三菱パワーは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「バイオジェット燃料生産技術開発事業」による委託を受けて4事業者共同で取り組む木質系バイオマスを原料とした燃料生産技術の開発を実施しており、今回、完成したバイオジェット燃料が、持続可能な代替航空燃料(Sustainable Aviation Fuel:SAF)として、世界で初めて航空定期便に供給されたと、6月18日発表した。
この燃料は、ガス化した木質セルロースから液体燃料を合成するガス化FT合成技術により生産したもので、SAFの国際規格である「ASTM D7566」への適合が確認されている。
この燃料生産技術の開発は、共同4事業者のうち株式会社JERAの新名古屋火力発電所(名古屋市港区)構内に建設したパイロットプラントで原料に木くずを使用し、SAFを一貫生産する実証試験を通じて行われた。JERAが原料調達とパイロットプラントの運転、三菱パワーが噴流床ガス化技術を用いて原料をガス化、東洋エンジニアリング株式会社(TOYO)が生成ガスからの液体燃料合成・蒸留と石油系ジェット燃料との混合以後のサプライチェーン構築を担当し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)が製造されたSAFの燃焼における性能特性評価試験を実施するなど、各事業者の技術・ノウハウを結集した。
三菱パワーは、1980年代から石炭やバイオマスなどの燃料ガス化について研究開発を重ね、高性能なガス化炉技術を確立している。これまでの石炭やバイオマスなどの燃料ガス化のノウハウを活かしつつ、今回のプロジェクトでは中核となる常圧酸素/水蒸気吹き噴流床ガス化技術により、液体燃料合成に好適なガスを長期にわたり安定的かつ効率的に供給できることを実証した。この設備は粉砕が難しく幅広い粒径分布を有するバイオマス利用にも対応したガス化炉を採用し、なおかつ流動層ガス化炉等の他方式と比べて安定した組成のガスをFT合成装置(一酸化炭素と水素から触媒反応を用いて液体炭化水素を合成する)に供給することを実現したもので、この技術により大容量かつ安定したガス生成が可能となる。
国際民間航空機関(ICAO)や国際航空運送協会(IATA)は、温室効果ガスの排出量削減による地球温暖化抑止対策を共通のテーマとして掲げており、特にSAFの導入を有効な手段の一つとして位置づけている。
三菱パワーは、今後想定されるSAFの本格普及に向けて各事業者と安定的かつ効率的な供給に取り組むことで、世界規模で行われる航空分野での温室効果ガス低減に向けた道筋となるとし、今後も、バイオジェット燃料生産技術の確立に向けた取り組みを推進し、航空分野における脱炭素化を実現することで、地球環境の負荷低減に貢献していくとしている。
【木くず由来SAFによる国内線定期便の概要】
日付:2021年6月17日
便名:日本航空515便
区間:東京国際空港から新千歳空港
機材:エアバスA350-900