三菱重工業および三菱重工グループの三菱ロジスネクストは5月27日、グループが掲げるエナジートランジション(低環境負荷エネルギーへの転換)の一環として、港湾におけるCO2排出量削減へ向けた取り組みを開始すると発表した。将来的なゼロカーボン実現を視野に入れた荷役機器の新モデル開発や既存機器の水素燃料電池化などを通じ、カーボンニュートラルポート(CNP)実現に貢献していくとしている。
カーボンニュートラルポート(CNP)とは、国土交通省が全国6地域の港湾(小名浜港、横浜港・川崎港、新潟港、名古屋港、神戸港、徳山下松港)を対象に検討を進めている、港湾機能の高度化を通じて温室効果ガスの排出ゼロを目指す政策のこと。
このCNPに向けた取り組みの第一弾として、両社は2022年秋ごろの発売を目指して、タイヤ式門型クレーン(RTG:Rubber Tired Gantry crane)の新モデル開発に着手した。
従来のハイブリッド型で使用される蓄電池の容量はそのままに、ディーゼル発電機のエンジン排気量・出力を抑え、新たに搭載するエンジンコントローラーにより最適かつ効率的な燃焼制御とすることで国土交通省の排出ガス規制(4次基準値)に対応。これによりCO2をはじめNOx(窒素酸化物)、PM(黒煙粒子状物質)の排出量を削減するとともに、従来比15%以上の燃費改善が見込まれるとしている。
また、この新モデルは、ディーゼル発電機を固体高分子形燃料電池に換装可能な仕様での開発を進めているという。近い将来、ディーゼル発電機と同等に出力可能な固体高分子形燃料電池が市場で流通することが予測されており、これらの燃料電池を既存発電機と換装することでCO2排出量ゼロに対応することが可能となる。
両社では、こうした市場動向や技術革新の進捗状況などを踏まえ、現在市場で入手可能な固体高分子形燃料電池の出力レベル同等までディーゼル発電機の出力を低減した場合の効果も併せて検討している。
その結果、従来比で蓄電池容量を5倍以上増加させる必要があることや、燃費は40%程度改善するなどといったデータを得ているとのことだ。この新モデル以外にも、ディーゼル発電機を燃料電池に換装することでゼロカーボン化が実現できる製品について、可能な限り多角的に検討を行っていくとしている。
さらに、港湾において多くの機種が使用されるフォークリフトについても燃料電池化を検討中。水素エネルギーの供給インフラが整った地域において燃料電池の普及が見込まれることや、当該地域全体でのカーボンニュートラルへの寄与も大きいことから、まずは積載荷重1.75トンのフォークリフトで燃料電池車を試作している。
すでに実用化に向けて市場での試験を実施しており、今後は水素供給インフラの整備に伴い、大型フォークリフトなどの燃料電池化にも引き続き取り組んでいく予定とのことだ。