した際の場所(GPSによる位置情報)と状況(カメラ映像)を記録する。
自動車の運転中に後退をしている時間は、ごくわずかです。にもかかわらず、後退事故は交通事故全体の約5%も占めている(出典:公益財団法人交通事故総合分析センター「交通統計 令和3年版」)。つまり、後退時は、走行時間に対して事故率が高く、そのような事情からバックモニターも近年義務化されている。
運送業に於いては、「後退時の事故」が「荷役5大災害」のひとつとして挙げられており、社内規定で後退を制限している事業者も少なくない。
ナウトの後退検知機能は、後退時に適切な安全確認が行われていること、そして後退に関する社内規定が遵守されていることを、確認するための有効な手段となり得るとしている。
Nauto Connectアプリは、ドライバー向けのアプリで、ナウトによって記録された危険運転の映像を任意に確認し、振り返るためのもの。映像には運行管理者がコメントを記入することもでき、ドライバーが運行管理者との面談を待たずに自習できるため、よりタイムリーに運転行動を改善していくことができる。これにより運行管理者の負担も軽減される。
一時不停止検知機能は、地図データ、GPS情報、および加速度情報を組み合わせることによって、一時停止を遵守しなかった際の場所と状況を記録する。同機能は、日本のユーザーからの要望に応えるべく開発したという。
最後に歩行者衝突警報(PCW)、前方衝突警報(FCW)、および後退検知については、同日より、対象となるナウト車載機に対し、OTAアップデート機能によって順次自動的に適用される。更新の具体的なタイミングは、各車載機の稼働状況により異なる。なお、更新に際して費用は掛からない。またその他、一時不停止検知機能などの提供時期については後日発表すると結んでいる。