バッテリキューブから給電している様子
三菱自動車工業と日立製作所は9月25日、電動車の搭載バッテリのサーキュラーエコノミーの実現を目指し、使用済みリチウムイオン電池を活用した可動式蓄電池「バッテリキューブ(同名称は日立ハイテクの日本国内での登録商標)」の共同実証を開始した。
両社は電動車の普及に伴い、まず三菱自動車は電動車の先駆けとして培った知見を生かし電動車バッテリ寿命を延ばすことに加え、リユースバッテリの活用を進めてきた。
例えば2023年4月から岡崎製作所内に、プラグインハイブリッドEVアウトランダーPHEVのリユースバッテリを活用した自律型街路灯を設置し実証実験を行っている。
対して日立は、日立ハイテクとバッテリキューブの事業化に向けた検討を進めてきた。例えば2023年6月にはセブン‐イレブン・ジャパンと連携させたバッテリキューブを「セブン‐イレブン三郷彦成2丁目店」に設置し実証実験を開始している。
バッテリキューブに搭載しているリユースバッテリ
そうしたなか今実証は、三菱自動車が販売するプラグインハイブリッドEV「アウトランダーPHEV」のリユースバッテリをバッテリキューブに搭載して、その実用性を検証するもの。
具体的には、広域災害等による停電を想定し、日立ビルシステムのV2Xシステム(自動車とモノとの接続や相互連携を行う技術の総称)と、バッテリキューブをCHAdeMO V2H(CHAdeMO協議会が標準規格として提案する急速充電規格)コネクタで接続。
これを介して日立標準型エレベーターの「アーバンエース HF」を、バッテリキューブからの給電で駆動させる。
この実証は、豊富な過去実績を持つV2H機能搭載の電動車からの給電に加えて、新たにバッテリキューブからの給電を組み合わせることで、企業内で災害が発生した時の継続的なバックアップ電源確保に対する貢献を目指す。
三菱自動車と日立はそれぞれ、電動車バッテリのリユースとバッテリキューブの事業化を2024年度に開始することを目指していて、双方連携して企業や自治体などへのバッテリキューブ導入を推進していく構え。
また併せて再生可能エネルギーの有効活用に向けて、電動車やバッテリキューブと太陽光パネルなどを連動させるエネルギーマネジメントの共同実証も行う予定としている。
結果、電動車バッテリを再利用するだけでなく、その後の再資源化に至るまでの構想を検討。電動車の使用済みバッテリを使ったサーキュラーエコノミーの実現を模索していく。
三菱自動車と日立が目指す電動車バッテリのサーキュラーエコノミー(イメージ)
そんな日立が2021年から開発を進めるバッテリキューブは、電動車のリユースバッテリを活用した可動式蓄電池であり、主な特長は以下の通り。
CHAdeMO V2H規格を採用することにより、従来の定置型蓄電池と比較して、設置工事が簡易となり、安全かつ柔軟に店舗などの電気設備と脱着できるため設置やメンテナンスの作業効率を大幅に向上することができる。
クラウド上の遠隔監視システムにより、バッテリキューブに搭載されたリユースバッテリの稼働状態をリアルタイムに管理し、状態に応じた運用・メンテナンスを可能としている。
なおバッテリキューブの仕様は、様々な車種(乗用車・トラック等)、電動車メーカーのリユースバッテリ搭載を想定した設計を行っている。
従ってカーボンニュートラル実現に向けて電動車を導入する企業・自治体は、車の動力としてバッテリを使用した後に、使用済みバッテリをバッテリキューブに搭載。これを自社のエネルギー用途に使用することで電動車バッテリの資源循環モデルを構築する。