ブロックチェーン技術を背景に、車載バッテリーに係る世界最大級のサプライチェーン構築を進めるMOBI ( モビ )( Mobility Open Blockchain Initiative/ 業態:NPO、本拠:米カリフォルニア州、代表:Chris Ballinger、Tram Vo )は7月10日、Web3 Global Battery Passport( GBP )、Minimum Viable Product( MVP )の開発環境上に於いて重要なマイルストーンに到達したと宣言した。( 坂上 賢治 )
それは史上初めて、オープンスタンダードであるMOBI Battery Birth CertificateとWorld Wide Web Consortium (W3C)、Self-Sovereign Identity(SSI)フレームワークを使用して、9つの組織間でバッテリーIDに係るデータ検証と情報交換の実証に成功したことにある。
ちなみに、このMOBIは、世界のモビリティ産業に対して精緻なエコシステムを主導するべく2018年5月に設立され、バッテリーの素材調達・生産・廃棄に関わるブロックチェーン( 分散型台帳 )技術の標準化と普及を推進。欧州発の企業連合「GAIA-X( ガイアエックス )」とも連携した。
結果、全世界規模で100以上の会員企業・組織を抱え、分科会の運営、国際会議の開催、SNSを介した教育・啓蒙活動を行っており、日本の参加企業には、アンリツ、デンソー、日置電機、ホンダ、マツダ、日産、トレードログなどが所属している。
そんなMOBIによる今発表は、モビリティ製品や部品・素材に関わるバリューチェーンの構築を切望する企業たちに歓迎されるだけでなく、世界規模で車載バッテリーのサプライチェーンの標準規格を切り拓いたという意味で、重要な出発点になるものだ。従って、この成果を基にMOBIは、世界中の団体や企業へ対して、この先駆的な取り組みに参加・協力するよう呼び掛けている。
現在、国境を越えたエネルギー貯蔵の〝入れ物〟としてバッテリーが注目されるなか、例えば米国財務省の政策では、バッテリーのライフサイクルの全域を追跡するためにデジタル記録の保持を提唱しており、バッテリーの素材構成( どのような素材が使われているか )、堅牢・安全性( 原材料を含む生産国や蓄電・放電時の安定性に係る情報 )、製造から廃棄に至る履歴について、デジタル証明書を伴う国際的なバッテリーパスポートの必要性が世界規模で取り沙汰されている。
そこでMOBIとそのメンバー達は、Web3が国際的な情報の相互運用に役立つと考えた。そもそもブロックチェーンを利用した製品の追跡であれば、中央集権的な仲介者を必要とせずに、国家や企業を越えた情報管理が共有できるからだ。
こうした取り組みについてMOBIのCEO兼共同創設者であるTram Vo氏は、「今日のグローバルなバッテリーのバリューチェーンは、実に複雑で、効率、拡張性、安全性、循環性、規制遵守を世界規模で同時確立させることには困難が伴います。従って、これらを維持・運用させるには、SSIフレームワークを備えた共有システムを構築して、バッテリーのライフサイクル管理を強化する必要があります。
従って、世界規模で更なるイノベーションを推し進めるためには、業界間のコラボレーションが必要不可欠です。是非とも世界中の公的機関と民間組織に於かれては、この重要な取り組みにご参加頂きたいと思います」と述べた。
また本田技研工業のシニアエンジニア、Christian Koebel氏は、「Web3は、組織間でピアツーピア方式でバッテリーデータを交換する、スケーラブルなアプローチを大きく促進させることが可能な興味深いテクノロジーです」と技術的な確実性と安全性との高度なバランスについての期待を語った。
更に日産自動車でシニアマネージャーを務める逗子雄介氏は、「実証段階毎の各ステージ通じて、Web3ベースのデータ管理がどのように信頼性を伴いつつ機能するかが確認されました」とその運用技術の確かさについてコメントした。
マツダは、「GBPワーキンググループへの参加を通じて、Web3の技術的知識を習得しただけでなく、信頼性の高い情報の交換を実現するエコシステムのビジョンを理解することができました。この貴重な機会を与えてくれたMOBIに感謝します」と語っている。
日置電機で執行役員を務めるKenneth Soh氏は、「初期ステージでの実証では、データ管理を可能にするシステム構築を実施する上で、技術的な理解を深めることに役立ちました。また今後のデータ主導時代に於いては、情報の完全性と安全性が最も重要です。
当社は計測機器メーカーとして常にデータの信頼性と精度を重視してきました。そうした意味で、このMOBIの研究活動 から得られた知見は、私たちがサービスを提供する将来の産業界の進歩にとって必要不可欠な技術であると考えています」と話す。
アンリツでシニアマネージャーを務める松本久氏は、「Web3での実装と運用が成功したことは、より透明性が高く持続可能なバッテリーエコシステムの構築に向けた大きな一歩です。私たちは、この重要な取り組みに参加・貢献できることを光栄に思います」と話している。
最後にトレードログでプロジェクトコーディネーターを務めるAlvin Ishiguro氏は、「当社は、MOBIと熱心な協力者の努力によって推進されている分散型グローバルバッテリーパスポートプロジェクトをサポートすることに誇りを持っています。今後も、エネルギー分野に於けるブロックチェーン技術を通じて、世界のお客様へ大して新しい体験を提供し続けていきたいと思います」と結んでいる。