パジェロ製造の工場閉鎖と欧州市場での新機種投入を凍結
三菱自動車は7月27日、2022年度を最終年度とする新中期経営計画を発表、アセアン地域に軸足をおいた構造改革を断行する方針を明らかにした。「前中期計画で推進したグローバル戦略、拡大路線に無理があった」として選択と集中による経営の合理化に転換、その一環で岐阜県に拠点を置く子会社「パジェロ製造」の工場閉鎖するほか、欧州への新機種投入を凍結する。(佃モビリティ総研・間宮潔)
2020年4~6月期連結決算の記者発表会(電話方式)に臨んだ加藤隆雄・代表執行役CEO(最高経営責任者)ら首脳陣は、前中計の拡大路線で固定費が膨張したことを反省し、「不退転の決意」で固定費20%以上の削減を断行、赤字体質からのU字回復を目指す方針を示した。
新中計の初年度となる20年度の通期業績見通しは、売上高で前年度比34.8%減の1兆4800億円となり、新型コロナウイルス感染拡大による需要縮小の影響を織り込んだ。営業利益は前年度の128億円から一気に1400億円の赤字に転落、また当期純利益でも3600億円の赤字になる見通し。
新中計ではこの営業利益を最終22年度、「500億円」の黒字にする目標だ。「Small but Beautiful」の標語を掲げ、全方位の拡大路線から市場拡大が期待されるアセアン4カ国および豪州に経営資源を集中させる。タイにおける生産体制の強化に加え、これから本格化するモータリゼーションに備え、ベトナムでの新工場建設を目指す。
アセアン4カ国での19年度の三菱車販売実績は29万1000台、シェア10.6%だったが、これを最終22年度に37万5000台、シェア11.4%の目標を掲げた。
日産・ルノー連合とのアライアンスとなる中国・広州汽車との新型EV共同開発事業も推進、成長を目指す。
日本国内では、かつての4.3%(2007年度)あったシェアが現在、2.1%(19年度)まで落ちている。不採算な直営ディーラー店舗の閉鎖・統廃合をすすめるほか、地場店とのパートナーシップ強化に力を注ぐ。またシェリングなどサブスクリプション事業も強化する。
パジェロ製造の生産ラインを21年度にも止め、岡崎工場(愛知県)に集約する。水島工場(岡山県)との2拠点体制に移行することで、海外生産比率は現行の60%から65%に広がる。
日本は生産・販売体制の再編により、「安定的な黒字体質」に転換。収益性が劣る北米事業でも、宣伝費など固定費を抑制する。
欧州事業では、年次ごとに厳しくなる燃費規制への対応が難しく、順次、販売量が減少する見通し。ただ三菱車の保有ユーザーは大きく、サポート体制を引き続き強化する。
2020年度第1四半期連結業績は以下の通り。連結売上高は2295億円(前年度比57%減)、営業利益は533億円の赤字。当期純利益は1762億円の赤字となった。販売台数は13万9000台(同53%減)だ。