リラックスシートを使った実証実験の様子
横浜市と豊田市を結ぶ5Gネットワークで力触覚伝送の実証実験に成功
慶應義塾大学発ベンチャーのモーションリブは7月4日、リアルハプティクス®とクラウド技術などを活用した感触・動作クラウドプラットフォームをトヨタ紡織と共同開発した。このプラットフォームを用いクラウド上に展開された力触覚情報にインターネット回線からアクセスすることで、場所を問わず触覚の伝送・データ化・編集などが可能となった。
つまり、この技術が開発されたことにより遠く離れた家族や友人とも触れ合えることができ、孤独感やストレスを軽減し、心の健康をサポートする効果が期待されるようになった。
また、地理的な距離が障壁にならないことで、高齢者や障害を持つ人々など移動が困難な方にとっても大きな利益をもたらす可能性があり、個人だけでなく社会全体のウェルビーイングに貢献できることが見えてきている。従ってをモーションリブとトヨタ紡織は、同技術の更なる高度化を目指していきたい考えだ。
今回、より具体的な実証内容で両社は、今回開発したプラットフォームをトヨタ紡織が持つリラックスシート「Remote Touch Therapy(リモートタッチセラピー)」に搭載。
横浜市と豊田市間での5Gネットワークを介して、力触覚伝送とそのコンテンツ化を行う実証実験を行った。その結果、リアルタイムかつ高精細な力触覚伝送に成功し、離れた場所にいる人同士があたかも同じ空間にいるかのような感覚を共有できることを確認した。
その際の実証では、横浜市内の拠点から豊田市内の拠点にいる対象者に「優しく肩をさする」などのタッチセラピーを行い、肩の感触などを感じながら、セラピー体験を実現できることを確認したもの。
また、それらの動作はプラットフォームを通じてデータ化し、データ化された力触覚コンテンツは操作者がいなくても再現可能であることを実証することもできている。
従来では、リアルハプティクスによる高品質な力触覚伝送には、特殊な環境構築を必要としていた。しかし今回両社は、リアルハプティクスとクラウド技術やリアルタイム通信技術を組み合わせることで感触・動作クラウドプラットフォームを共同開発し、離れた場所にいる人同士が力触覚を通じて相互に働きかけ、そこで得られた力触覚情報をデータ化し、コンテンツ化することを可能にした。
IoAプラットフォームのビジョン
そんなモーションリブが開発したリアルハプティクスの実装を簡便にする力触覚制御ICチップには以下の特徴がある。
(1). 力加減の制御:リアルハプティクスをモジュール化し、リアルタイムな力加減の計測と制御を実現。
(2). 力触覚を伝送:力加減をデータ化して、遠隔地に伝送。双方向に力触覚を伝え合うことを簡単に実現。
(3). 力センサレス:独自の力推定アルゴリズムにより力センサの設置が不要。(力センサの使用も可能)
(4). 高い汎用性:市販のアクチュエータ・機器を使用して力の制御が可能。既存システムへの組込みも容易。
結果、同プラットフォームを用いることで、クラウド上に展開された力触覚情報にインターネット回線からアクセスすることが可能となり、どこからでも力触覚の伝送・データ化・編集などが可能となる。例えば、製造業などに於いて熟練技術が必要な作業の自動化を行う際の基盤として活用することができるという。
今後、モーションリブは今実証で得られたデータを活用した仮想空間でのシミュレーションやAIによる動作生成などを引き続き開発。リアルハプティクスと仮想化技術を組み合わせ、様々なロボットが、インターネットやコンピュータリソースを通じて行為(Action)を蓄積し、多種多様なニーズに対応することができるコンテンツ生成「IoA(Internet of Actions)プラットフォーム」の実現を目指す。