三菱重工業は2月9日、インドネシアの国立バンドン工科大学(Bandung Institute of Technology:略称ITB)と、インドネシアの脱炭素化に向けたクリーンエネルギーソリューションに関する共同研究に合意し、このほど両者で覚書(Memorandum of Understanding:MOU)に調印したと発表した。
覚書は5年間有効で、三菱重工グループが戦略的に取り組むエナジートランジションをインドネシアで推進する技術の実現可能性調査・検証・研究開発を行うとともに、将来同国に共同での研究・開発(R&D)センターを設立するための協議を進めるもの。
2月7日にオンラインによる調印式が行われ、駐日インドネシア大使のHeri Akhmadi氏、在インドネシア日本国大使の金杉 憲治氏、ITBを代表して学長のReini Wirahadikusumah氏、同社からはエナジートランジション&パワー事業本部長 河相 健氏が出席した。
ITBのReini Wirahadikusumah学長は次のように述べている。「ITBは過去2年間にわたり、火力発電所におけるアンモニア・バイオマス混焼の経済的・技術的評価を中心に、クリーンエネルギーに関連する先進的なフィージビリティ・スタディ(実効性調査)を三菱重工とともに実施してきました。これらの取り組みは、インドネシアの電力産業にとって有益なものになると確信しています。さらに、今回のMOUの延長により、数多くのアイデアや有用な提言がインドネシアにもたらされることを期待しています」。
一方、同社の河相 健氏は次のように期待を表明している。「三菱重工は50年近くにわたりインドネシアの発電業界に貢献してきました。ITBとの継続的なパートナーシップを通じて、同国の脱炭素化を加速するクリーンエネルギーソリューションの開発を目指します。ネットゼロ達成に向けたITBとの実りある産学協同を楽しみにしています」。
三菱重工とITBは、これまでもMOUを締結しており、水素やアンモニアなどの新たなエネルギー源のほか、総合排煙処理システム (Air Quality Control Systems:AQCS) やマイクログリッドソリューションの共同実現可能性を検討してきた。2020年の本MOU締結以来、同国での将来に向けた技術者育成を目的として、両者はビッグデータ解析、バイオマス、石炭ガス化複合発電、水素、AQCSなどをテーマとした共同講義も実施している。
インドネシアでは、2030年までに温室効果ガス排出量を29%削減、2025年までに再生可能エネルギーの利用率23%達成という公約に見られるように、エネルギー部門の脱炭素化への取り組みを強化しており、こうした同国のエネルギー対策に対する取り組みの強化と時期を同じくして今回の新たなMOUが締結されたもの。三菱重工は、今回のMOU調印を弾みに、今後さらにインドネシアの科学技術の発展に貢献するとともに、同国の電力供給安定化ならびに環境保全に寄与していくとしている。