三菱重工は10月20日、グループの三菱造船が、川崎汽船ならびに一般財団法人日本海事協会と共同で進める洋上用CO2回収装置の検証プロジェクト“CC-Ocean(Carbon Capture on the Ocean project)”において、実船搭載したCO2回収小型デモプラントにて船舶エンジンより排出される排ガスからCO2を分離・回収した結果、回収CO2純度が99.9%以上と計画通りの性能を達成したと発表した。
このプロジェクトは川崎汽船運航の東北電力向け石炭運搬船“CORONA UTILITY”(以下「本船」)にて実施されており、得られたデータは洋上用CO2回収装置の実用化に向けたベンチマークとなる。今回搭載したCO2回収小型デモプラントは陸上プラント用装置を洋上用に転用したもので、計画通りのCO2回収率を洋上で得られたことから、舶用システムとしての実用化の可能性が高まったとしている。
8月上旬にCO2回収小型デモプラントを本船に搭載後、三菱造船の技師が乗船し同プラントの運転、メンテナンス、本船乗組員への操作指導に加え、排ガスおよび分離・回収したCO2の計測・分析、評価などを行い、9月中旬から2021 年度末までは、一般乗組員が商用運航中にCO2回収を行う世界初の試みとして、本船乗組員が同プラントの運転、計測などを引き続き実施している。三菱造船は、上記の実証試験で得られた知見を基に装置の安全性や操作性を検証し、今後の商用実機の開発に活用していくとしている。
三菱重工グループはエナジートランジション(低環境負荷エネルギーへの転換)に取り組んでおり、CO2エコシステムの構築はその中の柱の一つ。CO2を回収して貯留や転換利用するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)は、カーボンニュートラル社会を実現するための有効な手段。三菱造船では、パリ協定の発効により世界的に脱炭素化への意識が高まる中、船舶のみならず洋上設備からの温室効果ガス(GHG)排出削減についても継続して取り組むことで、世界規模でのカーボンニュートラル社会の実現に貢献していく。