磁束の有効利用でレアアースの使用量を削減するモーター構造の発明
三菱電機は6月4日、公益社団法人 発明協会が主催する「令和6年度 全国発明表彰」に於いて「磁束の有効利用でレアアース量を削減したモータの発明」に関する技術で「発明賞」を受賞した。表彰式は7月11日(木)に The Okura Tokyo(オークラ東京)にて行われる。
なお全国発明表彰は、日本の科学技術向上と産業の発展に寄与することを目的に大正8年から続くもので、「多大な功績を挙げた発明、考案、又は意匠、あるいは、その優秀性から今後大きな功績を挙げることが期待される発明等」に授与されるもの。
受賞の概要は以下の通り
<令和6年度全国発明表彰「発明賞」>
「磁束の有効利用でレアアース量を削減したモータの発明」
受賞者:三菱電機株式会社 住環境研究開発センター
– 矢部 浩二氏
– 桶谷 直弘氏
圧縮機の断面図と永久磁石埋込型モーター(左)、回転子の仕組みと遠心力解析結果(中)、受賞した回転子構造(右)
カーボンニュートラル社会の実現に向けて注目されているヒートポンプ式空調機の圧縮機や電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)に使用される永久磁石埋込型モーターには、レアアースを含むネオジム磁石が使用されている。
しかしレアアースは、耐熱性を高めるなど製品の性能を向上させることが可能な反面、産出量が少なく、抽出が難しい希少金属のため、使用量の削減できる技術開発が求められている。
そもそもモーターは、固定子(ステーター)と回転子(ローター)で構成され、固定子と回転子の間に磁束を発生させることで回転子を回転させ、それが機械を動かす動力源となっている。
永久磁石埋込型モーターの回転子は、電磁鋼板と複数のネオジム磁石で構成され、回転子が遠心力等の応力で破壊されないように、回転子外周と空隙との間が薄肉部で繫がっている。
回転子を動かすために必要なネオジム磁石から発生した磁束は、固定子に流れ(有効磁束)、回転子を回転させるが、一部の磁束は薄肉部を通り、隣り合うネオジム磁石に入り込むため、磁束の漏れが発生し、回転に必要な有効磁束が小さくなる。
一方で、有効磁束を大きくするため、薄肉部の幅を狭くして磁束の漏れを少なくすると、遠心力等による応力が増加し、薄肉部が破断してしまう懸念があり、遠心力による応力低減と有効磁束向上の両立が課題だった。
そこで同社は今回、回転子の遠心力解析の結果から、遠心力による応力が薄肉部の一点に集中している点に着目し、応力が高い箇所の応力を低減しつつ薄肉部の幅を狭くできる新たな構造を発明した。
この新構造を用いることでネオジム磁石の磁束の利用率を向上し、ネオジム磁石の使用量を2.4%削減( 従来の構造と本発明の構造におけるネオジム磁石の有効磁束同等時の体積削減比率 )することができ、希少なレアアースの使用量の削減、省資源化に貢献する。
三菱電機の「全国発明表彰」受賞実績(2010年度以降)
年度/賞名/内容
2020/日本経済団体連合会会長賞/誘導加熱を利用したエアコンの冷媒液化防止技術の発明
2020/発明賞/直流モータの小型効率化のための高密度集中巻線工法の発明
2020/発明賞/工場環境を変える超高精度放電加工機の意匠
2019/発明賞/二つのパルスを用いた電力用スイッチング素子の駆動回路の発明
2018/発明賞/インテリア指向型エアコンの意匠
2017/特許庁長官賞/レーザ穴開け加工精度を向上させる形状可変ミラーの発明
2017/朝日新聞社賞/回転電機の偏心推定方法と偏心推定システムの発明
2016/発明協会会長賞/コンパクトでシンプルなタービン発電機の意匠
2016/発明賞( 株式会社タツノと共願 )/給油所用ガソリンベーパー回収装置の発明
2012/発明賞/PONシステムの動的帯域割当方式の発明
2010/発明賞/圧縮機フレームコンプライアント機構の発明