NEXT MOBILITY

MENU

2024年6月5日【テクノロジー】

ナウト、AI搭載安全運行管理プラットフォームを追加

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

米シリコンバレーに本社を置くAI(人工知能)開発企業のNauto Japan合同会社(ナウト ジャパン)は6月5日、現在販売中のAI搭載安全運行管理プラットフォーム「ナウト」に「歩行者衝突警報(PCW)」、「前方衝突警報(FCW)」、および「後退検知」の機能を追加した。

 

従来の高精度なわき見検知、携帯電話検知、眠気検知等の先進機能に加え、今回の追加機能により外部環境のリスクを即時に認識しドライバーに警告することで、更なる交通事故削減に貢献するという。

 

また、ドライバーが自らの運転を振り返って運転行動を改善するための「Nauto Connectアプリ」、ならびに一時不停止検知機能も、近日リリース予定としている。

 

上記のナウトの歩行者衝突警報(PCW)は、進行方向の路上および道路脇にいる歩行者等を検知すると、自車両および歩行者等の動きを予測し、衝突の危険がある場合にリアルタイムで警告音を鳴らす。検知の対象となる歩行者等は以下の通り。

 

  • 歩行者
  • 自転車
  • キックボード
  • スケートボード
  • 車椅子
  • オートバイ

 

近年では自転車やキックボードによる交通ルール違反も社会問題となっているが、万が一衝突してしまった場合は、車対車の事故と比べ、重大事故に繋がり易く、なおかつ過失割合でも不利になり易いため、リスク対策が一層重要となってきている。

 

ナウトの歩行者衝突警報(PCW)は、歩行者だけでなく自転車やキックボードも認識し、衝突のリスクを適宜警告する。

 

また前方衝突警報(FCW)は、前方の走行車両または停止車両に衝突する危険がある場合にリアルタイムで警告音を鳴らす。

 

前方衝突を防ぐためのシステムは、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の義務化に伴い完成車メーカー各社が取り組んでおり、搭載車両は年々増えてきている。一方、特にトラックに於いては、登録車両の9割が中古車によって占められていることや、車両入れ替えのサイクルが長いことなどから、普及が進んでいるとは言い難い状況にある。

 

更には意図せぬ急ブレーキによる荷崩れを嫌って自動ブレーキ機能をオフにしているドライバーの存在も指摘されている。ナウトの前方衝突警報(FCW)であれば、車両を入れ替えることなくこれらの先進運転支援機能を導入でき、自動ブレーキをオフにしていても危険な状況については適宜警告を受け取ることができるため、事業者にとって大きなメリットがある。

 

ナウトの後退検知機能は、車外カメラの映像を分析することによって、車両が後退した際の場所(GPSによる位置情報)と状況(カメラ映像)を記録する。

 

自動車の運転中に後退をしている時間は、ごくわずかです。にもかかわらず、後退事故は交通事故全体の約5%も占めている(出典:公益財団法人交通事故総合分析センター「交通統計 令和3年版」)。つまり、後退時は、走行時間に対して事故率が高く、そのような事情からバックモニターも近年義務化されている。

 

運送業に於いては、「後退時の事故」が「荷役5大災害」のひとつとして挙げられており、社内規定で後退を制限している事業者も少なくない。

 

ナウトの後退検知機能は、後退時に適切な安全確認が行われていること、そして後退に関する社内規定が遵守されていることを、確認するための有効な手段となり得るとしている。

 

Nauto Connectアプリは、ドライバー向けのアプリで、ナウトによって記録された危険運転の映像を任意に確認し、振り返るためのもの。映像には運行管理者がコメントを記入することもでき、ドライバーが運行管理者との面談を待たずに自習できるため、よりタイムリーに運転行動を改善していくことができる。これにより運行管理者の負担も軽減される。

 

一時不停止検知機能は、地図データ、GPS情報、および加速度情報を組み合わせることによって、一時停止を遵守しなかった際の場所と状況を記録する。同機能は、日本のユーザーからの要望に応えるべく開発したという。

 

最後に歩行者衝突警報(PCW)、前方衝突警報(FCW)、および後退検知については、同日より、対象となるナウト車載機に対し、OTAアップデート機能によって順次自動的に適用される。更新の具体的なタイミングは、各車載機の稼働状況により異なる。なお、更新に際して費用は掛からない。またその他、一時不停止検知機能などの提供時期については後日発表すると結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。